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銀河フェニックス物語【出会い編】第五話 今度はハイジャックですって?!③
第一話のスタート版
今度はハイジャックですって?!① ②
操縦室をフルパワーで空気洗浄し、レイターが機長席に座った。
マヌ星へ向けて操縦している。
そしてわたしはレイターの隣の副操縦席に座っていた。
「変な気を起こさないでください」
オグリースが後ろの席からわたしにスプレー銃を向けながら言った。レイターに毒が効かないからわたしが人質になったのだ。
気分はよくない。
*
銀河警察からコクピットに思わぬ連絡が入った。
「マヌ星からカシオペアの着陸許可が降りない」
「ど、どういうことだ。どうする?」
オグリースが心配そうにレイターに聞く。
「隣の星系まで飛んでちゃ間に合わねぇ。予定通りマヌに降りる」
マヌ星はもう目の前だ。
マヌ星はこの間まで地下採掘権をめぐって戦争していた。
一年の三分の二は砂嵐が吹いているという住みにくい星で、今は連邦軍の管理下に置かれているはず。
「高度六千五百から、大気圏突入までカウントダウン願います」
機長席のレイターが管制とやりとりをしている。
「現在、マヌ空港の周辺に砂嵐警報が出ている。着陸の許可はできない」
レイターが怒鳴った。
「バカ野郎! こっちにゃ重病人が乗ってんだよ。一分一秒争ってんだ」
「命を危険にさらす許可はできない」
「うるせぇ、強制着陸する」
「宙航法に違反する」
「ごたごた言うんじゃねぇ。俺を誰だと思ってやがる『銀河一の操縦士』だぜ」
そう言うとレイターは管制のモニターを切ってしまった。
「ど、どうする気だ?」
オグリースがレイターに聞く。
「着陸するさ」
レイターは平然と答えた。
茶色い風で目視が利かなくなってきた。機器の値も不安定だ。
わたしは怖くなって聞いた。
「管制してもらえないんでしょ。しかも砂嵐だって言うのよ」
突然、管制用モニターが明るくなった。
「おい、レイター」
さっきの管制官より年配の男性が映りレイターに呼び掛けた。
「あん?」
「お前が操縦してるなら最初からそう言え。いつ転職したんだ?」
そう言って笑った。
「お久し、ベーリーあんたまだそこにいたのか」
レイターが親しげに声をかけた。知り合いのようだ。
さっきまで対応していた管制官が後ろからおそるおそる声をかける。
「空港長、ほんとによろしいのですか?」
「ああ、構わん」
「機長経験も不明のこんな若造ですよ」
「大丈夫だ。こいつは、ここの砂嵐の着陸に失敗したことはない」
空港長のベーリーさんが言い切った。
「ということだから、よろしく頼むぜ」
レイターが真剣な表情になった。操縦桿のレバーを引く。
管制はベーリー空港長が担当した。
「砂嵐による磁場補正は九十六度」
「オーライ」
二人の息がぴったりとあっている。
かっこいい。
思わず、レイターの横顔に見とれてしまった。
さっき医者から「彼氏」と言われたことを思い出す。レイターがわたしの彼氏だったら・・・。
この人普段はおちゃらけているけれど、こうして真剣に操縦している時は素敵だ。
と思った自分の考えを即座に打ち消した。
素敵? そんなはずない。この男はデリカシーのかけらもない『厄病神』よ。
わたしのあこがれは、我が社の社長でS1ドライバー『無敗の貴公子』エース・ギリアム。
『厄病神』のレイターとは月とすっぽんだわ。
*
砂嵐で多少船が揺れたけれど、レイターは空港の指定された場所にぴったりと着陸させた。
この人の操縦はうっとりするぐらい上手い。
「相変わらずいい腕してるな」
空港長がレイターの腕をほめた。
「へへ、当たり前だろ。俺は銀河一の操縦士だぜ」
わたしはレーサーが好きだ。
