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銀河フェニックス物語 <ハイスクール編> 第一話(10) 転校生は将軍家?!

銀河フェニックス物語【出会い編】スタート版
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ハイスクール編 マガジン

 レイターは、授業を聞いていないし、宿題もやってこない。
 テストの点も合格点ギリギリで、オレとどっこいどっこいだ。

 でも、こいつ、オレとは違う。
 この間、レイターとハンバーガーショップへ行った時のこと。

 オレはとりあえず宿題の数学の問題集にとりかかった。テストの点が悪いから、これを提出しないと進級に関わる。ゲーセンに行ってる場合じゃない。

 レイターは宿題を出す気は一切ないらしい。携帯通信機で宇宙船レースの動画を真剣に見ていた。

 問題が解けなくて、オレが頭を抱えていたらあいつ、
「ちょっと貸してみ」
 と言って、スラスラとタブレットペーパーに回答を書き出した。

 驚いた。
「おまえ、ほんとは勉強できるのか?」

正面驚く

「あん? 俺は『銀河一の操縦士』になるんだぜ。ま、算数ぐらいできねぇとな」
 と言うと、あいつはまた動画を見始めた。


 レイターは、信じられないことにテストの時も寝ていた。俺にはよく理解できない。 
「おまえ、どうしてテストの時も寝てるんだ?」
「あん? テストって合格点取りゃいいんだろ。それ以上やるの、無駄じゃん」
 無駄? よくわからないが、あいつはあいつなりに考えているようだ。

 返ってきたあいつの数学のテストを見たら、合格点が取れる難しい文章題が一問だけ解いてあった。


 授業中に描いている宇宙船の落書きも、どうやらただの落書きじゃないらしい。
 あれは、物理の授業中だった。

 レイターが落書きに夢中になっているところを、教師に見つかっちまった。 この教師、神経質で生徒の非を理詰めでねちねち攻めてくるから、みんなから嫌われていた。

「レイター・フェニックス。君は何をしているのかね?」
「力学の勉強です」

15ハイスクール1制服にっこり

 あいつは、いけしゃあしゃあと答えた。

「じゃあ、これは何かね?」
 教師はレイターの落書きを、正面のスクリーンに大写しにした。二隻の宇宙船が並べて描いてあった。

 クラス中が小さな声で笑った。レイターがいつも宇宙船の落書きをしていることはみんな知っている。
「私には、宇宙船にしか見えないが」
「そうです。レース用S1機です」
 開き直ってるよ。オレたちは笑いをこらえるのに必死だ。

 レイターだけが、真面目な顔をして教師に聞いた。
「先生に質問です。右の船と左の船。どちらの旋回性が高いと思いますか?」
「君はふざけているのかね」
「ふざけてるわけじゃありません。左の翼は、カロック原理の係数を二次元に置き換えて曲線を描いてみました」
 レイターはなにやら変な式をモニター上に書き始めた。
「ところが、計算式にあてはめても旋回性が上がらないんです。その理由がわかりません」

 レイターが何言ってるのかさっぱりわかんなかったが、教師は宇宙船を見つめて急に黙り込んだ。
「君は将来、宇宙船の設計技師になるつもりかね」
「いいえ」
「まあいい。この問題は宙航力学だけで解けるものではない。あとで教科の部屋に来なさい」
「いやです。今、ここで教えていただけませんか。わからないなら、それはそれで結構です」
 教師の細い目が見開き、眉が怒りで震えている。

 丁寧な言い方だったけど、今のはどう聞いても「あんた物理の教師のくせにわかんねぇのか」ってバカにしてる様に聞こえた。慇懃無礼というやつだ。

 教室中が緊張した。   (11)へ続く

第一話からの連載をまとめたマガジン 
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」