おなかに抱えているもの
旅に出る前に、友人のワークショップがあった。長崎でのオーガナイズはいつも島原のサロンオーナーさん。今回は友人がつくった赤い表紙の"心の辞書"を使ったものだった。
気心の知れた友人と、サロンオーナーさん、参加者も顔なじみのメンバーだったので気分はゆったりとしていたものの、心のことを扱うのできっとなにか出てくるだろうな… と覚悟というか諦めというか、そういうのはちゃんと用意していった。それで用意していても、おもってもいなかったものが出てきたりする。すっごくたのしかったけれど、自分の闇に触れるのはやはり疲れるもので、こういうののあと数日はぼおおっとすることになる。
友人と会うのもことし最後だろうし、ワークショップのあとは夕飯をいっしょに過ごした。話し足りなかったけれど、長崎に来てくれてうれしい。またすぐに会えるねといって別れた。
ランチのサンドイッチ/THE NORTH POLE
そのワークショップが2日間あって、1日おいて、ぼおっとしたものを抱えたまま旅に出た。行き先は津和野を経由して広島に行くというもので、ひとり行動だった。
津和野という土地が気になっていたのは、ふたつの教会を訪ねたいというおもいからだった。滞在時間は3時間ほどだったけれど、目的は教会と、時間があれば安野光雅美術館に行きたかった(休館日だった)。着いてから、まず津和野教会に行き、そのまま休まずに乙女峠マリア聖堂に向かう。津和野教会は、静かで、畳敷きがうつくしく、ひっそりとしていた。いつもは(長崎県内の教会では)書かないけれど、訪問者ノートに記入して、畳の上に座ってみる。外は静かな雨が降っていて、少しひんやりとした。手の込んだ立派な馬小屋飾りも、見ていて心がなごんだ。
津和野教会から乙女峠マリア聖堂までは歩いて10分程度だけれど、雨が降っていたのと、乙女峠というくらいだから峠道が5分ほど続くため長く感じた。落ち葉が敷き詰められた道を、滑らないように注意しながら登りきったら教会が見えた。敷地の中を見まわすと、三尺牢や記念碑、氷責めという拷問をおこなった池、それから井戸などがあった。電灯のスイッチの場所がわからず、教会の中は暗くてあまり長くいたいところではなかった。晴れた日に来ていたら、ちがったとおもう。敷地の中を歩いてみたり、当時の様子におもいを馳せてみたりした。
身体が冷えたし、お腹もすいた。私はひとりのときはつい食事より行きたい場所や見てみたい何かを優先するくせがあって、それにこの日は移動に様々な遅れもあったため朝からコンビニのコーヒーくらいしか口にしていなかった。食事というよりもとにかくどこかで休憩したかったので、津和野教会まで戻ってその向かいにあった『沙羅の木』という店に入った。店に入ると左手に津和野の名物の源氏巻が並んでおり、右手奥には喫茶のカウンターとテーブル席がいくつもある。もっと奥にもなにか土産品のようなものが並んでいる広い空間だった。お客は他におらず(16時くらい)、4人掛けのテーブル席に座った。メニューを見るとここのコーヒーは京都のイノダコーヒーとキャラバンコーヒーのブレンドと書いてあったので、シフォンケーキとブレンドコーヒーのセットを頼んだ。運ばれてきたコーヒーをひとくち啜ると、あまりのすっぱさにのけぞりそうになった。こういうときはやっぱりカフェオレあたりが無難である。
店内の雰囲気はいい/沙羅の木
それでも、ずっと移動を重ねてきた私はそこからしばらく動けなくなって、電車の時間までゆっくりと過ごさせてもらった。ありがたかった。
いろいろとおなかに抱えたまま、また電車を乗り継いで、広島に向かった。広島のことはまた別で書くことにする。
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