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埴輪紹介所

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はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
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2020年7月の記事一覧

翳(サシバ)?【埴輪紹介所その104】

翳(サシバ)とは? 従者が貴人の顔を隠すべく翳(かざ)す、長い柄のついたウチワ状の道具。らしい。 埴輪時代のサシバそのものは出土していない。 それらしき絵はある。福岡県宮若市の竹原古墳の石室の壁に描かれている。 さて、竹原古墳の絵と この埴輪。 うーむ。似てなくもないが、モデルが同じだという確信は持てない。 下端の角度が気になる。 埴輪には、三ツ葉形の板が貼り付けられ、その下に棒がのびている。 似た埴輪がほかでも出土。 埴輪同士はよく似ていて、同じ物をモデルとし

謎が刺してくる(太陽の孔3)【埴輪紹介所その103】

するどい。 光? 武器? ヒレ飾り? 上に向かうにつれ尖り部分が大きくなる。 下の方、左右に小さい腕みたいなものあり。 二重の円や腕みたいな部分に、ところどころ小円板。 尖りに縁取りや鋲のような小円板はない。 太陽ふうの埴輪は北関東に多い。関西では出土していないもよう。 この地域的な偏りも重要な情報。 一体モデルは何なのか。 所蔵する國學院大學博物館の展示室では「翳」と表記されていた。 しかし埴輪時代のサシバは出土していない。 もっと発掘や研究が進めば、謎を解

ゆらゆら(太陽の孔2)【埴輪紹介所その102】

ゆらゆらの二重丸から発せられる、ゆらゆらの光。 ゆれは粘土製ならでは。 子供の描く太陽のようである。 でも太陽ではない。たぶん。 ところどころに鋲のような小円板がついているから。 ではモデルは何か? 埴輪の謎の一つ。 モデルはサシバ(大型の団扇。自分で自分をあおぐものではなく、誰かがあおぐ)の一種、という説がある。 果たして、そうだろうか? この埴輪は真ん中に孔があいている。 うちわなら孔をあけるだろうか? 埴輪時代のサシバそのものが出土していないのも引っかかる。

埴輪の向こう側(太陽の孔1)【埴輪紹介所その101】

「太陽ふう埴輪」 とはにこが呼んでいる埴輪。 所蔵の東京国立博物館のサイトでは「埴輪 翳」となっている。 サシバかどうか? 未決事項と思う。なにしろモデルが出土していないから。 そこではにこは「太陽ふう埴輪」と呼ぶ。 といっても、太陽がモデルだと思っているわけではない。モデルが確定していない現在は、形状からわかりやすい名前をつけるのがよいと思う。 真ん中に孔があいている。 鳥が ちらり。 縁に紐がつく。 その角や接触点などに、小円板がつく。鋲のように見えるが、

彼らは点線、あいまいな境界線【埴輪紹介所その100】

記念すべき100番の埴輪は、やはり円筒埴輪。 ただし 透孔(すかしあな)がない。 紋様はある。実線と点線。綾杉紋? 上端ちかくに突帯(とったい)が1条? と思ったが 口縁は 二重口縁。 ということは口縁の一次口縁の外側が突き出ているだけ。突帯はない。 内側に点線と丸の紋様。 内側に紋様があることは珍しい。 ほかではちょっと見ない円筒埴輪。透孔も突帯もない、内側に紋様がある円筒埴輪。 そもそもこれは円筒埴輪なのか? ひょっとして器台なのか? 見分けるポイ

揺れる波を羽織る【埴輪紹介所その99】

波。高い波。 山にも見える。かなり急峻な。 紋様の名称としては「青海波」かな。 それを羽織る彼女の表情は 厳しい、思い詰めたような…? でも 笑顔の角度もあるのです。 ところで、鼻の穴がちゃんとあります。 埴輪の鼻の穴はあったりなかったり。 はちまきを巻いている。 額の櫛は失われているけれど、髷をまとめているらしき太い紐あり。 その紐の下に孔。何の孔だろう。通気孔かな。 髷は立体的。中空。 人物埴輪の基本アイテムの頸飾りと耳環はもちろん、耳玉をたくさん

山高帽は武具にならんだ【埴輪紹介所その98】

なんてシンプル。 この思い切りのよいあっさり感。 目的以外は大胆に省略するあたり、埴輪らしいかも。 しかしなぜ帽子だけ作ろうとしたのか。 冑は、甲と組み合わせられて埴輪となっている。あるいは武装した人物埴輪がかぶる。 帽子だけの埴輪。なぜなのか。 山高帽。だいぶ高さがある。 それをさらに円筒の上に乗せ、高く掲げる。 作りかたとしては、円筒につばを付けたのでしょう。 天辺は閉じてある。 つばの付け根に紐が巻かれている。 側面にまるく孔を開けている。 神奈川県横浜市

