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変わる評価。

 スーパーへ行って、アイスの大きなガラスケースの前で、ちょっと立ち止まる。床から2メートルくらいの高さがあって、コンビニなどのケースと比べると、かなり大きいので種類も多い。

 そこには普段見たことがないアイスもあって、そのスーパーのプライベートブランドらしきものもあって、物珍しい気持ちになる。それで、そろそろ暑い季節も去っていったので、アイス自体を買うかどうかも迷っていた。


速い動き

 そうしたら、私とケースの間に、30代くらいの男性が素早く入ってきて、ガラスの扉を開けて、あるアイスの箱をとって、カゴに入れて、去っていった。

 その動きはとても速く、迷いがなく、ちょっと感心するくらいで、だから、その持っていったアイスが気になった。

 ちょっとだけ迷って、だけど、その人の動きにつられて、見たことも、食べたこともないそのアイスを買うことにした。

 それは、妻が、アップルパイが好きなのも理由になった。同時に、アップルパイが好きなだけに、その味に対して厳しいはずだから、ちょっと違うと言われるかも、という微妙な怖さもあった。

アップルパイ

 気温が高い日に、アイスを妻と一緒に食べた。

 私は、ちょっとおそるおそるなところはあったけれど、妻は食べて、笑顔になっていた。

おいしい。

 中のサクサクな感じもりんごで、アイスなんだけど、最高のアップルパイだった」。

 私も、アイスの硬さの具合と、中のアップルパイの部分のバランスがとても良くて、食べていて、適度な抵抗感があって、それがアップルパイの感じを高めていて、実は、いろいろなことがよく考えられていて、だから、このアップルパイアイスになっているのだと思った。

(「ガツン、とアップルパイ』)
https://www.akagi.com/products/gatsun/apple_pie_multi.html

 なにしろ、シンプルに妻がうれしそうなのが、こちらもうれしかった。

 買ってよかった。

 それに、この箱の中には5本入っているので、あと3本ある。

微妙な評価

 それから数日経って、また、アップルパイのアイスを食べることになった。

 この前、あれだけおいしそうに食べてくれたし、だから、今回も大丈夫だと思って、少し油断していたら、妻の表情はちょっと微妙だった。

 どう?

「この前は、暑いときで、もっとアイスも硬い感じで、アップルパイと思えた。

 ----それが、今日は、気温がちょっと低いせいか、この前よりも、アップルパイな感じがしなかった。

 甘さが気になって、なんだかメイプルシロップの癖のようなものを感じて、この前ほどじゃなかった」。

 え、そうなの。じゃあ、また食べる?

だけど、また食べたいとは思う」

 別に、このアイスのメーカーの人でもなく、何の関係もないのに、ちょっとホッとした。

変わる評価

 次にスーパーへ行って、アイスのケースを見たとき、同じアップルパイのアイスがあった。

 もしも、妻が最初の高い評価のままだったら、これから少しずつ気温が下がるとはいっても、なんだか、売り切れそうな感じもあったので、今回も買っていたと思う。

 だけど、2度目に微妙に評価が下がったので、なんとなく気持ちが止められて、買うのはやめた。念のために、他のアイスも見てみたけれど、もっと買ってみたくなるようなものはなかった。

 それから、また数日後、今度は、食後に思いついて、今季最後と思って買った1リットルのバニラアイスと、あと一本だけ残っていたアップルアイスがあったので、それを半分にして、2人分にし、少し細かくして、バニラアイスと混ぜた。

 その味に対しては、ちょっと自信がなかったのだけど、食卓に持っていって、妻にすすめたら、思った以上の高評価だった。

「すごくおいしい。
 こうするのが、一番おいしいかもしれない」。

 ちょっとうれしかった。

 他の、妻の評価が微妙だったアイスも、バニラアイスと混ぜて出そうと秘かに思った。





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