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喫茶店百景-あのころの面影-

 両親の喫茶店は商店街の中にあった。もともと父が勤めていたコーヒーショップというのがあって、父の先輩にあたる人がある時のれん分けでこの町に店舗を持った。しばらくして先輩がその店を手放すというので、父が居ぬきで引き継いだのだった。

 そういうわけで、立地などは選べなかった。この店は建物の2階にあり、父はそれが不満だったみたいだけれど、私は2階の窓から下を眺めるのが好きだった。
 商店街なので、市場が広がっている。上から眺めて店の入り口に向かうひとを(うちの店のお客さんかな? ただの買い物客かな?)などとあれこれ考えながら、ひまな時間を過ごすこともよくあった。

 今はアーケードがかかってしまっているけれど、私が小学生か中学生くらいまではこの商店街は青空で、活気もすごくあった。ポン菓子屋が来たり(音が苦手だった)、冬場は焼き芋売りが来たり、近所のおじさんが縁台みたいなので囲碁をうつ姿などが見られた。
 近所に集合型のスーパーマーケットができたり、アーケードが設置されたりなどと少しずつ商店街客の流れが変ってゆき、うちの店もそのあおりをくうことになる。それでも今も商店街はがんばっていて、あのころから続く店なんかも多い。

 トップ画像の電飾看板の下半分には『お好み焼&コーヒー 茶々』と書いてある。この店はずっと前に閉店しているけれど看板にはこの文字がずっと残っている。この店も2階にあって、看板の通りお好み焼きが食べられた。うちの店から歩いて1分で行けることもあって、たまに母や店の常連さんなどといっしょに利用していた。たしか広島風だったお好み焼きのビジュアルや味は一切覚えていないけれど、内装や佇まいがいかにも昭和といった店だった。
 うちの店より前に閉店したとおもうけれど、まだ看板が残っていることがなんとなくうれしく、このままにしておいてほしいと密かにおもっている。

 商店街の中には駄菓子屋が2軒あったけれど、そういうのもとうの昔になくなってしまった(どちらも愛想のないおばさん店主)。
 昼間から将棋や碁をうっていたおじさんたちの姿ももうみえない(どこへ行ったんだろう)。

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市場にゃんこのみーちゃん

 茶々のお好み焼き、食べたいな。

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