そのせいだ。嬉しそうなレイターの顔を見たら胸がキュンとした。
*
船長たちはすぐにマヌ星の病院へと運ばれた。
中央船室ではオグリースが人質として残す乗客の名前を発表していた。人質を十人に絞り込んだと言う。
わたしは手を握りしめてその様子を見ていた。緊張する。
「申し訳ありませんがルギーナ王妃には引き続き、人質となっていただきます」
「仕方ないわね」
王妃は肩をすくめた。
十億リルを払うから解放してくれ、と言っていた社長の名前も呼ばれた。
「私には持病があるんだ。病人なんだ。解放してくれたまえ」
社長はオグリースに必死にアピールしていたけれど、
「あなたの財力は我々に役立つ可能性があります」
と、要求は受け入れられなかった。
医師の男性も人質として残ることになった。
力のある人たちが人質として残されている。
だからか、わたしの名前もレイターの名前も呼ばれなかった。
ルギーナ妃には悪いけれどここで解放されることにホッとした。
*
後ろの席の親子も解放される。わたしはお兄ちゃんのミゲルの手を握って出口へ向かう列へ向かった。
「よくがんばったね」
「うん」
ミゲルと話すわたしを見ながらレイターが言った。
「と言う訳で、ティリーさん。ここでお別れだ」
「ちょ、ちょっと待って。あなたも名前呼ばれなかったじゃない」
「あん? 誰がこの船動かすんだよ」
「交代の操縦士が来るんでしょ」
「俺は銀河一の操縦士だぜ」
最初からこの人は残るつもりだったんだ。
「じゃあ、わたしも残るわ」
「悪いが、ティリーさんあんたに残ってもらっちゃ俺が困る。あんたを守るのが俺の仕事だ」
いつもふざけているレイターの表情が真剣だった。
「銀河警察がアラ星系まで送ってくれるから、それまでちゃんと坊主の面倒みてやれよ」
釈然としない。でも、反論できない。
レイターは『銀河一の操縦士』で、今、この状況を的確に仕切っている。そしてわたしは足手まといでしかない。
わたしはレイターの目を見て絞り出すように言った。
「・・・気を付けて」
「あいよ」
買い物にでも行くような軽い挨拶だった。
*
解放される人質の列が流れ出した。わたしはミゲルの家族と一緒に乗降口へと歩いた。
窓の外は砂嵐が吹き荒れている。
船の出口とマヌ星のターミナル空港はボーディングブリッジでつながれていた。
空港側に銀河警察がいるのが見える。ここを渡れば自由だ。
警察が突入してくるのを防ぐためだろう、見張りのハンスはスプレー銃をわたしたちに向けて立っていた。
それを見て思い出した。
レイターも大量の毒を吸ったのだ。彼だって船長たちと一緒に病院で看てもらった方がいい。
見張りのハンスに提案した。
「ねぇ。操縦士のレイターも病院に連れていった方がいいと思うの。彼、大量に毒物を吸ってるのよ。途中で操縦士が倒れたらアリオロンまで行けないわよ」
「僕には決める権限はない」
「じゃあ、わたしが交渉するわ」
リーダーのオグリースに提案しよう。
「お母さんを守ってね」
わたしはミゲルの手を放し、今来た道を戻ることにした。
見張りのハンスは持ち場を離れる訳にもいかず困っている。
「人質が一人増えてもあなたたち困らないでしょ」
そう言ってわたしは歩き出した。
* *
マヌ星に到着したか。
アリオロンの工作員ライロットはカシオペア上部にあるコンパーメント船室の一つに潜んでいた。長期滞在の客が利用する個室。
オグリースが人質の大半を開放したな。想定通りだ。
乗客乗員百人を抑えるのは負担が大きい。人質十人の選抜はすでにシナリオとして用意してあった。
この隙に船から離れたいが、砂嵐警報が出ていては降りられぬな。
我が軍が到着するまでしばし待つとするか。
* *
この船は広い。ティリーはため息をついた。
