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わが子に会いたいー そのために命を投げ出す



わが子に会いたいー ただそのために、命を 投げ出そうとしている 父親がいる。
ヴィンセン ト・フィショ(39歳)、日本在住15年のフラ ンス人、野村証券のエグゼクティブ・ディレク ターとして株などのセールス・トレーディング を担当してきたエリートだ。
2018年8月10日、日本人の妻に子ども達を連れ去られ、以来、日本で、警察にも、 司法にも、政治にも.マスコミにも.できる限りの手を尽くしてきたが、
二人の子ど も達とは引き離さ れたまま、一度たりとも面会さえで きていない。
その彼が、東京オリンピック国立競技場の前で、ハンガーストライキに入った。
ド クターストップも受け入れない命がけの勝負だ。開会式の23日まで、
生きていられる かどうかもわからない 。
「翼、楓、パパ はここ にいる。大好きだよ。 」もうフランス語がわからなくなってしまっているであろうわが子に語り掛ける時、彼の声は涙声になる。
一目会いたい 。 遊んでやりたい。 オリン ピックの華やかさ に気を取られる日本社会は、世界標準ではごく当たり前に子どもが両方の親と会う権利を求める 、
一人のフランス人パパ の命を見捨てるのだろうか。

取材を通じてフィショ氏と知り合ってから1年以上が過ぎた。日本人の配偶者(多く は妻)に子どもを連れ去られた外国人(多くは夫)の話を、あまりにもよく聞いてき た筆者は、2020 年2月。欧州連合の議会に訴え出た4人の当事者(フランス大、ドイツ 大、イタリア大2人)に興味を持った。彼らは日本で警察、司法や国会議連、マスコミ などに、あらゆるアクションを尽くした後、欧州人として知恵を絞り、欧州議会の嘆 願委員会に訴え出たのだ。日本が、自ら批准している国連の「児童の権利条約」(1989年、日本批准は1994年)を無視し続け、子どもの基本的権利を侵害していることを 強く非難し、速やかな改善を要求する決議を2020 年7月に採択させた。その一人がフ ィショ氏たった。筆者は仏語読みでヴァンサンと呼ぶ。
てっきり欧州にいるのだろうと思った。ところが、日本の永住権を取って日本に住
み、誰もが知る優良企業でしっかりした役職にある親日家たった。
『さっさと奥さんと別れて、本国 に屎り 、第二の人生を歩み始めれは ?』
と、うかつに尋ね瓦車看は憇表を突かれた。
「自分と妻がど んな に折り合わなかったとしても 、子ども達には母親が近く にいることが大切。慣れ親しんだ日本の環境から無理やり引き離すのは子どものためによくない。子どもたち が母親とも父親とも親しい関 係を 育む ことができるよう に、ここで 頑張る。」
俗に誰もが勘繰るような「無責任な不良カイジン」とは違う。子どもを連れ去った 妻から、「自宅内 に監禁さ れた」としてDVで訴え られたが、その 間も外 食し たり買い 物したりしていたカード明細、SNS、写真などの証拠を集めて、法廷でその嫌疑を晴 らし、裁判ではDVがあったと認定されることはなかった。フィシヨ氏の顧問弁護士で 代理人でもあり、自らも連れ去られ被害者の上野昇弁護士(東京弁護士会)によれ ば、日本で毎年家裁に持ち込まれる20万件ほどの離婚案件の7~8割は夫によるDVを 理由にあげるが、実際にDVがあったと認められるのは約1割でしかないのだという。
話を聞けば聞くほど、フィシヨ氏は理性的で誠実な人物たった。その思考や行動 は、今日の国際的な「基本的人権」「子どもの権利」「法の支配」といった理念に貫 かれていた。そして、皮肉なことに、それこそが今の日本でどうしようもなく空回りする理由なのだった 。
警察は「子どもに会おうと すれば逮捕する」 夫婦喧嘩などで、片方の親が、独断で子どもを連れて逃げ隠れてしまうことは、日本の社会通念では「よくあること」だ。日本の政府用語では「子どもの連れ去り・奪 取」などと言われているが、英語ではアブダクション(Abduction) 。日本が北朝鮮 による日本人連れ去りに使っている語彙と全く同じで、国際的にはりっぱな「拉致・ 誘拐」だ。
日本では、 連れ去った側か実家に帰ったり、新しい 住処を 構えたりしてしまえば 、 そこが新しい屋 根の下となるので、連れ去ら れた 側か子ども会いたさに踏み込めば 「家宅侵入」と見なさ れると説明してくれたの は、前述の上野弁護士だ。だから 、日 本では 『連れ去った 者勝ち』が横行する。
