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音楽理論を独学で始める5つの方法

楽器を弾いてみたい。作曲をしてみたい。音楽をより深く楽しみたい。そんなときに助けてくれる魔法こそが音楽理論(Music Theory)です!

しかし専門的教育を受けていない人にとって、これほど手を伸ばしづらいものはありません。「音楽なんて感性だ」と逃げ出したくなってしまう方も多いかと思います。

今回は、動画・書籍・ウェブサイト・作曲ソフト・プログラミングなど様々な手法を用いた入門方法を紹介することで、誰でも今すぐできる独学の手助けをしたいと思っています。

1. 動画で学ぶ

音楽理論でコアとなるのは、和音(コード)の存在です。そんな和音の仕組み(コード理論)を楽譜を読めない初心者でもなんとなく抑えれる、最初の方法としておすすめしたいのが「紲星あかりの誰でもわかるコード理論」です。

アニメ(うちのメイドがウザすぎる!)、ゲーム(モンスト)、アイドル(AKB48)などに楽曲提供をしているOzaShinさんが作成した、23回におよぶスケール(音階)、コード進行などを扱った講座でボリューム満点です。

しかし、一気に見ると最後の方はちんぷんかんぷんかもしれませんので、他の方法とも合わせながら少しずつ身につけながら進めていきましょう。



2. 楽典入門

楽典(Musical Grammar)」とは、1806年にイギリスの作曲家ジョン・ウォール・コールコット(John Wall Callcott)さんが作ったテキスト「A Musical Grammar in Four Parts」が翻訳されたもので、書籍だけでなく、音楽大学のカリキュラムとしても採用されています。


さらに教科書的で難解な側面を和らげた、「楽典入門」も発売されており、楽譜の読み方から丁寧に紹介されていて、非常にわかりやすいです。



3. 自由派音楽理論

動画ではJ-POPに、楽典ではクラシックに有利な理論体系を紹介されていました。実は音楽理論は時代とともに形を変え続けており、理論とは名ばかりであり、方法論的で探査的な側面が強いといえます。

そんなポップス、クラシック、ジャズ、電子音楽などでの局所的な知識体系に縛られないジャンルレスな理論を構築するプロジェクトが、「自由派音楽理論」です。

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運営している吉松 悠太さんは、独学で音楽理論を学び、慶応大学SFCでは「マクロ音楽理論」という独自の研究を学生時代に行うなど、音楽理論に対する造詣が深く、メロディー、コード、リズムについて細かく事例を上げながら解説してくれています。

様々な音楽を探したり作りながら複合的にじっくり学習することで、理解度は何倍にも増幅されます。



4. MIDI検定試験

MIDI (Musical Instrument Digital Interface)とは1981年に公開された、電子楽器の演奏データを転送・共有するための共通規格です。音声波形ではなく、音の高さや大きさなどの数値化された軽いデータを扱うため高速で通信でき、2019年にMIDI 2.0が公開されるなど現在でも非常に重宝されています。

またDAW(Digital Audio Workstation)という音楽制作を行えるソフトウェアにもMIDI規格は採用されており、気軽に音楽づくりを楽しむことができます。

MIDI検定という資格試験では、個人での楽曲制作では必ず必要となってくるデジタルオーディオの知識と、音楽理論の知識を一度に学ぶことができます。

日本文理大学で准教授をされている星芝 貴行さんのMIDI検定講座を一度拝見しましたが、電子楽器の直感では分かりづらい仕組みを丁寧に解説されていてとても面白かったです。



5. AI作曲

なぜか音楽ファンに敵対意識を向けられてしまいがちな、人工知能(Artificial Intelligence)を用いた作曲ですが、AIほど楽器初心者にとって力強い味方はいません

なぜなら音楽理論を学ぶ際に必要なのは、ルールをあえて破った創造的好奇心ではなく、ルールに従うことで見えてくる可能性への探究心だからです。

一定のルール上での音楽の振る舞いをシミュレーションできるプログラミングは、下手に初心者が悩みながら演奏して確かめるよりよっぽど早く音楽理論への理解が進みます。

さらにプログラミング初心者で音楽理論初心者という方向けの「Magentaで開発 AI作曲」という書籍も現在予約がはじまりました。

作者の斎藤喜寛さんは、手塚治虫復活プロジェクト「TEZUKA 2020」のCM曲をAI作曲や、三菱地所と隈研吾さん共同設計のパビリオン「CLT PARK HARUMI」でのインタラクティブ(サラウンド)の制作など、「音楽×IT」を牽引している一人です。



