見出し画像

銀河フェニックス物語<出会い編> 第二十六話(2) 将軍家の鷹狩り

第一話のスタート版 
第二十六話(1
第二十六話のまとめ読み版

 確かにわたしが謝ることじゃない。
 けれど、レイターが怒っている原因はわたしに関係があって、しかも、わたしはレイターの顔を見たら、つい、動揺して大きな声を出してしまった。

 先週末にジョン先輩から、思わぬことを聞いた。

n50プー@口むハの字眉カラー

 レイターにとって大切な人だという『愛しの君』は、レイターの前の彼女で、すでに亡くなっている、というのだ。

 その話を聞いてから、きょう初めてレイターと顔を合わせた。
 自分でもよくわからないけれど、心の準備ができていない状態でレイターと会いたくなかった。


 わたしは気持ちを落ち着かせて、フェルナンドさんにあいさつした。
「あらためましてティリー・マイルドです。よろしくお願いします。ベルからお話うかがってます」

n11ティリー@2桃柄スーツやや口

「僕もです」

 フェルナンドさんが仕事のできる人だ、と言うことはその打ち合わせだけでよくわかった。

 綿密な行程表が渡された。
「これはあくまで目安です。事態にあわせて臨機応変に対応しますから」
 レイターから行程表が示されたことはない。こちらから到着時間を伝えればそれで終わり。
 ルートそのほかこちらから聞けば答える、という態度。

 フェルナンドさんの行程表には食事のメニューも記されていた。しかも、わたしの好物がそろっている。
「食事のメニューも変更可能ですから」
「わたしの好きなものばかりです」
 フェルナンドさんが微笑んだ。

n41正面微笑

「警護対象者ということで、ティリーさんのこと、調べさせていただきました」
 わたしのことを調べた? 


 そうか、この人は普段社長を相手にしているのだ、いろいろと気を使うことが多いのだろう。

 フェルナンドさんの船プレジデント号は、クロノスの最高級船ハイグレード。ランクが一番上の船だ。自社の船だけれど初めて乗った。

 普段は社長が利用しているハイスペックな船。乗り心地も抜群だ。

 そして、仕事はまさに行程表の通りに進んだ。 

 フェルナンドさんの警護は素晴らしかった。
 車のドアの開け閉めから、わたしとの距離の取り方から、何から何までスマートで、自分が重要人物になったように錯覚しそうだ。

「具体的な日付を詰めておかなくて大丈夫ですか?」
 と、さりげなく仕事のフォローまでしてもらい、非の打ち所がない。

 グラードの売買契約はスムーズに終わり、帰途についた。
 何のトラブルもなかった。厄病神とは大違いだ。

 帰りの船の中で、フェルナンドさんと食事をした。
 プログラミングによって調理された料理も、美味しかった。

 食後のコーヒーも香りがいい。
「ティリーさんはコーヒーにうるさいとベルから聞いたので」
 と微笑むフェルナンドさんに、お礼を伝えた。
「今回は、ありがとうございました。わたし、とても気持ちよく仕事ができました。『厄病神』のレイターが一緒ではこうは行かなかったと思います」
 と、つい余計なことまで言ってしまった。

n1レイターウインク@カラー逆

「『厄病神』というのは、レイターさんにとって酷な気がしますね」
 フェルナンドさんはレイターをかばうような発言をした。

「彼は報酬に危険手当を上乗せしてもらっています。そもそも、レイターさんが行くところはリスクが高いですから」
「そうなんですか?」
 初めて聞く話だった。

 レイターとフェルナンドさんは、同じボディガード業界だから知り合いだ、ということはわかるけれど、二人の関係はそれだけではない気がする。

 わたしは聞いてみた。
「レイターとは、どういうご関係なんですか?」     (3)へ続く

第一話からの連載をまとめたマガジン 
イラスト集のマガジン

ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」