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「デーモン閣下」が示してくれた「コロナ5類移行後」の「常識」。

 2023年の6月下旬のことだけれど、久しぶりに「コロナ関連」のニュースを聞いた気がした。

 それは、ライブでの「マスク着用」に関してのことだった。


マスク着用のお願い

来る06/24(土)、静岡県富士市文化会館 ロゼシアター(中ホール)にて、
吾輩が座長を務める「デーーモン閣下の邦楽維新Collaboration~谷崎が描く『官能と耽美』を詠み謳う~」公演を開催する。
来場予定諸君に吾輩から。
政府や自治体の見解や世の中の流れがどうであれ、「マスクの着用」を要請する。
また、マスクを着用していない人からの「声援」も遠慮願いたい。
これは主催会館からの「禁止義務要請」ではない。
あくまでも座長である吾輩「個・悪魔」からの要請である。
コロナもさることながら、現在麻疹も流行の兆しとなっている。
皆が安心して舞台を鑑賞できることと、声援で盛り上がっていること、
どちらを選ぶのかと言われれば、吾輩は前者を選ぶ。
声援が無くても心が伝わることはこの数年間で大いに学習した。
来場諸君たちの自主性に委ねることになる。
諸君の自己・他己防衛意識に期待したい。
吾輩のここでの言葉を拡散してくれ給へ。

(「デーモン閣下の地獄のWEB ROCK」より)

 この「デーモン閣下」のブログでの呼びかけの中の、「政府や自治体の見解や世の中の流れがどうあれ」という姿勢は、とても勇気づけられるし、真っ当だと思った。

 この文中の「個人」ではなく、「個・悪魔」という表現や、禁止義務要請ではなく、座長からの要請として、自己・他己防衛意識に期待したい、というマスク着用に関する本質的な指摘も含めているところも、とてもバランスが取れているし、まさに「悪魔(人間)ができている」としか思えない内容だった。

 だけど、この呼びかけに対して、さまざまな声が上がったらしい。

これにネット上では「悪魔として正しき判断」「少し残念です」「そこに行くかどうかを決める権利はこちらにある」「早くマスク無しで声出して楽しみたいけどね」「これはもう理屈や根拠や良し悪しじゃなくて、デーモン閣下の人間性からくる判断」「年齢層が高い、室内のライブだと考えると個人的には良い判断」と様々な意見が寄せられていた。

(「スポニチ」より)

 こうした「閣下」の要請に対して、感情的に受け入れられないのなら仕方がないのだけど、今も、コロナ禍が収束していない現時点での状況を考えたら、とても「モデルケース」になりそうな要請のはずだった。

 だから、かなり批判があることは意外でもあり、でも「5類以降」前から、マスク着用に対して、実は根拠のあやふやな「敵意」を持つような人もいるらしいことは、何となく感じていたから、納得感もあった。

「閣下」の反論

 このことに関して、おそらくは外部の人間には想像もできないほどの多くの反応があって、それも「閣下」への批判のようなものが多かったようで、その約10日後には、同じくブログで、このような「閣下の反論」が掲載されている。

文章読解能力が乏しい者、深く広く物事を考察できない者。そもそも知識が足りない者。
そういう連中と議論することは・・・面倒だ。
マスクは「もしも自分が菌(やウイルス)を持っている場合、それを他者に移さない」ことの効果が「自分を防御する」ことより上回るものだ。これは何千回もこの数年間マスメディアで伝えられてきた「医学的に裏付けされた」事実だ。
従って、マスクをしている人は「他者を慮る優れた配慮の持ち主」だと吾輩は認識する。
「皆が安心して舞台を観られる」とは、「自覚症状は無くてもウイルスを持っているかも知れない自分」がそれを拡散しないための他者への配慮。

(「デーモン閣下の地獄のWEB ROCK」より)

