マガジンのカバー画像

埴輪紹介所

183
はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
運営しているクリエイター

#茨城

こまりんぼ【埴輪紹介所その1】

埴輪紹介所はじめました。 初回はこまりんぼ。 埴輪ならではのプロポーション。 上着の下のトリック。 横から見ると、とっても細い。 クツは平べったい。 でも鼻は高く、立派なミズラを結っています。 弓もユギもないけど、鞆を腰に下げる。大刀も。 肩甲(かたよろい)と籠手(こて)で腕はがっちりガードも、胴体はのっぺりで甲っぽくない。大丈夫か。 冑は謎多し。 いつもこまり顔。ため息が聞こえる。 そんな彼がわたしは大好き。 群馬県藤岡市白石字滝出土の男子埴輪。 所蔵はトーハ

赤のメイクが引き立てる色白【埴輪紹介所その132】

白塗り? いや脚部まで白いから、もともとの地が白いらしい。 白に赤のメイクが映える。 いや、赤のメイクが色白を引き立てる、と言うべきか。 これほど赤の顔料がしっかり残っているのはすごいことだ。 しかし、赤が目立ちすぎておてもやん感は拭えない。 おてもやんといえば熊本。熊本と言えばくまモン。くまモンは黒に赤のほっぺ。 ちなみに 赤い地に白を塗った埴輪もある。 オレンジでメイクする女子もいる。 色もだが、色を塗る場所も違う。 髷や襟や袖にも赤。 茨城県水戸市愛

巻き上げられた朝顔【埴輪紹介所その129】

大きい。というか細長い。 そして突帯(とったい)が全部で9条。巻きに巻いた。 上から見たいけど 大きすぎて無理。 そもそも 近づけない。 茨城県小美玉市の玉里舟塚(たまりふなづか)古墳出土の朝顔形円筒埴輪。高さ110~120cmぐらい。 所蔵は明治大学博物館。 撮影は2014,2017年、明治大学博物館にて。 玉里舟塚古墳からは、家形埴輪も出土しています。 またね。

気まぐれな外面と内情【埴輪紹介所その128】

訳あって ネアンデルタール人(の骨格標本)と並ぶ円筒埴輪。 ホネより粘土。その表面。 二段にわたる斜格子紋。全周していないとのこと。気まぐれ。 上からのぞき込む。 粘土紐を積んだ跡が見えます。 なでつけは甘め。 のぞき込むと、作り方がわかる。 と同時に、この埴輪は内側はあまり完璧には仕上げなかったこともわかる。 高さ75~85cmぐらい、突帯が6条と立派。 それだけに、内側までは手が回らなかったか。合理的な省略は埴輪の得意技。 茨城県小美玉市の玉里舟塚(たま

埴輪のつくりかた【埴輪紹介所その127】

突帯(とったい)が6条と多めの円筒埴輪。 上からのぞくと 上端はエッジが効いている。 内側はハケ目が見える。道具を使ってなでつけたことになる。 透孔(すかしあな)からのぞくと ハケ目の上に、透孔の周りの粘土が乗っている。 透孔は内側をなでつけた後であけられた。 のぞき込むと、作り方がわかる。 茨城県小美玉市の玉里舟塚(たまりふなづか)古墳出土の円筒埴輪。高さ75~85cmぐらい。 所蔵は明治大学博物館。 明治大学博物館所蔵の玉里舟塚古墳の円筒埴輪は2体のもよう

いくつもの白い丸の理由【埴輪紹介所その97】

白い水玉模様の上衣。 頸飾りの玉も、耳環も、被り物の円い飾りも白。 いくつもいくつも白い丸を描いた。 地色は赤みが強いから白が映える。それが白い顔料の理由? 埴輪時代当時の白はどんなイメージの色だったのか。丸のイメージは? 水玉模様の上衣はほんとうにあったのか。 いわゆる下総型人物埴輪。 ミズラは左右とも失われてしまったらしい。耳孔の後ろに根元だけが残っている。 ちなみに、同じところから出土した埴輪とはミズラのつくりがちがう。 ミズラが残った方がつくりとしては優秀?