音楽理論にも弱点がある

音楽理論が非常に強力な魔法であることは代わりありませんが、どうしても弱点が存在します。それは音色とリズムです。


◆ 音色
録音技術の発展により、単なる音の高さ(基本周波数)による理論だけでは不十分であることが分かり始めました。

音色とは、楽器ごとの特性により倍音などの異なった周波数が混ざり合うことで生まれる響きのことです。

シンセサイザーにより人工的に作った音色では従来の音楽理論で期待された効果が生まれず、電子楽器に合うコード進行が求められる場合もあります。

さらに個人での楽曲制作でもDAWの普及により、編曲ミキシングが自由にできるようになりました。そのため細やかな音色の扱いが求められます。

また楽器の特性だけでなく、演奏される空間の広がりや反射も意識されなくてはいけません。マイク・スピーカー・アンプなどの音響技術の発達とともにポピュラー音楽はドームなどの大空間に合う音色へと変遷してきました。これらの音そのものを扱った学問は、音響学と呼ばれます。



◆ 騒音芸術(ノイズ・ミュージック)
打楽器の音色は、非常にノイズと近い周波数成分を持っており、精確な音の高さを再現することも難しいです。ですが打楽器の演奏は、間違いなく音楽的です。

さらにリズムの要素すらも曖昧にした音色の世界がノイズミュージックには存在します。


◆ リズム
音楽理論ではリズムについての扱いがかなり雑です。

メロディとハーモニーは音楽理論を駆使して感性以上のものを作れるようになりました。しかしリズムについてはまだまだグルーブ、ポケット、フィール、タイム感などのかなり大雑把な言葉が飛び交い、経験と感性でどうにかする領域のままになってしまいました。

そのため以前にもリズムについての理論を組み立てようと、いくつか記事も書いてきました。


さらに微細なリズムの揺れだけでなく、まとめ方もより多様になる可能性が秘められています。

◆ ルーディメンツ
アメリカの音楽教育では、打楽器奏者だけでなくメロディ楽器奏者もマーチングドラムの教則本「All American Drummer; Wilcoxson solo」を練習します。

マーチングドラムでは複雑なリズムフレーズをルーディメンツという細かいリズム的語彙に分解して捉えます。そうすることで身体の動きと、音量やリズムのバランスを身につけていきます。


◆ 変拍子
アラブ音楽インド音楽ではポピュラー音楽ではあまり聞く機会の少ない、変拍子を使った楽曲が多く存在します。西洋音楽的見方をすれば変わったリズムなのですが、キリスト教的な整ったリズムでないため非常に推進力に長けており、実際に聞いてみるとダンサブルなリズムであることが分かります。


◆ ポリリズム
さらにアフリカ音楽などではポリリズムという、異なった拍子を同時に鳴らすという単純な仕組みで複雑なリズムを構成する音楽が広く浸透しています。どの拍子で乗るかを聞き手に委ねることができ、非常に豊かな表情を持った楽曲になっています。


そしてポリリズムはさらにスウィングやシャッフルなどのはねたリズムとしてアメリカのポピュラー音楽に取り入れられました。また変拍子と組み合わせることで独特なタメのある電子音楽にも合ったリズムへと洗練されていきました。




言語としての音楽

音楽を言語とするなら、
音楽理論は文法に過ぎません。


文法を全く分かっていない大人はいませんが、子供に最初に教えるのは文法ではなく会話です。日本の英語教育のように会話より先に文法を学ぶなんてことは言語学習においては邪道ですよね。

まずは真似事から始める遠回りをしてみるのもいいかもしれません。一つの法則を導くより、膨大なデータを収集する方が重要なのは、ビックデータの時代へ突入して世界が痛感しました。そのために今までの記事でも音楽の歴史を多く書いてきました。



膨大な音楽をサブスクで聞くことができ、多様な方法で音楽理論を学ぶことができる今、楽しむということを忘れずに取り組んでいただければ嬉しいです。

よむよむ。

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