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埴輪紹介所

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はにこが出会った埴輪たち。埴輪との出会いの衝撃をあなたにも。これはと思う埴輪がいたら、会いに行ってみて。埴輪のいる人生が始まります。
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2020年4月の記事一覧

カツオギは大事【埴輪紹介所その41】

戸口はどこ? 窓しかないみたい。 作り忘れたのかな。 秘密の出入り口があるのか。実は地下道が堀られているのか。 たてよこの突帯で区切られた壁。その一区画に窓だけあけた。 短いスカートのような裾廻突帯は安定感があってよい。 家本体と寄棟部分に対し、切妻部分はきっちりしたつくり。 屋根の上の6本のカツオギは、2本の棒にがっちりくっつけられている。重要性がうかがえる。 棟木も太い。破風もピンとのびている。 埼玉県行田市の埼玉古墳群の稲荷山古墳出土の家形埴輪。入母屋造り。 所蔵

足りないまま立ち上がる方法【埴輪紹介所その40】

破片をつなぎ合わせても、だいぶ足りない。特に屋根。 狭いてっぺんに並ぶカツオギも、1本なくなっちゃったみたい。もともとは4本かな。 欠けた部分を石膏などで埋めず、内側に骨組みをつける補強方法。 このやり方だと、どこが出土部分でどこが欠損しているのか、わかりやすい。 雨漏りもすきま風も、博物館の中だから大丈夫。さらにケースに守られている。 ところで、壁の突帯が目立つなあ。5本か。 壁面に突帯が多い家といえば、同じ茨城の玉里舟塚古墳の家を思い出す。 玉里舟塚のほうが、さら

ロングスカートに三角もようのノースリーブ【埴輪紹介所その39】

屋根、特に切妻部分が大きい家。 てっぺんにカツオギが6本。赤く塗られているようです。 刻まれた鋸歯紋にも、一つ置きに赤い色。 切妻に対し、寄棟部分は小さい。 現実と違うバランス。埴輪の家らしい家。 壁はまるい。角がない。 横から切妻部分をのぞいて見ると 風通しよし。 ロングスカートに三角もようのノースリーブを合わせた? 細身。特にウエストが締まっている。 群馬県出土の家形埴輪。入母屋造。 所蔵は八王子市郷土資料館。 撮影は2017年、『学芸員のおすすめ!蔵出し収

むっちりしたビル?【埴輪紹介所その38】

屋根と壁の境目がラフ。 軒がないのよ。 全体に箱っぽい。ビルっぽい。四隅の角は、ややあまい。 カツオギ6本を乗せた屋根は、入母屋造りのつもりらしい。上が切妻、下が寄棟。 でも切妻と寄棟の境目のくびれが弱い。切妻の破風が埴輪にしては抑えめ。 ビルっぽいのは合計5本の水平な突帯(とったい)のせいもある。 突帯自体は埴輪の特徴だ。 壁を切り抜いただけのシンプルタイプの窓と戸口。戸口に扉なし。 埼玉県深谷市の山崎山出土の家形埴輪。入母屋造り。 所蔵は埼玉県立歴史と民俗の博物館。

いつでも小人が待っている【埴輪紹介所その37】

ころっとした小さな家。 ゆるやかな曲線を描く屋根のてっぺんには、カツオギ3本が乗る。 開いた戸口をよく見ると、 扉があるではありませんか。 押し込まれているけど、どうやってくっつけた? その扉をよーく見ると、取っ手つき。 でも取っ手も扉も動かなそう。いつでも開放中。 埴輪時代からずっと、小人が待っている。 埼玉県深谷市の山崎山出土の家形埴輪。寄棟造り。 はにこの記憶と目測では、高さ30㎝はあったかと。50㎝はなかったような。 所蔵は埼玉県立歴史と民俗の博物館。 撮影

ログハウス【埴輪紹介所その36】

おごそかにライトアップされた家は、まわりの埴輪たちに守られている様子。 がっしりした入母屋造りの屋根にはカツオギがたくさん乗る。10本かな。 でもこの埴輪の特徴は、なにより、壁にずらっと貼り付けられた突帯(とったい)です。9本か。 ログハウスみたい。埴輪時代の実際の建物に近いのかも。 「家を守る」をテーマに展示されているらしい。 それにしても、この家形埴輪は奥まりすぎている。 もうちょっと前に出して。 茨城県小美玉市の玉里舟塚(たまりふなづか)古墳出土の家形埴輪。入

側面であかんべ【埴輪紹介所その35】

可動式の扉がついている家形埴輪。 両平側にあります。 まず、閉じている側。 棒がたくさん突き出している屋根も気になる。棟覆かな。 扉、閉じてます。 そして、あいている側。 扉、あいてます。片開きですね。 回転軸がある。よく粘土で作ったなあ。窓枠もしっかり。 なぜ埴輪でここまでつくったんだろう。 ところでこれは窓? 戸口? 側面であかんべ。 あかんべが戸口だとすると、扉つきのところは窓ということになる。 出土地不明の家形埴輪。入母屋造り。高さ、1mは余裕で越え