歩いているうちに道に迷ってしまった。わたしは方向音痴だ。ここはコンパーメント船室だわ。
あれ? 誰かいるのかしら。人影が動いたような。
いやいや、いるわけないわよね。乗客は全員中央船室に集めさせられたし、スタッフロボも倒れているんだから。
中央船室への案内板を見つけてほっとする。これに沿って行けば大丈夫。
なんとか、中央船室まで戻ると、ルギーナ王妃が驚いた顔で近づいてきた。
「どうしたの、ティリーさん?」
「道に迷ってしまって」
照れ笑いをする。
バンッ。
と、操縦室のドアが開いてレイターがすごい勢いで飛び出してきた。
中のモニターで見ていたのだろう。「あなたも病院へ行こう」って言おうとした時、レイターが大声で叫んだ。
「バッカ野郎! 何で戻ってきた」
怒鳴られてわたしはカチンときた。
「あなたの仕事は何なのよ」
「は?・・・あんたを守ることだっつったろ」
「じゃあ、わたしが一緒にいないと困るでしょ」
レイターが驚いた顔をしている。
「俺、あんたが何言ってんだか、さっぱり理解できねぇんだけど」
「あなたが心配なのよ」
「はあ? この俺が心配?」
レイターが間の抜けた顔をした。
確かにこの人はおそろしく優秀なボディーガードで自分の身を守ることぐらい簡単で、わたしが心配をする必要なんてどこにもない。
だけど、だけど・・・。わたしはほんとに心配だったのだ。涙がでてきた。
レイターが困った顔をしながらあやすようにわたしの頭に手を置いた。
「参ったな」
レイターの手が熱い。
やっぱりこの人熱っぽい。病院へ行った方がいい。と思った時のことだった。
「交代の操縦士が到着しました」
スプレー銃を突きつけられながら航空会社の制服を着た若い男性が中央船室に入ってきた。
制帽を深々とかぶっている。
「初めまして、銀河航空のアーサー・ブラウン一等航海士です」
驚いた。その声に。
アーサーさんだ。銀河連邦軍将軍家の跡取り御曹司で天才軍師。
長い黒髪を制帽の中に隠している。
ニュースで見るのと印象が違うから誰も気が付いていない。
わたしはフェニックス号で直接お会いしたからわかる。
レイターはアーサーさんのことを「下宿屋の息子」と呼んでいた。
アーサーさんは民間船舶会社の身分証を示しながら自己紹介している。
「アーサー・ブラウンです。機長歴一年の新人ですがよろしくお願いいたします」
アーサー・ブラウン?
わたしの知っているアーサー・トライムスさんと名字が違う。
「新人さんねぇ。大丈夫かよ。よろしく頼むぜ」
レイターも初対面という顔で応対している。
でも、二人の会話を聞いて確信する。間違いなくわたしの知ってるアーサー殿下だ。
考えられることは、極秘裏に連邦軍が助けに来てくれたということだ。
わたしも知らないふりをしなくては。
*
機長席にレイター、副操縦席にアーサーさん。後部座席にわたしとオグリースが座った。
レイターが言った。
「砂嵐が注意報になった。今のうちに出航するぜ」
「私が操縦しましょうか?」
アーサーさんが声をかけるとレイターは露骨にいやそうな顔をした。
「俺がやる!」
この人は自分が操縦していない船はほんとに好きじゃないのだ。
アーサーさんがレイターに言った。
「砂嵐を抜けるために、お祈りの言葉を捧げさせてください」
「勝手に言ってろ」
レイターが離陸準備をする横でアーサーさんが手を合わせて何やら唱え始めた。
聞いたことがない美しい調べの言葉だった。
「以上です」
「じゃあ、行くぜ」
レイターが船内にアナウンスを入れた。
「当船はこれより離陸いたします。シートベルトの着用をお願いいたします。次の目的地は無管轄空域Dゲートです」
* *
アーサー本人が来るとは思わなかった。レイターは横に座るアーサーをチラリと見た。
さっきの砲撃はこいつの指示か。
