緩い私は抵抗しない。だから私は服薬を止める気は今はない。
独りっ子の私は
小さな頃から競争心が無かった、らしい。
おやつで取り合いもないし
テストも比べられ無いし
運動はハナから出来ないから気にしない。
勉強も嫌いでは無かった。
自分で要点をまとめたノートを作るのが楽しくて
高校の時は
『それを300円で売って』と言われて
勉強出来るし
小遣いにもなるし
一石二鳥だなと思ってた。
介護と主婦と学生生活を成り立たせる為に
私は『効率的にやる』のが
知らず知らずに身についた。
AをしながらBを考え
Cが出来る。
例え失敗しても
こっぴどく怒られても
結局周りに助けられて
『いいキャラしてる』と
流してもらった。
銀行員の営業も
『ガツガツした気持ちがない』と言われ
飲み会に行っても
『全く手を伸ばして取ろうともしない』と言われ
何かとあれば
独りっ子だよなぁで片付けられていた。
抗うと、ろくな事が無い、
そう思う。
競争心が無いとか
向上心が無いとか
ガツガツしてないとか
言われ続けた自分だけど
唯一、無理やりに頑張ったのが
断薬だった。
妊娠中とか
授乳中とか
そんな事も気になっていた自分がいた。
それで無くとも
重症悪阻で点滴ばかりの生活だったのに
これ以上子どもに悪い影響とか
考えるだけで罪悪感に潰される。
しかも周りの人達が言う。
「そんなケミカルなものに依存してはダメだ」と。
「薬くらい辞められなくてどうする」と。
子ども達を大切に思うなら、
自分が頑張らなくてはいけないと
私は小さな錠剤を手にする度に
言い聞かせた。
いろいろな言葉と情報が
私の中で正しい判断を歪めていった。
その結果、断薬と言う事にがむしゃらになり
結果として私自身が壊れた。
暴風雨の真夜中
突然の発作に襲われ
まだしっかり喋ることも出来ない息子を
やっと自分の名前が鏡文字で無く書ける様になった娘を叩き起こす。
窓を全開にして
部屋の中に入ってくる雨を全身で受けながら
実家の父に電話をかけた
父が呼んだ救急車で私は病院に運ばれた時
私は雨でずぶ濡れで
部屋の中も雨で濡れていて
ベットの上にぼんやり娘が座っていたそうだ。
息子はまた眠って。
朝まで点滴を打ち
昼前に父が子どもたちを連れ
病院まで迎えに来てくれた。
何も知らずにニコニコと
『ママだー』と笑う2人を見て
私は2度と自分に抗って間違った選択をするまいと
誓った。
『大丈夫?薬飲んだ?』
私がぐったりしていると娘が声をかけてくれる
『20分位したら、落ち着くからね』
そう言って手を握ってくれる息子がいる。
それが私の今だ。
娘がそんな話を友達にしたら
『珍しいね』と言われたらしい。
自分が祖母の介護をし
今で言うヤングケアラーだったから
子ども達にはそんな事を課せたくは無かった。
心療内科に時々行って
ダメな時は薬を飲んで
それでもダメな時は寝て過ごす。
今は断薬する気にはならないし
する気もない。
けれど私は変化し続けていて
未来の先はわからない。
一生お世話になるかもしれないし
そうでないかもしれない。
どちらにしても私は私であって変わらない。
こんな母で申し訳ない、そう言うと
『いやー、救急車に乗るって貴重な経験したから』と
笑ってくれる娘がありがたい。
意識が朦朧とする中
『娘は大丈夫ですか』と
救急車の中でも
病院に着いてからも
母は言い続けていたんだよと
娘から聞いた。
父が息子と家で待機して
娘が救急車に乗ったのを見たからだろうか。
それで私は意外にも、
私って母業が出来ているのかなと
バカだから思ってしまった。
幸せに1日を過ごすためには
ケミカルなものに頼る必要がある時
決して罪悪感など持つ必要はないと思う。
ダイエットと言いながら
チョコをつまみ食いする様な
それくらいの気持ちでいいと思う。
必要以上に頑張る事も無いし
自然に生きるという意味を誤っても辛いだけ。
パニック障害で
拒食症で
過呼吸で
メニエール。
そんな私が笑って2人の愛する人と過ごすには
まだ必要なものがある。
今は抗う気持ちにはならない。
自分に緩いなと正直思うけれど
今はそれが良いのだと思っている。
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