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フライパンの「耐久性問題」

 フライパンを買い替えた。
 少し遠いホームセンターまで歩いて、売り場で実際に妻が持って、重さや使いやすさや大きさや深さを確かめて、買った。

 それは、これまで使っていたフライパンが焦げ付き始めて、とても使いにくくなってしまい、妻にとって、買い替えたい、でも、どうしようかな、という時間が少し続いたあとに、出かけたのだけど、そのためらいを生んでいるのは、以前買ってからの「間隔」が気になっているようだった。

鉄製の時代

 かなり昔といっても、たぶん30年くらい前だったら、まだフライパンは鉄製を使う家庭が多かったように思う。料理によって、フライパンの材質を変えるなどということは、一部でしか行われていなかったと思うけれど、多くの家庭には、ほぼ真っ黒に、下手をすれば、いろいろな焦げがこびりついているようなフライパンが台所にあったように記憶している。

 少なくとも、実家では、そんなフライパンを使っていたはずだった。見ていて、油をかなり使い、それでも焦げ付いてしまうことが多そうだったから、料理している時も、フライパンから、こびりついてしまうものをはがす金属音が響いていたと思う。

 料理が出てくるのを、ただ待っていた、ぼんやりした子供だったのだけど、フライパンは黒くて丈夫、というイメージだった。

 その頃は、10年以上使っていた家庭も珍しくなかったと思う。

テフロンの時代

 フライパンのテフロン加工は、すごく大きな変化だった。

 料理をしない人間が語る資格はないかもしれないけれど、焦げ付きがない、というのは画期的だったし、普及したのが、1980年代後半以降という印象があるから、その頃は油をたっぷり使うのは、健康面を考えると、どうなのだろう、というのが主流になってきてもいた。それもあって、油をあまり使わなくてもすむテフロン加工は、あっという間に広がっていったように思う。

 今のフライパンのイメージは、たぶん、そういう加工をされていて、「黒くない」印象が主流になっていると思う。

(テフロン加工という言葉は、一般名称でないのを、恥ずかしながら、初めて知りました)。

フライパンを買い換える時期

 当然だけど、これまでも何度も買い替えていて、新しいフライパンを買ったあと、そのたびに、妻に言われるのが、柔らかいスポンジで洗うことだった。今は、料理は妻が作ってくれて、私は食器洗いをしている。フライパンは、スポンジで洗う前に、水で流して、手などで少しこすったり、場合によっては、洗剤を入れて、しばらく水をつけておくような形にして、こびりついたとしても、何しろ表面に傷をつけないようにしている。

 炒め物を作ってもらったりすると、場合によっては、かなりこびりつくこともある。そして、フライパンを買って、しばらくたってから、どうしても取れない場合は、気をつけながらも、もう少し硬い道具を使って、はがすようにするが、場合によっては、傷つけることもあり、その時は妻にあやまったりもする。

 ただ、時間がたつと、その繰り返しで、だんだんスムーズに炒め物などができなくなってくるようで、そうなると、妻の負担も増え始め、買い替えを考えなくてはいけなくなる。

 冷蔵庫の扉には、この前買った時の「日付けも入っているメモ」もあるから、それを見ると、どうやら2年くらいを目安に買い替えていることになる。

 そして、新しくなったフラインパンで快適そうに料理を作ってくれる妻の姿を見るのは、うれしいし、洗う時も、確かに気持ちがよく、大事にしよう、と思える。

 それでも、時間がたつと、どうしても機能が落ちて、料理に支障が出てくる。

 その繰り返しは、終わらない。

 それで、今回も買い替えたのだけど、冷蔵庫の扉にはった「メモ」を見て、約1年で買い換えることになった、いつもは2年くらいなのに、と妻は微妙に暗い顔をしていたが、毎日、料理をしているのだし、しかたがないのでは、と言うくらいしか私にはできなかった。

フライパンの「耐久性問題」

 鉄製のフライパンだけしかない時代は、それしか使えない。
 重かったり、焦げ付いたりを、油をたくさん使うことで乗り切ってきた頃から比べたら、今は確実に進歩していると思う。

 だけど、その一方で、細かいことを気にしなければ、一生使えたようなフライパンが、買い替えの必要な一種の消耗品のようになってしまった。

 今でも調べたら、いろいろな「加工」方法のフライパンがあるらしく、値段も1000円台から1万円を超えるまでと、幅広い。


【徹底比較】フライパンのおすすめ人気ランキング22選【くっつかない!焦げない!】 https://my-best.com/57


 だから、迷うことになる。

 買う前に、妻と相談をして、長持ちする「ダイヤ」という文字が入った加工法を採用しているフライパンもあって、物質の中で硬度最高ともいわれるのがダイヤだから、気持ちは動くが、その分、値段も高い。

 その上、それだけの値段をかけたからといって、おそらくは一生使える可能性は少ないと思う。もし、そういうフライパンを買うという「賭け」をして、2年くらいで急に使いにくくなることもありえる。そうなった時に、たぶん後悔しそうだ。

 そう考えると、いつものように3000円くらいまでで買って、それでダメになったら、買い換える、という方法に落ち着き、今回もそうやって買った。

 冷蔵庫の扉に、また新しいメモがはられて、そして、次に買い替えたら、メモも変わっていく。

炎の温度

 ガスコンロの炎の温度は、1000度以上らしい。
 冷静に考えると、とんでもない温度で、ここに毎日のようにさらされて、その上で料理が作られ、洗われ、乾かされて、また火にかけられる。

 それで、1年すごせて、しかも、穴があいたりするわけでなく、表面の加工がはがれて、使いにくくなるだけ、という変化なのだから、金属の耐久性は、すごいものだと改めて思う。確か、惑星が生まれた頃に誕生しているような物質だから、もともとそのスケール感が人間のものとは違っていて当たり前だけど、でも、耐久性は、すごい。

 以前のフライパンは金属そのものを使っていたから、その耐久性を存分に生かし切れたけど、使いやすくする加工を加えたことで、耐久性は落ちてしまったが、再び、耐久性をあげていく、という歴史的な時間を、今はたどっているのかもしれない。

 これから先、ずっと新品のような使い心地の、加工されたフライパンができて、それが、今のフライパンくらいの値段で買えるようになる時は来るのだろうか。

 ただ、これは根拠のない邪推に近いけれど、そんな風になったら、今、料理の道具を販売している会社は、困らないだろうか。買い替えが多いほうがありがたいから、もしかしたら、そんな夢のフライパンは、ずっとできないのではないか、と微妙に重い気持ちにもなる。

 これからも、もしかしたら、かなり長い時間、フライパンの「耐久性問題」は続くのかもしれない。




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