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小説集

8
投稿した小説を雑多に詰め込んでいます。
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記事一覧

紫煙はやがて涼風へ【オリジナルSS】

紫煙はやがて涼風へ【オリジナルSS】

 夏の風が嫌いだ。

 爽やかと呼ぶにはあまりにもぬるく、じっとりと湿気を孕んで、アスファルトの焦げた臭いを纏いながら、馴れ馴れしく頬を撫でる夏の風が、私は大嫌いだ。

 と、まあ、そんなことを言いながらも、私は今日も茹だるほどに暑い夏の日の光が降り注ぐ、学校の屋上で一人座り込み、ぼんやりと空を眺めながら煙草の煙を口から吐いていた。美味しくもなんともない、唯々苦い煙を口から吐くたびに、体の中に溜ま

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午後三時、無料のチキンとコーラ【オリジナルSS】

午後三時、無料のチキンとコーラ【オリジナルSS】

「あ、当たってしまった」

 私はSNS画面に表示された某コンビニからの「当りです! おめでとうございます!」というリプライを見つめながら手を震わせた。

 よくある商品の無料交換券やら割引クーポンやらが当たるキャンペーン。SNSで友人達がこぞってキャンペーンに参加していたのを見て、私も少し前から近所にあるコンビニのキャンペーンに参加するようになった。
 当たれば良いなと思いつつ、同時に当たるわけ

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お風呂にしますか?【2】【創作BL小説】

お風呂にしますか?【2】【創作BL小説】

 オレの名前は青野渚。「「なりたい」を纏う」をコンセプトにしたジェンダーレスファッションブランドのショップで働くアパレル店員だ。

 このショップにはオレが学生の頃からアルバイトでお世話になっていて、その流れで有り難いことにこの春から「正社員」として採用してもらえた。新入社員として働き始めて一ヶ月と少しになるがやっぱり、バイトの頃に比べたらやることも責任も増えたなぁって感じる。
 毎日、やってくる

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理想のベッド【オリジナルSS】

理想のベッド【オリジナルSS】

「うわ、ひれぇベッド!」

 高校三年生の修学旅行。宿泊先のホテルで自分たちの部屋に着くなり彼はそう絶叫した。部屋のほとんどを占めている二つのベッドは大の字になって寝られるほどの大きさであったと記憶している。長時間の移動で疲れ切っていた俺はゆったりと眠ることが出来るそのベッドに喜んだが、同室の彼はそうではなかったようで大げさに顔を歪めて腕を組んだ。
 どうしたのかを訊くと、彼は深刻そうにこう言った

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お題「バレンタインデー」【創作BL小説】

お題「バレンタインデー」【創作BL小説】

自分の執筆スキルを上げるため&クラウドソーシングサービスに掲載するのポートフォリオ作成のための「一時間で小説を書こうチャレンジ」第二弾。

今回のお題・執筆時間・文字数はこちら

お題:バレンタインデー
執筆時間:一時間十五分(十五分オーバー)
文字数:2,997字

では、どうぞ!

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「野原くん、バレンタインのとき僕にチョコレートをくれないかい」

 放課後。生徒が皆、い

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お題「じゃがいも・玉ねぎ・にんじん」【創作BL小説】

お題「じゃがいも・玉ねぎ・にんじん」【創作BL小説】

自分の執筆スキルを上げるため&クラウドソーシングサービスに掲載するのポートフォリオ作成のために「一時間で小説を書こうチャレンジ」を実施中です。

今回のお題・執筆時間・文字数はこちら

お題:じゃがいも・玉ねぎ・にんじん(フォロワーさんから)
執筆時間:一時間半(三十分オーバー)
文字数:3,357字

では、どうぞ!

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「なにそれ」

 ホームルームが終わり、荷物をまとめ

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お風呂にしますか?【1】【創作BL小説】

お風呂にしますか?【1】【創作BL小説】

 私の名前は香坂昭彦。とある企業の人事部で働いているしがないサラリーマンだ。
 三十二歳で一人暮らし。趣味と言える趣味もなく、毎日家と会社を往復する、何の変化も変哲もない毎日。
 そんな平凡で平坦な日々に数週間前変化が起きた。

 住んでいたワンルームマンションから1LDKのマンションへと引っ越した。そしてそこで――

「こーさかさん! この荷物どこ置けば良い?」
「あぁ、それは私の私物だからこっ

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見えるOLと死んじゃった彼女の話【1】【GL小説】

見えるOLと死んじゃった彼女の話【1】【GL小説】

プロローグ 恋人が死んだ。仕事から帰る途中で通り魔に襲われたそうだ。

 恋人は、クズか聖人かといわれればどちらかと言えばクズの部類の人間で、美人であるのを良いことに男女問わず食い散らかしていた。それは私が恋人になっても変わらずで、近所のコンビニに煙草買いに行く感覚で男に抱かれに行き、スーパーに酒を買いに行く感覚で女を抱きに行っていた。

 何が言いたいかというと、兎にも角にも恨みを買いやすい女だ

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