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【書評エッセイ】今時のイケてる経営者。

今回は、この本をご紹介させていただく。

著者はセールスフォース・ドットコム(米国カリフォルニア州に本社を置く顧客関係管理ソリューションを中心としたクラウドコンピューティング・サービスの超巨大企業)のCEOマーク・ベニオフ。

これまでたくさん経営者が書いた本を読んできたが、この本はそれらとは全く違う内容の本であった。

自社のビジネスについて書かれた部分が非常に少なく、ほとんどが社会貢献に関わることで埋め尽くされていたのだ。

あるいは、自社のビジネスについて書いたら、社会貢献がついてきてそれで埋まってしまったとも言える。

この時代、そしてますますこれからの時代、経営者・会社はビジネスと社会貢献をセットで成立させることが求められているのだと痛感。

この認識で頭をガツンとやられるだけでもこの本は読む価値があると思う。

そんな中でもビジネスに関わるおもしろかった部分を拾ってみた。

トヨタの豊田章男社長との商談の場面が印象的だ。

当初、本社でやる予定だったミーティングがスケジュールの都合で別荘のあるハワイで開かれることになった。

そのミーティングでマークが豊田社長に送ったプレゼントがいい。

地元のアーティストが太平洋の風景やハワイの花や木々を描いた「特製のサーフボード」だったのだ!

もちろん商談は大成功でトヨタとのビジネスが始まる。

マークは発想・構想の道具として白い紙を使う。

私も同じ方法を使っていて、全てのアイデアはA4の紙からスタートする。

私は頭を空っぽにして、白い紙を取り出し、簡単な問いをいくつか書き出した。私が達成したいことに対するビジョンは何か。これは最初に問うべき質問だ。というのも、どこに行きたいかという目的地がはっきりしなければ、そこにたどり着こうにも運任せになってしまう。

そして、独自のフレームワークを使う。

このフレームワークは最終的に、私が「V2MOM」と呼ぶプロセスとなった。ビジョン(Vision)、バリュー(Values)、手法(Methods)、障害物(Obstacles)、評価基準(Measures)の頭文字をとったV2MOMは、次の5つの質問に集約され、全従業員との連携やリーダーシップを取るためのフレームワークとして使うことができる。
①ビジョン……何がやりたいのか
②バリュー……自分にとって何が重要か
③手法……どのようにやり遂げるか
④障害物……何が成功の妨げとなるか
⑤評価基準……どうすればやり遂げたことがわかるか

飛行機に乗り合わせたビジネスマンの友人が浮かない顔をしているのを見て、飛行中に紙を取り出してフレームワークを書き出し、友人の悩みを解消した逸話も紹介されている。

この時代にセールスフォースのような巨大企業を率いるのは如何なる離れ技だろうか?

マークは社内に「最高平等責任者」のポジションを作りヘッドハンティングしたり、自らを「最高質問回答者」と呼び、あらゆる質問に答えようとする。

「意思決定をするのに最も危険な場所はオフィスだ。意思決定は顧客のいる場所でしないといけない」
禅僧の鈴木俊隆が述べているように、「初心者の心には多くの可能性があるが、専門家の心にはほとんどない」のだ。

これが今時のイケてる経営者の姿だろう。

それを教えてくれるのがこの本である📚


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