「砂嵐を抜けるために、お祈りの言葉を捧げさせてください」
こいつがこういう時は決まって良くない情報だ。
「勝手に言ってろ」
アーサーはあいつの祖国の言葉インタレス語で話し出した。絶滅民族のこの言語はもう俺しか理解できる奴はいない。
おいおい、何だって? この船にアリオロンの工作員ライロットが乗っているだと。
は、はぁん、それで警護ロボが俺を殺そうとしたのか。納得だ。
ライロットと俺の間には暗殺協定が結ばれている。
あいつを殺しても俺は罪に問われない。そしてライロットが俺を殺しても連邦は一切関知しない約束。
上等だ。ライロットの野郎、見つけ出してぶっ殺してやる。
アーサーはその情報を俺に伝えるためにこの船に乗り込んできたという訳か。
*
安定飛行に入った。俺は隣のアーサーに目配せした。
オグリースの奴、疲れているな。時々うとうとしている。
そっとその隙にオグリースが腕に着けている情報端末に不正アクセスして情報を盗み出す。
ふ~ん。ライロットの野郎、ミスターRと名乗って警備室に潜んでいたのか。連邦軍の砲撃と同時にいなくなったと。
あいつはマヌ星で逃げたかったろうが、砂嵐で船から降りられなかったな。ざまあみろ。
この広いカシオペアのどこかに奴は隠れている。
後ろの席を振り向く。ティリーさんも眠っている。寝顔がかわいい。
どうして危険な船に残ったりするんだか。俺の仕事が増えるじゃねぇかよ。
隣のアーサーがインタレス語でつぶやいた。
「ティリーさん、かわいいな」
俺の感情を逆なでる。
「やめろっ!」
アーサーは素知らぬ顔をして銀河共通語で業務報告を始めた。
「機長、まもなく食事の時間です。いかが致しますか?」
「決まってるだろ、キョウコに飯を運ばさせるんだよ」
「わかりました」
いったん、人質全員に起きてもらう必要がある。
* *
「お食事です」
操縦室に機内食を運んできたキョウコの声でティリーは目が覚めた。
わたしは少し寝てしまったようだ。
「うめぇなあ」
自動操縦なのだろう、機長席のレイターも副操縦席のアーサーさんも食事を始めた。
隣のオグリースの銃はわたしに向いていた。毒物を向けられながらの食事はおいしくない。
グルルルゥ
オグリースのおなかが鳴った。
「あなたも食べたら」
わたしは勧めた。ずっと同じ空間にいるからか慣れてきた。
この人悪い人だけれど悪い人じゃない。
オグリースはヘルメットを取ったらどんな顔をしているんだろう。興味がある。
「まもなく交代が来ますから、大丈夫です」
やんわりと断る。
わたしはオグリースに聞いた。
「あなたたちって他人のコンパーメント船室で寝てるの?」
さっきの人影はハンスの仲間に違いない。
「失礼な。客のコンパーメント船室なんて使っていません」
「あら、誰かいたかと思ったのに」
勘違いだったようだ。
キョウコが運んできたのは特等座席の高級な食事だった。
わたしが食べている横でオグリースがつぶやいた。
「上流階級は我々から搾取し、こんな贅沢な食事を摂っているんだ」
アーサーさんが振り向いて静かな声で言った。
「搾取と言う表現は適切ではありませんね。自由競争の結果であり利益の配分に置いて不当な権利侵害はありません」
「わかったようなことを言うんじゃない。連邦のシステムは世襲という既得権で彼のような純正地球人が牛耳っているんだ」
反論したオグリースはレイターを指さした。
「俺は何もしてねぇぞ」
ムッとするレイターを制してアーサーさんが話す。
「確かに連邦の統治は、世襲という不自由なシステムが軸になっています」
わたしは思わず息を飲んだ。
アーサーさんは連邦軍将軍家の跡継ぎ。まさに世襲だ。
「じゃあ、何故その不自由を続けてるんだ?」
オグリースが突っかかる。
「淘汰されなかったから」
「淘汰だと。違う! 権力で押さえ込んでいるんだ」
