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テレビについて㉛Mr.マリックが「超魔術」ではなく、「マジック」の番組をしている驚き。

 NHKのEテレは、本当に幅の広い番組をやっていて、それは、いろいろな見方ができるのだろうけど、知らないことを知ったりできて、ありがたい気持ちになることはある。

 最近、Mr.マリック「マジック(手品)」の番組を始めた。

 いま見ている人には、なんの引っかかりもなく、自然なことだとは思うのだけど、Mr.マリックの華々しい登場時を覚えていると、年月が流れたとはいえ、不思議な感慨を覚えてしまう。

「超魔術」の時代

 Mr.マリックの存在を、誰もが知るようになったのは、1980年代後半だから、もう30年以上も前のことになるのだけど、ゴールデンタイムのテレビ番組に突然、登場した。

 それも「超魔術」というタイトルがつけられて、今では信じられないのだけど、マジックではなく、どちらかといえば「超能力」と思わせるような番組の作り方をしていた。

 何かマジック的な変化が起きる時、たとえばスプーンが曲がるとき、Mr.マリックが「きてます、きてます」と言いながら、スプーンが曲がって切れて落ちると、「ハンドパワーです」と言い切る、といった演出だった。

 あの当時、ものすごくお金をかけてつくられた番組です。今では想像を絶する規模で、セットもたくさん使う、壮大な番組でした。なかなか今は作れないと思いますね。演出も素晴らしかったし。ああいう時代だったからこそ、神がかったものが世に出て、視聴者に「これは何だろう」と思われたのかなと思います。

 今では、あまりにもウブすぎるとは思うのだけど、このテレビ局の演出に視聴者の方が乗っかってしまい、いわゆる「茶の間」では「あれは、マジックなのか?それとも超能力なのか?」という「論争」が起きるくらいだった。

 それくらい、驚きと、どこか怖さを感じさせる登場で、その反響は今から考えたら、異常だった。1970年代で、主にユリ・ゲラーが起こした「超能力ブーム」のことも影響していたのだと思う。

半分は信じて手を合わせて見ている人たちがいて、半分は暴露本を見ながら、疑って見ていて…。
 (4億円を持参し「教祖になってほしい」という人も現れたことが)ありましたね。ちょっとやりすぎたな、と思いましたね(笑)。競馬を当てたり、生活に密着するような超魔術もやっていたんですね。その影響か、札束を風呂敷に包んで持ってきて、「宝くじを当ててくれ」とか言われました。しかも、そういう人が集団でいらっしゃるんですよ。あと、その前に、分厚い手紙もたくさん届きましたね。

 これは、2015年時のインタビューだから、やっと言えるようになったのかもしれないけれど、一時期は、本当に異様な熱気に包まれていたから、こんなことが起こっていたとしても、当時の視聴者としては、それほどの驚きはなかった。

 それだけの強いインパクトだった。

暴露本

 この書籍は復刻版なのだけど、最初に出版されたのは、1990年で、「超魔術シリーズ」が始まった翌年で、その「超魔術」の仕掛けを暴露した内容だった。

 それを読んで、あれは確実にマジックだったと確認もできたのだけど、それだけではく、この本が不思議だったのは、その終盤だった。

 この著者は、マリックのトリックを暴いた後、さらに論を進めていた。
 それは、Mr.マリックは、ある諜報機関から送り込まれた存在だという話だった。そして、そのミッションは、超能力に見えるマジックを行うことによって、そのトリックが暴かれた後に、社会に「やっぱり超能力は存在しなかったんだ」と思わせること。という主張だった。

 このことによって、この書籍は、いわゆる「トンデモ本」として有名になったのだけれど、そんな本を生んでしまうほど、Mr.マリックは、熱狂的なブームだったのだと思う。

タレント

 それでも、当然ながら、ずっとブームが続くわけではない。

 売れっ子になって3年ほどたったとき、ストレスから顔面麻痺になってしまう。
 決まっていた収録をこなしたあとは仕事をセーブ。顔面麻痺がバレづらい、薄暗い会員制のバーでショーを再開させると、そこで新たな出会いを果たす。
「そのバーにテリー伊藤さんが来ていたんです。“最近テレビで見かけないけど、バラエティーに興味ある?”と誘われ、当時若者に人気だったテレ東系の『浅草橋ヤング洋品店』に出演することになりました」

 そのことがあってから、次はタレントとして活躍を長く続けることになった。おそらくは多くの人にとっては、このバラエティーに出ているMr.マリックの印象が強いのだと思う。

マジック

 名前がMr.マリックだから、マジックとトリックの合成で、最初から、「超能力」とは言っていないのだけど、どうして、あんなに視聴者はナイーブだったのだろうとも思う。それに、「超魔術」の番組の演出もかなり怪しい方法で、おそらく今では許されないはずだ。

 だけど、そんなブームがあって、当然のようにブームも去って、違う形で人前に出る仕事を続けて、娘がラッパーにもなった。

 そして、まるで原点に戻るように、マジックの番組を始めた。

 マジックを見た人は、まず驚き、それから笑い出す。だからマジックは最高のコミュニケーションツールだと言うMr.マリックさん。シリーズでは、トリック(仕掛け)に頼らず、身の回りにあるもので誰でも簡単にできるマジックを指南。

 こんな言葉と共に、Mr.マリックが、マジックを語り、指南するようになる未来があるとは、「超魔術」の頃には、本当に予想もできなかった。

 それだけ、時間が経ったのだと思うと、微妙に寂しい気持ちにもなる。

 それでも、「手品」ではなく「マジック」という言葉を選択するのが、Mr.マリックなのかもしれない。




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