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虚ろなパティスリー #仕事の思い出


とある小さなパティスリーの思い出。

スナフキンとミムラのような社員達と、
人畜無害で質素なパートさんが数名いた。


おとなしすぎず、しゃべりすぎず。
誰も悪口を言わず、意地悪もしない。
助け合いはする。


なのに何故かそこで働くと、虚ろな感情に支配され、
生気を吸い取られるような感覚に陥る。

心も身体も、底冷えするような寒さを感じるのである。


冷蔵庫の温度とまではいかないが、涼しい工場ではある。


なのに、ハートに直撃で冷気が襲ってくる感じ。

心臓にぽっかり穴が空いたような空虚。



何かありそうで、何も無い。



無、無、無。


無だから、嫌なことも、楽しいこともない。
嬉しいも、怖いもない。


何もない。

「何もない」が怖い。

「何もないのが怖い」という、理由すら無い。



あんまりにも「何もない」のが、私を"不安"にさせるのか。





全てが、静かすぎる・・・。



むしろ、ロボットだけに囲まれている工場ならば、こんな気持ちにはならなかったろう。
心が無いだけマシなのだ。

しかし、ここには人がいる。
心があるのに、空っぽとは・・・?



嫌な思いはしてなくて、むしろプチケーキ作りは地味に
面白い作業だった。

評価も「可もなく、不可もなく」。

なので3回くらい働きに行ったが、毎回、わけもなく薄ら寒くて、怖くなる。







不気味でないのに、空恐ろしい。

ただただ、普通ではない空間という感じはする。


この無機的な工場は、「哲学的な問い」を突きつけてる
有機的な空間なのだろうか。



まるで、あの世とこの世の境目のような、
虚ろで、不思議なパティスリー。



思い出すたび、怖くなる。




519社で働いて、このような現場は、
そこ以外は無かった。



#なんのはなしですか

不運な人を助けるための活動をしています。フィールドワークで現地を訪ね、取材して記事にします。クオリティの高い記事を提供出来るように心がけています。