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東ティモールに飛んだ。病を抱えた眼すらも、澄んでいた。 ~医療ボランティア記【後編】

両目を手術した患者さんの眼から涙…

いよいよ東ティモールでのボランティアが3度目を迎えた時、日本から眼科専門医の先生が同行くださいました。このときは翼状片が酷かった患者さん(Manuela マヌエラさん)の治療をすることに。
進行すると角膜に異常をきたし、視力の低下を招いてしまうこともあったため、この日は特に状態が悪かった左目を手術をさせていただきました。

手術2

患者さんにとっては人生初の眼の手術。それに加えて外国人医師による手術は、恐怖と緊張が大きかったはず。「Hau Diaka(ハウ ディアク)大丈夫ですよ」と頻繁に声をかけながら手術した。人として患者さんの心に寄り添える、そんな医師でありたい。

やはり日本人眼科医への信頼と期待度がとても高く、「もう一方の眼もDr.Okanoに、お願いしたい」と依頼をくださいました。また1年後に来ることをお約束し、翌年、4度目の訪問の際に左眼も手術。この日はご家族も総出で来てくださいました。(下写真)手術は無事終わり、患者さんの眼からは涙が。その涙を見て思いました。

「ここに来れて、ほんとによかった。」

私の方が喜びをいただいた患者さんとの出逢いでした。

翼城辺オペ

【写真左】初回は左目、そして翌年【写真右】は右目を手術。晴れて両目とも治すことができ、ご家族からも何度も「ありがとう」のお言葉を頂いた。手術後にいただく感謝のお言葉と笑顔は、何よりも、自分の原動力を作ってくれる。

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こちらの女性(左)の左目手術も執刀させていただいた。安堵の涙が、私の心に残る1枚。

栄養指導、眼科における医療支援を行うNPO法人を設立

眼科専門医として東ティモールに入ったわけですが、2006年というまだ最近まで内戦があった国、やはり現地の人々にお会いする中で、栄養失調について問題視するようになりました。
日本は「高齢化社会」ですが、東ティモールは高齢者より若者が多い国。そして乳幼児、子供が栄養不足で死亡するという、まだまだ後発の発展途上国なんです。
お腹に赤ちゃんがいるお母さんを含め、母子の低栄養を改善できる方法はないのか?東ティモールの保健省に出向き、政府に働きかけ、実現に向けて動き出しました。

そして、元々私が東ティモールに行くきっかけを作ってくださった満尾医院眼科(神奈川)の坂西京子院長や元JICAスタッフの長壁 総一郎さんほか、多くの方達と対話を重ね、遂に2019年9月、NPO法人「NAROMAN(ナロマン)」を設立しました。「NAROMAN」とは現地の言葉で「輝き」を意味します。

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在東ティモール大使館 南大使〔当時・左から2番目〕を訪問。栄養指導の支援を要請した。

このNPOは、
①栄養不良な子どもたちへの支援(家族への教育を含む)
②眼科領域における医療支援
この2つが活動のミッション
。(現在は眼科の直接な医療支援は休止中)
栄養に関する支援においては、インドネシアの大塚製薬様に支援を依頼しに同地へ足を運び、栄養支援をいただけることになりました。また、食育プログラムを提供し、親子に対する食育教育なども行っています。

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長男(当時15歳)も東ティモールに同行。これまで暮らしてきた国と違う発展途上国で、国と医療の現実を見てSDGsの重要性を学んだ。

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【写真左】:インドネシア大塚製薬様からサポートいただいた栄養補助食品のプロテイン。「飢餓をなくす」というSDGsの指針への貢献も、同社と合意に至った。
【写真右】3大栄養素を学んだり、歌で手洗いについて学んだり、調理実習も行う。全てのコースが終わると、修了証が渡される。彼女たちが国のインフルエンサーとして学びを広げてくれたら嬉しい。

さらには手術用顕微鏡を外務省のご協力のもと現地にお送りしたり、度数の進行により使われなくなった老眼鏡の寄付を日本で募りお届けしました。(下写真)

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初めてかける老眼鏡に感激、喜びの表情を見せてくださった男性。

こうした栄養指導支援、物的支援は勿論ですが、やはり眼科医療支援については、今後の注力分野です。日本の中途失明原因で最も多いのは、緑内障・糖尿病ですが、東ティモールで最も多い(79%)のは、「白内障」なのです。つまり、手術できれば、救えていた眼が約8割。眼科医であれば、おそらく誰しもが、悔しく、もどかしい思いをする世界ではないでしょうか。

共に東ティモールの人を支える仲間に出逢いたい。


のべ16日の現地で約500人の無料診察を通じて痛感したこと、それは、「眼科医数人の力と時間では救える人にも限界がある」、ということ。人口120万人の国。組織で、チームとなって東ティモールに関わっていきたいのです。

手術はもちろんのこと、現地の医療者の実技指導・教育に力を入れることで、サスティナブルな医療発展に繋げることが可能になります。
「現地に短期出張のような形で共に飛んでくださる仲間に出逢えたなら」と、未来を描いているのですが…現状はコロナ禍で見通しを立てることが難しい状況です。

しかし、時を待たずして、現地には満足な治療を得られずに光を失っていく人たちもいます。眼科医として、自分の手で支援できるようになった今、そうした世界を「知っている」だけで終わりたくない。
少しずつでも、自分が流れを変える当事者でいたい。

私の診察室のデスクの真上には、東ティモールでいただいた写真をピンで留めています。静かに眺める度に、気持ちは、前へ。
少しずつでも、また足を運べる日に向けて準備を止めずにいくのみです。

思い出写真

〔最後に眼科医・医療関係者・投資セクター関係者の方へ〕
この記事を読んでいただき、もしも共感、ご興味を持っていただけたならば、宜しければ、こちらまでお気軽にご連絡をいただければ幸甚です。
➡okanonote20210717★gmail.com
(このアドレスをコピーの上、★を@に変えてお送りいただけますようお願い申し上げます)

このボランティア記をお読みいただき、誠にありがとうございました。
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