ガードが固いのか甘いのか?【埴輪紹介所その34】

切妻造りの屋根にはカツオギとチギがついています。棟木と桁らしきものも見える。 家を囲む囲いは柱が立派。 可動式の扉の上にはギザギザ三角がついてます。 中に入るには厳しい取り調べがあるのか。という雰囲気ですが、 扉、あいてます。 そうなると入りたい。 ガードが固いのか甘いのか? それからサイズの問題。家のカツオギとチギが囲いからのぞいています。 家形の高さ44.8㎝,幅28.8㎝,奥行36.8㎝。 囲形の高さ38.0㎝,幅58.8㎝,奥行92.0㎝。 家を隠しきれない囲

風が吹き抜けていく【埴輪紹介所その33】

見晴台? 物見やぐら? 窓が大きいというより、柱しかない。 その割に屋根が大きいのは、埴輪だからか。 切妻造りの屋根が横にのびる。高さ約68.3㎝、屋根の最大幅約87.0㎝。 一階と二階のそれぞれの床面高さあたりに、スカート状の帯がめぐる。 内側は、例によって底抜け。 いろんな方向に風が吹き抜ける家。 線刻チェック。 柱に刻まれるは 鍵手紋(かぎてもん)。 屋根に刻まれるは 網代紋(あじろもん)。 黒斑が見えます。野焼きされた埴輪ですね。 広島県安芸高田市の甲立

底抜けサンド【埴輪紹介所その32】

入母屋造りの屋根の上には鰭飾り。 均整の取れた立派な二階建てだが、実は一階も二階も底抜け。 一階と二階の間、スカート状にめぐる部分はネズミ返しらしい。 そのネズミ返しには直弧紋(ちょっこもん。×印に弧)が刻まれている。 欠け部分、ところどころ黒いのはなぜか? いわゆる「サンドイッチ状」になってしまった部分らしい。 野焼きじゃなくても、窯焼成でも、焼けにくい箇所はサンドイッチ状になるようだ。この埴輪はおそらく野焼き。 京都府長岡京市の乙訓(おとくに)古墳群の恵解山

飛び立つための準備運動中の家【埴輪紹介所その31】

屋根に刻まれたシンプルな線刻、すがすがしい。 入母屋造りの家。埴輪でなければあり得ないプロポーションの家。 いちばん上の切妻部分が大きい。破風が思い切りよくのびている。まだのびそう。翼? ダンボの耳っぽくもある。 ふたつ並んだ窓は目に見えてしまう。 下端の中央が半円に切り取られ、左右に足ができた。もぞもぞ。 飛び立つための準備運動中かな。 側面の開口部は戸口なのか。 奈良県桜井市外山出土の家形埴輪。高さ47.8㎝。 上記サイトでは多数のきれいな画像を拡大できます。 所

ひょろりな家【埴輪紹介所その30】

高さがある、というか、縦長の家。 おとぎばなし感つよし。家というより塔。 斜めになっている長方形の孔は、たぶん戸口でしょう。 側面の丸い孔は通気口かな。 壁に綾杉紋がぐるりと刻まれる。 屋根に点々とあけられている小さな孔はなんだろう。鳥につつかれたわけじゃないよね。 てっぺんがガタガタしているのは、カツオギが取れちゃったのかな? 裏表はないらしい。 裾廻突帯(すそまわりとったい)は控えめというか、申し訳程度につけられている。 肝心の高さデータがないのですが、一緒にいる鳥

子持ち家形埴輪【埴輪紹介所その29】

5棟の家がくっついている。 中心に入母屋造りの伏屋建物、平側に入母屋造りの家2棟、妻側に切妻造りの家2棟。 しかし、こんな建物… 実際につくれるか? 埴輪ならではの家なのかも。埴輪は自由。 屋根に網代紋が刻まれている。 裾廻突帯(すそまわりとったい)は地面の高さを表しているのか? 家はどれも床が抜けているらしい。 宮崎県西都市の西都原170 号墳出土の子持ち家形埴輪。高さ54.5cm。 所蔵は東京国立博物館。 上記サイトでは多数のきれいな画像を拡大できます。

屋根から突き出すこれは【埴輪紹介所その28】

チョキ。チョキが8つ。じゃないだろうな。 飾り? 棟覆(むねおおい)の部材かな? それにつけても切妻の角度の鋭さよ。 基部23.2㎝×29.0㎝に対して、屋根の最長部が66.3㎝。屋根が基部の倍以上に伸びている。 家形埴輪はお屋根が決め手。 ちなみに高さは39.2㎝。全体としては小さめの家。 ちょっと粗目の質感と、オレンジ寄りの色も、この埴輪の個性。 宮崎県西都市の西都原古墳群出土の家形埴輪。切妻造り。 所蔵は東京国立博物館。 撮影は2015年、トーハクの平成館にて