後姿がエライことに【埴輪紹介所その96】

大刀を二本、重ねて佩く。 白く塗った頸飾り、2列たらす。耳環も白い。 顔や腕などは、いわゆる、下総型の人物埴輪。 しかしこの埴輪、後姿がエライことに。 ミズラが耳孔から出ている。というより、ミズラを耳孔に突っ込んで引っかけてある。 粘土での造形と言うことを考えると、このつくりはミズラが取れにくくていいのかもしれないが。少なくとも片一方は残った。しかし。 後ろ頭に孔。大きい。乾燥・焼成のための通気口だとは思うが、大きすぎないか? 本来は、かぶり物で隠れていたのかも

赤いしましまの肩掛け【埴輪紹介所その94】

肩掛けをする埴輪はたまにあるらしい。 モデルになった衣装が知りたい。 冑をかぶっていないので、肩甲ではなさそう。 ところでアゴがない。 細い腕。 ウエストから結んだ紐の先が垂れる。 広がる上着の裾はほとんど水平。 現存高53.8cm。でももともとは二本脚だった。となると、そこそこ大型のはず。全身が見たかったなあ。 こまりんぼくらいの背丈はあったかも。 茨城県筑西市西保末出土の男子埴輪。 東京国立博物館に寄贈され展示されている。 撮影は2011年、東京国立博物館にて

2本の脚で立ち尽くす鹿【埴輪紹介所その70】

もう 泣きそう。 だって 矢が刺さっている。 痛いよう。 急いで逃げないと、とどめを刺される。 でも 前後2本の足では走れまい。 とはにこは思っていたのだが、先日前後2本の足で走る犬の映像を見た。 走れるの⁈ しかし立ち止まるのは難しそうだった。何かに寄っかからないと倒れてしまうらしい。 走れず、立ち尽くす埴輪と逆か。 いや 立ち尽くしているように見えて 痛がりながらも逃げ続けているのか。 茨城県つくば市下横場字塚原出土の鹿形埴輪。 所蔵は東京国立博物館。

お猿ですね【埴輪紹介所その51】

分かりやすいって大事。 ちょっと顔が赤い。 目が寄っている。 鼻の下が長い、というか、口の位置が低い。 鼻は長い。ちょっと欠けている。 おそらくニホンザル。 その顔の右に C字の剥離痕。 左には逆さのC。 痕だけでも猿らしい耳だったことがわかるよ。 聞こえないか… 背中にも、何かが剥がれたあと。 子猿であろうと皆が言う。私もそう思う。 だとすると、この猿は母猿。雌猿ということになる。 猿の性別は見分けにくそう。しかも埴輪の猿。全身像は未発掘。 性別はともかくとして

屈託のない笑顔そのもの?【埴輪紹介所その49】

笑顔の埴輪を作ろうとして、見事に笑顔の埴輪ができた。 作り手が見える気がする。つながる気がする。 大きな耳と不思議な被り物。 笄帽(こうがいぼう)と呼ばれる帽子なのか。 ツノかも。髪型かも。 盾持ち人埴輪とかな? あるいは盾の妖精。 しかし笑いは攻撃手段でもある。 「笑いものにする」という言葉がある。 この埴輪は攻撃しているようには見えないが。 茨城県高萩向原出土の人物埴輪。 所蔵は東京大学。 撮影は2016年、東京大学総合研究博物館の常設展示(UMUTオープンラボ 

宇宙こそ彼の頭脳【埴輪紹介所その46】

あごを隠して笑う。 彼のあごを隠しているのは盾。 ギザギザ鋸歯紋が刻まれている。 そして彼の盾は しなる。 こんなにも。 後姿。 盾がまるで振袖。 埴輪は円筒が基本。 一本だけの突帯(とったい)、なぜ巻いたのか。 彼のように前面に盾をつけた埴輪を「盾持ち人埴輪」と呼ぶ。 しかし盾を持つ手はないのだった。 あたま全開。 あるいは宇宙こそ彼の頭脳。 茨城県つくば市下横場字塚原出土の盾持ち人埴輪。高さ61.3㎝。 所蔵は東京国立博物館。 撮影は2018年、トーハ

足りないまま立ち上がる方法【埴輪紹介所その40】

破片をつなぎ合わせても、だいぶ足りない。特に屋根。 狭いてっぺんに並ぶカツオギも、1本なくなっちゃったみたい。もともとは4本かな。 欠けた部分を石膏などで埋めず、内側に骨組みをつける補強方法。 このやり方だと、どこが出土部分でどこが欠損しているのか、わかりやすい。 雨漏りもすきま風も、博物館の中だから大丈夫。さらにケースに守られている。 ところで、壁の突帯が目立つなあ。5本か。 壁面に突帯が多い家といえば、同じ茨城の玉里舟塚古墳の家を思い出す。 玉里舟塚のほうが、さら

ただものじゃない【埴輪紹介所その26】

この孔、何? 三日月形、と言っていいのかな。 孔の先端がとがっていると、そこからひびが入りそう。形もさることながら、孔の比率が高すぎないか? 粘土は節約できるか。 総じて、壊れやすそうだ。 実際に壊れた状態からここまでつなぎ合わせて展示されているわけだが。それはどの埴輪も同じとはいえ、この埴輪は特に危なっかしい。 もっとも、壊れても今に至るまで存在し続けている、というのはすごい。 ところで、口縁部の内側を見ると、二重口縁ではないことがわかる。 しかし外側は 開口部のすぐ