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第2章 音楽が言葉の壁を越える瞬間 B面

私の名前は、『チョウ・コン』
国籍は中国人。
親の仕事の関係で日本に移住することになり、今は日本の普通の小学校に通っているの。

日本語がなぜそんなにできるのかって?

勉強したからに決まってるでしょ。
中国人は勤勉なのよ。
言っとくけど日本語だけじゃなくて英語も話せるのよ。
日本人ももっと語学を勉強するべきだわ。

学校生活はというと、、、、

クラスのみんなとは仲良しだし、みんなとても優しくしてくれるので、楽しい学校生活を送っているわ。
この辺りは比較的育ちが良いお家柄のお友達が多いせいかしら?
ニュースで見るようなイジメなんかは全く見当たらないわ。

まぁでも、一つだけどうしても気になることがあるのよね。
朝の会?て言うのかしら?
毎朝先生が生徒の名前を1人ずつ呼んで、みんなが「ハイハイ」返事をしていく点呼の時間があるのよね。

私はそれがどうしても嫌なの。

なんか軍隊??か刑務所にいるみたい。
なぜこんな文化があるのかしら。
いるかいないかなんて見ればわかるのに。(笑)

だから私は返事の発音がうまく出来ないフリをして、いつもうつむいて黙っているのよ。
そんな小さな事で・・・と思う人もいるかもしれないけど、人それぞれゆずれないモノってあるでしょ?
小学生のささやかな抵抗だと思って笑って許してほしいわ。

担任の先生はとっても素敵な人よ。
歳は知らないけど、30歳前半くらいかな?
いつも私たちのことをちゃんと見てくれてて、やさしいお兄ちゃんって感じ。
結婚するなら先生みたいな人がいいなぁと・・・キャッ(恥)

そんな先生だけど、たまにちょっとしんどいなぁ・・・って思う時があるのよね。
たぶん、先生というお仕事にすごく一生懸命なんだけど、真面目で熱すぎる時があるのよね。
朝の会で私がいつも返事しないことをすごく気にしてくれていて、

「発音難しかったら、中国語の返事でもいいよ」

なんて優しく言ってくれるんだけど、、それも毎日(笑)

いやいやいや、それ余計恥ずかしいんだけど!!(笑)
(ちなみに中国語での返事は『在!』(ざい)って言うのよ)

でもこんな私に真剣に向き合ってくれてる先生にそんなこと言えないし、朝の会の点呼が嫌なのは私のワガママだからなぁ・・・・。困った困った。

でも先生って本当に優しいから
ある日、
「チョウさん、じゃあ声出さなくてもいいので、出席呼ばれたら小さく手を挙げてもらえるかな?」
って言ってくれて。

「あー、なんて優しいの。もう結婚して。先生♡」 ※心の声

なのでしばらく朝の点呼は、私だけ『手を挙げる』で落ち着いていたの。
でも、ホント日本人って皆が同じじゃないと気が済まない民族なのよねぇ・・・。
学級委員長の律子ちゃんが、

「先生、なんでチョウさんだけ手を挙げるだけでいいんですかー?」

って・・・(汗)

「んもう!!! いいじゃないそこは! 空気読んでよ。」

とちょっとだけイラっとしたんだけど、律子ちゃんはノート貸してくれたり、おもしろいマンガとか教えてくれたり、色々優しくしてくれてるから、大人しく黙っていたの。
そういえば「律子」って名前からしても、規律正しい感じがビンビンするわ。
お父さんが大学の教授で、お母さんはピアノの先生だし、きっと厳しく育てられたのよ。

そんなこともあって、熱血先生がまた再加熱よ。
おうちの小籠包のスープよりアツアツだわ。
思った通り、すぐ放課後に職員室に呼び出しがかかったの。

私は職員室へ向かいながら、
もしかして
「チョウさん! 16歳になったら、俺と結婚してくれ~!」

なんて言われないかな~って、おめでたい妄想全開で職員室に行ったら、

「チョウさん、出席取る時の返事って言いにくい??」

「・・・・・・。」

やっぱりそうなるわよね・・・。
ハイハイすみませんでした。

「んもう!! 先生彼女いるの!? 私なんてどう!?」

と、すごーく言いたい気持ちを抑えて、ちょっと困った感じで、コクリとうなずいて見せたわ。

そしたら、、

「うーむ、、そうなのか・・・日本語の発音の問題なのかなぁ・・・」
「『在!』でもいいけどねぇ?」

おいおいおいおい、それまた蒸し返す感じ!?
だから余計恥ずかしいって言ってるじゃない!
いや、、、言ってはないけど・・(笑)

先生!! そんなことじゃ女の子にモテないわよ!

「ヅァイ! 先生の発音、これ合ってる?」

「ぶっ!!!」

だめだ、発音も超下手だし、真面目な顔が余計面白い。
必死で笑いをこらえて、

「フフフ、へたくそー」

これが限界だわ。
もう大声出して笑い転げたいのだけれど、そんなことをすると先生がきっと嫌な気持ちになるから、うつむいて困ったふりをして我慢してたのよね。

すると、

「わかった、できるようになったらでいいから、頑張ってみてね。」

ふぅ・・・・
なんとか今日はお家に帰れるわ。

『でもそんな一生懸命な先生が好きよ♡』

さて、早く帰って私の好きな B’zでも聞こーっと。




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