アーサーさんが静かに語り出した。
「現代は昔のような武力による革命は意味がなくなりました。なぜならば銀河連邦憲章によって、連邦評議会の三分の二の賛成があれば、統治システムの変更が可能だからです。世襲が規定されている評議会議長も将軍家も廃止できます」
社会の授業で習った。
統治システムの変更については、議長にも将軍にも拒否権がない。
「世襲を廃止したいというあなたたちの訴えは広がっていない。権力が押さえ込んでいるのではなく、共感を得られていない」
「黙れ!」
「あなたたちはシステムに不満を述べているだけで、結果への責任を負っていないからです」
「違う!」
「連邦の辺境星系に貧困が多いのは確かです。全ての人を満足はさせられない。どこに均衡点を置くべきかという最適解は常に更新されています。その評議会の判断を多くの人が受け入れている」
アーサーさんの声は決して大きくないのに凛とし、言葉は心を捉える。
オグリースは反論できないでいる。
「ノーブレスオブリージュ。歴史に淘汰されないため自らを律する努力を強いられます。私利私欲を捨てよ、既得権から離れよ、公僕たれ、正しい判断をせよ、民意を理解せよ、子どもの頃からどれほど教え込まれることか」
「ま、まさか、あなたは・・・」
オグリースの声が震えている。
その時、操縦室のドアが開きキョウコが顔を見せた。
「お食事の回収に参りました」
レイターがキョウコに話しかける。
「乗客の方は終わったかい?」
「ハイ」
「OK、じゃあ、そろそろ始めるか」
とレイターが言った。
* *
「OK、じゃあ、そろそろ始めるか」
俺の言葉でオグリースとくっちゃべっていたアーサーが操縦パネルに向き直った。
「な、何を始めるんだ?」
オグリースの問いを俺たちは無視する。
ウォオオオオーン。ウォオオオオーン。
アーサーが大音量の警戒サイレンを船内に鳴らした。同時に乗客の座席に酸素マスクを降ろす。
俺はアナウンスを入れる。
「皆さま、酸素マスクの着用をお願いいたします。緊急事態です。繰り返します。酸素マスクの着用をお願いいたします」
俺は機長席から立ち上がった。
「ティリーさん早くマスクをつけるんだ」
ティリーさんの顔に酸素マスクを押し当てた。
「な、何が起こっているんだ?」
慌てるオグリースに俺は首筋に手刀を入れた。あっけなくオグリースの身体が崩れ落ちる。
取り上げたスプレー銃をアーサーに渡す。
「先に行く」
と言って俺は操縦室から船室へと出た。後はアーサーがオグリースを縛り上げるだろう。
*
「キョウコ、全員酸素マスク着用したか」
「はい、大丈夫です」
中央船室でキョウコがにっこりとほほ笑む。見れば見るほどこの女性ロボは美しい。
初めに機内食を持ってきた時、握手をしながら非接触型遠隔装置でクラッキングした。それがキョウコで良かった。
ヘルメットを被ったハンスたちが俺の近くに集まってきた。
「一体、どうしたんだ?」
「何があった?」
「オグリースはどうした?」
中央船室の見張り五人がそろったところで、俺は銃を抜いた。
「悪いね」
ハンスたちが怯えたのがわかった。
ビュッツ。ビュッツ。
奴らがスプレー銃を撃ってくる。青い毒物が俺に向かって飛んでくる。無駄だ。俺にはきかねぇっつったろ。
俺は次々とハンスたちを撃つ。
五人全員が床に転がった。
警備室にいるハンスの仲間が空調通じて毒を流しても人質は酸素マスクをしているから安全だ。
「キョウコ、ここらの毒物洗浄を頼むぜ」
「了解しました」
さて、あとハンス四人とライロット。かくれんぼか、それとも鬼ごっこか。いずれにしても鬼は俺だ。見つけに行くぜ。
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」