コスト削減の行き着く先/最適化による最大多数の最少幸福
「うーむ、なぜ売れないんだろう?」
「どうしましたか? 社長さん」
「いやね、いままでこれで売れていたんですが、売れなくなってしまったんですよ?」
「おやおや」
「いままでとなにも変えていないんですがねぇ」
「それはいままでとなにも変えていないからですよ」
「え? ダメなんですか?」
「だめだめですよ。いまはどこもコスト圧縮に値下げ競争! いままでと同じでは売れませんよ!」
「そうなんですか! ではこれは・・・」
「ああ、この値段ではダメですよ。いまはその半額くらいじゃないと売れません」
「半額ですが、そんなのは・・・」
「ムリではないですよ。コスト削減の方法を教えてあげましょう!」
「ありがたい! そういうあなたは・・・・?」
「私は、コンサルタントです」
コンサルタントの助言に従い、社長は経費削減を突き進めた。
いままで四人でやっていたものを二人でやるようになった。
「なるほど! こうやってやればいいんですね! いままでの半額でできますよ!」
「よかったよかった」
しかし、しばらくすると売れなくなりました。みな、半額となり、さらにはそれよりも低い価格で売りに出されました。
しかたなく、社長は二人でやっていた仕事を一人でやるようになった。
しかし、それでも他社と同じくらいでした。
「うーん、もっと安くできないものか・・・・」
「でしたら、人をやとわなければいいんですよ?」
「それはさすがにできないでしょう?」
「むかしだったらできませんでしたが、いまではできますよ」
そういって、ロボットが導入された。
人件費のかからないロボットでさらに安く提供できるようになった。しかし、それも束の間、他の会社もロボットを導入して、同じくらいの価格になってしまいました。
「コンサルタントさん、どうしましょう?」
「最新型を買いましょう!」
いままでの数倍早いロボットのおかげでさらに安く売ることができるようになりました。
しかし、ほかよりも安くしたというのに、あまり売れません。
以前のように買いに来る人が減ってしまいました。
「どうしてた。他より価格が安いのに? ああいかん、ロボットの支払いをしないといけないのに!」
しかたなく、社長はアルバイトで日銭を稼ごうとしました。
しかし、昔は山のようにあったバイト募集の紙が見当たりません。
「あの、ここで仕事はできませんか?」
「ないよ」
社長が聞くと、男は答えます。
「もうどこも人を雇うような仕事は残ってないのさ」