ある日、誰もいなくなった自宅に戻ったフィショ氏は、防犯カメラに映っていたこ んな映像を見て仰天した。日中留守宅に戻ってきた妻は、車でガレージに乗り入れ。 なんとそのトランクに生後11ヵ月のわが子を閉じ込めてしまったのだ。用を済ませた 彼女は、娘をトランクに入れたまま運転して出て行ってしまつたではないか。欧米ス タンダードなら、子ども虐待の動かぬ証拠だ。ところが日本の警察でも司法でも「こ れだけでは...」と取り合ってもくれなかった。
フィシヨ氏は、「子ども に会おうとすれば逮捕 する 」と警察から脅されている 。
2018年亶、翼(3R と楓(10ヵ月)と過ごしていたフイシヨ氏cVincent Fichot
司法には子どもの心が扱えな い
日本では、DVの真偽を評価 するのも 、子どもの心理的虐待を審 査する のも 、すべて
司法の専門家でしかない法律家の業務。児童心理やカウンセリングの専門家の知見や ノウハウを取り 入れた方法論がまったく整っていない と問題視するのは、東京国 際大 字で心理字の教鞭をとり、家裁の調停員も務める小田切紀子氏だ。
連れ去られた未成年の子どもの気持ちを適正に聞き取るノウハウも専門員も、日本 の司法には欠如しているという。初めて会う調停員や裁判官の偉そうなおじさん・お ばさんに、心のうちを伝えるのは大人でも難しい。幼い頃に父親から引き離されて、 父の記憶すら消えかけている幼い子どもに、「お父さんに会いたい?」などと闇い て、意味ある答えが返ってくるはずはない。
フィシヨ氏の裁判で は、DV嫌 疑は晴らさ れたものの、家裁、高裁 、最高裁のいずれ でも、相手方(連れ去った妻側)で愛情をもって教育・監護されており、子どもの福 祉という観点からも特 段の問題は認められないとして 、監護権は従前通り、相手方と指定するのが妥当、と判断されて、フイシヨ氏が求める監護権は得られなかった。連 れ去った妻の希望で 。面会交流も認められていない 。
審議に時間がかかればかかるほど、「継続性原則」という理由で、日本では、連れ 去った側での「監護継続」が望ましいと裁定される。監護権のない親との短い面会交 流は、通常、子どもとは無縁の無味乾燥な大会議室などで、第三者に監視されなが ら、おもちゃやプレゼントを持ち込むことも許されずに行われる。その上、監護権を 持つ側か、家裁が決めた面会日時を無視したとしても、それを罰したり、強制したり する方法もない。
一方、「面会交流阻止」で成功報酬を受け取るという違法行為を、堂々と自身のホ ームページなどに記載して憚らない離婚専門弁護士すら大勢いるのだと聞いて驚かさ れた。上野弁護士 は、「とにかくDVを理 由とすれば、時間が稼げ 。『継続性原則』を 盾に子どもの監護権が取れる」とアドバイスするのが、離婚専門弁護士の常套手段と なっているのだという 。
日本では、人権派・リベラル論壇は、なぜ、この問題をもっと取り上げないのだろ う。DV問題ばかりに傾注しすぎて 。母親による実子の連れ去り問題や 子どもの権利侵 害の重大さを見 過ごし ているように見える。DVも、子どもの権利 侵害も どちら も深刻 なのだ。根本 にある 問題は、日本に、DVを 適正に判定する方法も 、懲罰ばかりでなく 矯正するシステムも 、DVに対処しな がらも 子どもの権利を守っていく 手立てもないこ となのに。
フィシヨ氏は 、あ の日から 足桂卜け3 年、毎月充分すぎる 養育 費を 払い続けながら、た だの一度も子供たち に会え ていない。
官僚にも大臣にも期待できな い国 菅内閣が発足し、改めて上川陽子氏が法務大臣となった時、フィシヨ氏は、多少期待したようだった。上川法務大臣は、ハーバード大学出の国際派でキリスト教徙。話 が通じるかもしれないと感じたようだ。国会議員でも、串田誠一氏や馳浩氏など、フ ィシヨ氏らの訴えに耳を傾け、真剣になんとかしようと動いている政治家はいるには いるか、あまりに少数だ。
上川法務大臣に関してΞえば、死刑執行決定件数では、16件(うち1件は少年死刑 囚)と、法務省が死刑執行を公表するようになってからの最多を誇る。オウム真理教 事件関連の7名の死刑執行の前夜には、当時の安倍首相や自民党議員らと「赤坂自民 亭」での宴会に興じていたというから、人の命の重みを感じることができない価値観 が透けて見えた。
今年3月に名古屋大管施設で亡くなったスリランカ人女|生の妹さん二人が、5月に法 務省に出向いて上川大臣本人に面会した際にも、亡くなる様子を映したビデオがみた いという遺族の希望はさらりとスルーし、コロナ禍にも関わらず形だけハグするとい う「心のこちらない国際性」を世界に向かってひけらかしてしまった。
フィシヨ氏の命をかけた子どもたちへの熱い思いは、この法務大臣に伝わりそうも ない。日本のジャーナリスト には響かない