いくつもの白い丸の理由【埴輪紹介所その97】

白い水玉模様の上衣。 頸飾りの玉も、耳環も、被り物の円い飾りも白。 いくつもいくつも白い丸を描いた。 地色は赤みが強いから白が映える。それが白い顔料の理由? 埴輪時代当時の白はどんなイメージの色だったのか。丸のイメージは? 水玉模様の上衣はほんとうにあったのか。 いわゆる下総型人物埴輪。 ミズラは左右とも失われてしまったらしい。耳孔の後ろに根元だけが残っている。 ちなみに、同じところから出土した埴輪とはミズラのつくりがちがう。 ミズラが残った方がつくりとしては優秀?

後姿がエライことに【埴輪紹介所その96】

大刀を二本、重ねて佩く。 白く塗った頸飾り、2列たらす。耳環も白い。 顔や腕などは、いわゆる、下総型の人物埴輪。 しかしこの埴輪、後姿がエライことに。 ミズラが耳孔から出ている。というより、ミズラを耳孔に突っ込んで引っかけてある。 粘土での造形と言うことを考えると、このつくりはミズラが取れにくくていいのかもしれないが。少なくとも片一方は残った。しかし。 後ろ頭に孔。大きい。乾燥・焼成のための通気口だとは思うが、大きすぎないか? 本来は、かぶり物で隠れていたのかも

どんな顔で太鼓を叩くか【埴輪紹介所その95】

肩から太鼓を肩から斜めに下げる。その太鼓に鋸歯紋。 右手にバチを持っている。 どんな音? 太い左腕で太鼓を支える。 頭部が失われているのが本当に惜しい。 どんな音を鳴らしていたのかも気になるけど、それ以上に、どんな顔をして太鼓をたたいていたのか。気になる。 大小二種類の玉からなる頸飾り。 肩から胸のあたりに、円い剥離痕。左右にある。ミズラのあとか。だとすると男子埴輪だ。 ちなみに、琴を弾く埴輪はミズラありで男子とみてよいものが多い。 太鼓をたたく埴輪はこの1体し

赤いしましまの肩掛け【埴輪紹介所その94】

肩掛けをする埴輪はたまにあるらしい。 モデルになった衣装が知りたい。 冑をかぶっていないので、肩甲ではなさそう。 ところでアゴがない。 細い腕。 ウエストから結んだ紐の先が垂れる。 広がる上着の裾はほとんど水平。 現存高53.8cm。でももともとは二本脚だった。となると、そこそこ大型のはず。全身が見たかったなあ。 こまりんぼくらいの背丈はあったかも。 茨城県筑西市西保末出土の男子埴輪。 東京国立博物館に寄贈され展示されている。 撮影は2011年、東京国立博物館にて

立つ鳥【埴輪紹介所その93】

2本の脚で立つ。 鳥が。 鳥形埴輪が、という点がすごい。 たいていの鳥形埴輪は立ち上がっていない。いわゆるおまる型が多い。 まれに飛んでいる。 そしてまれに立つ。 がっしりと円筒台をつかんで立つ。 埼玉県行田市埼玉出土の鳥形埴輪。高さ79cm。 個人蔵、東京国立博物館に寄託。 撮影は2017,2020年、東京国立博物館にて。 またね。

鵜の目鷹の目ってことで【埴輪紹介所その92】

「鷹」ということになっている鳥形埴輪。 しかし鵜であろうという説が1976年に唱えられている。 くちばしと尾の先端は復元とのこと。そうだったのか。 鷹と想定して復元したということか。 たしかに、鷹にしては首が長い。 しかも、その長い首に紐が結ばれている。紐には色が塗られていたらしい。 しかし、これだけでは鵜と断定できない。 それでトーハクも書き換えられずにいるのか。 魚をくわえていたら? もはや鵜とみなしていいでしょう。 しかし 人物の腕に止まるこの鳥はほんとう

目がない魚形埴輪【埴輪紹介所その91】

目は見当たらないが、エラが刻まれている。まっすぐすぎるが。 口もちゃんとある。 胸びれ・しりびれ・尾びれがある。 背びれもあるのかな? とれちゃったか? 何の魚だろう。 下記の野田市のページでは「利根川を遡上する鮭の可能性がある」とのこと。 しかしそれならもう少し大きく作ってほしいところ。 魚の全長18cm。 そんなことより むりやり円筒に乗っけたところがすごい。さすが埴輪。高さ23cm。 しかしこんなに埴輪にしにくい魚を作ったのはなぜか。 千葉県流山市の