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怪しいFIREの秘訣/悠々自適な隠居生活

俺は経済的自由を手に入れた。
いわゆるFIREってやつだ。

学も職もない落ちぶれた俺だが、FIREできた。
それは欲を捨てることだ。

有り余るほど欲があればいくらカネがあっても足りない。
永遠にFIREなんてできない。

しかし、欲がなければ最低限のカネで済む。
俺は元々欲が少ないこともあったが、見栄も甲斐性もなんもかんも捨てたら楽になった。
が、それでも多少の日銭を稼ぐ必要がある。

日銭を稼ぐということは要は毎日労働しなくちゃいけないってことだ。
これが問題だ。
俺は毎日働きたくない。

FIREってのは矛盾しているんだ。
FIREできるようなヤツは仕事狂かなんかだ。ハードルの低いFIREってのも欲が少ないやつはそもそもの労働意欲も極小だ。
数十年働けばいいと言われても、そんな事ができるはずがない。

生活保護でも受けさせてもらえれば大満足なんだが、いまは審査も厳しい。
労働人口の減少で、一人でも逃さないように国も躍起らしい。

じゃあ、どうやってFIREしたかって?
それはこれさ。

この顔を見ればわかるよ。

しわくちゃな老人の顔だ。
おっと俺はまだ20代だ。これは整形さ。

この老人は実在する。いや、した、が正しいか。
孤独な一人暮らしの老人さ。

年金ぐらしの。

俺はこの老人に成り代わった。
誰にもバレていない。

バレようがない。なんせ身よりも人付き合いもないんだ。

振り込まれる年金で俺は質素に暮らしている。
つまらないと思うかもしれないが、俺はコレだけで満足だ。

最低限のカネがあれば、十分。
いまは老人も長生きするからな、あと十年は国のカネで暮らしても疑われないだろう。

その次はそうだな。また身寄りのない老人を見つけるかな。


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