フィショ氏らは、日本記者クラブでも、外国特派員協会でも、前述の上野弁護士や 小田切教授、串田誠 一議員などを交えて。理路整然と 詳細な記者会見を繰り返してき た。「たくさんのメディアが扱ってくれた?」と尋ねた筆者は拍子抜けした。取り上 げてくれたのは、米ワシントン・ポスト、フランスやイタリアのテレビなど、外国メ ディアのみ。日本で記事になったのは、ジャパン・タイムズと、筆者が書いたしょぼ い記事くらいだったとい うではないか。
だからフィショ氏は、オリンピックでやってくる外国メディアや外人ジャーナリス トに向かってハンガーストライキでアピールするのを最後のチャンスと考えた。
「日本はヴァンサン ー人の命なんか、気 にも かけないし 、何も変えられないよ 後、彼らが成人 した時、 『パパはここだよ 』と 、抱 きしめてあげてよ。それま で欧州 に戻って はどう ?」

筆者は必死で説得を 試みた。だが、フィシヨ氏 に筆者の言葉など届かない。
実は、フィシヨ氏は、オリンピックで来日することになっているマクロン仏大統領 に一抹の期待を寄せている。2019年、伊勢志摩サミット出席のために来日中たったマ クロン大統領は、フィシヨ氏に直接陳|胄する機会を設けた。こんな悲劇は「受け入れ がたい」として、安倍首相にも申し入れてくれたのだ。そのマクロン大統領がオリン ピックで再来日する。直訴の可能性が模索されている。
フランスという国は、たとえ外国においても、フランス市民を守る責務を負い、フ ランス国籍を持つ子ども の権利を侵害し虐待しているこ とが判明すれば、断固とし た 行動をとらねばならないと、2019年最高裁でも判断が示されている。フランス市民で あるフィシヨ氏と彼の2人の子ども達を、フランスが見捨てはしないと彼は信じている
コロナ禍で強行される東京オリンピックはとこへいくのだろう。すでに、招致のた めの巨額賄賂疑 惑、女性蔑視発言、外国人選手の商業 利用、人の命を政局の賭け に使 ってしまう政権など、ケチがつきすぎている。感染が拡大し、重症者が出れば、外国 人も日本人もなく、現政権に見捨てられるのではないか。
菅首相は英国コーンウォールでのGフで、日本は「人権擁護や法の支配といった『価値』を共有する国」と発言した。女性にも、外国人にも、子どもにも、基本的な人権 があることを世界に向かって発信するために、ヴァンサンを見殺しにしないでくれるのだろうか。

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さて、この記事は削除に値するほどの事なのだろうか?
報道は多少一方的でも真実であれば伝え、読者に考えを促す役目もあるのではないだろうか?

何よりもこの記事の主題は子どもの人権問題や日本の制度の問題
裁判所運用の脆弱性、悪意のある弁護士など歪みが重なり利用された
世界中から非難されている社会問題だ

話の次元をメディアが下げてはいけない。

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