銀河フェニックス物語<出会い編> 第一話 永世中立星の叛乱 (16)
第一話のスタート版
永世中立星の叛乱 (15)
「とりあえず、今期の認定が取れたのはよかった」
フレッド先輩は仕事の話を始めた。
「そうですね」
わたしは頷いた。けれど、そこは想定内だ。
「来期の件は本社と相談だ。ラール王室が出てくるとなると厄介だが、検査代をつり上げて様子を見てみよう」
「はい」
と返事はしたけれどアドゥールさんは金額ではない、と言っていた。でも、他に方法が思いつかない。
「もう、どうでもいいじゃねぇか」
レイターの言葉にカチンとくる。
「レイターにとってどうでもよくても、うちの会社にとっては大事なことなの!」
「なんで?」
この人はわたしを馬鹿にしているのだろうか。
「5S-Lが取れなくなっちゃうのよ」
「だけど、あんたんとこのライバルのギーラルもイグートも連邦の宇宙船メーカーが、み~んな5S-Lが取れねぇなら、一緒じゃねぇの。どうでもいいじゃん」
「・・・」
レイターの言うことに一理ある。言葉に詰まった。
「それにしても綺麗だったな、アドゥールさん。出張に来た甲斐があったぜ」
「確かに美人だ」
にやけたレイターのたわごとに先輩まで鼻を伸ばしている。
「フレッド先輩まで何言っているんですか」
仕事と容姿は関係ない。とは言え、アドゥールさんは美人な上に仕事もできる。
レイターがわたしの顔をちらりと見ながら言った。
「やっぱいいよな、大人の女って」
わたしに対するあてつけだ。
「失礼しちゃうわ」
つい、膨れっ面になる。
「あれぇ、ティリーさんのことガキって一言も言ってねぇんだけど。なぁに、怒ってんの?」
レイターの指摘が余計に腹を立たせる。
「いい加減にしてちょうだい」
と怒った直後のことだった。
ダッダッダッツダダ・・・。
身体が揺れる。突然の轟音。
バリーン。
硬化ガラスが割れた、と思った時にはレイターがわたしの体を引っ張っていた。
キャー。
叫び声が聞こえる。
いつのまにかレイターの手にはレーザー銃が握られていた。
そこからレーザー弾が飛び出した。
ギューン。ギューン。
弾は、向かいにある三階建てのビルへ向かって飛ぶ。
屋上に大型銃を手にしている男の姿があった。
弾が男を直撃。
男の身体が路上に落下する。
あっという間の出来事だった。
焦げ臭いにおいと煙。
硬化ガラスのかけらが散らばっている。一体何が起きたの?
「ティリーさん、フレッド大丈夫か? けがはないか?」
レイターの声が遠くに聞こえる。レイターがわたしの体を揺さぶった。
「痛いところはないか?」
どこも痛いところはない。
パトカーと救急車のサイレンが聞こえてきた。
近くで怪我をした人が救急隊の治療を受けている。
「な、何が起きたんだ?」
フレッド先輩も呆然としている。
「あの人どうなったの?」
レイターが撃った男の人。
路上に倒れている男を警察官が取り囲む。血だまりが目に入った。
「さあな」
と、レイターがあいまいに答えた。
答えを聞くのが怖い。でも、あの人はおそらく死んでいる。
レイターが撃ったレーザー弾で。
レイターが殺した。
これは、現実なの?
制服を着た警察官が近づいてきた。
レイターが何か証明書を見せた。
「ボディーガード協会の方ですね。ご協力に感謝します。少しお話を聞かせてください」
そう言って警察官はレイターに敬礼をした。 (17)へ続く
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」