 最初に記事として取り上げたのであれば、この「閣下」の補足に関して、もう一度、大きく掲載してもらえたら、最近、忘れがちである『マスクは「もしも自分が菌(やウイルス)を持っている場合、それを他者に移さない」ことの効果が「自分を防御する」ことより上回るものだ。これは何千回もこの数年間マスメディアで伝えられてきた「医学的に裏付けされた」事実』を、改めて、確認できたのに、と思う。

 新型コロナウイルスに感染しても多くの人が無症状や軽症である一方、咳や発熱の症状が現れる前からウイルスを排出し、他の人を感染させる可能性があり、このことが感染予防を難しくしています。発症してからマスクをつけるのではなく、日常的にマスクをつけることが感染予防のために必要とされています。

(「公益社団法人 全日本病院協会」サイトより)

 その後、さまざまな研究があったにせよ、この新型コロナ・ウイルスが、無症状の人でも感染させるという特徴も、もう一度、確認してもいいことのはずだ。

インフルエンザ並み

 2023年の5月8日から、新型コロナウイルスは「5類移行」になった。

 それは、ウイルスの感染状況とはあまり関係なく、人類の側の区分けに過ぎなくて、その後、いたるところで「インフルエンザ並み」と呪文のように言われていたとしても、決定的な治療薬の存在するインフルエンザと、新型コロナウイルスは、同じになったわけではない。

 ただ、それまで行われていた感染者数の全数把握や、死者数の発表が、急になくなったことで、その実質とは関係なく、コロナ禍は終わったような印象が強まったのも間違いない。

 そして、それを後押ししていたのが、W H Oが緊急事態宣言を終了したことだろう。

「大きな希望を持って、新型コロナウイルス感染症(COVID─19)に関する国際的な公衆衛生上の緊急事態の終了を宣言する」と述べた。

(「ロイター」より)

 この宣言は、ちょうど「5類移行」の頃だった。

 だが、この宣言の後の言葉は、意図的なのか、それとも、もう「コロナは終わった」という思いのせいなのか、あまり伝えられていた印象は少ない。

ただ、緊急事態宣言の終了は新型コロナによる世界的な公衆衛生に対する脅威が消え去ったことは意味しないと警告。「新型コロナは世界を変え、私たちをも変えた。これがあるべき姿だ。新型コロナ感染拡大前の状況に戻れば、私たちは教訓を学ばず、未来の世代が失望することになる」と語った。

WHOは新型コロナが緊急事態を意味しないとしても、今後も存在し続けると強調。緊急事態対応責任者のマイク・ライアン氏も「戦いは終わったわけではない。われわれのシステムにはまだ弱点があり、新型コロナのウイルスや他のウイルスによって露呈されるだろう。それを修正する必要がある」と述べた。

(「ロイター」より)

 持病を持っていなくて、高齢ではない人にとっては、とにかく早く終わらせたかったコロナ禍だから、これで「終わったこと」にしたかった、という願望の強さが、社会に広がっていた部分もあると思う。

感染増大

「5類移行」から、1ヶ月経った時点で、その感染拡大を、医療関係者はすでに懸念していた。

 現場で診療にあたる医師らからは、じわじわと感染者が増えつつあり、「第9波」との声も上がる。
これまでは全ての患者情報を集める「全数把握」だったが、厚生労働省は5類に移行した5月8日から、全国約5000の医療機関から報告を受ける「定点把握」に変更した。「移行後は、正確に実態を反映できていない可能性がある。検査も有料になり、症状があっても検査しない人もいる。陽性者を見つけられにくくなり、実態は限りなくグレーの状態だ」

(「東京新聞」より)

「5類移行」によって、明らかに変わったことはあったようだ。

ある女性(58)は高齢の母親(85)と5月中旬から10日間のクルーズ船に乗船。下船直後に2人とも感染した。ツイッターに投稿すると、「私も…」とその船で何人も感染していたことが判明。事実を知りたいと船会社に問い合わせたが「5類なので…感染の全体像を把握する必要は求められていない。インフルエンザと対応を変えるつもりはない」の一点張りだった。女性は「5類になったことで、感染しても自己責任という空気が蔓延している。こんな無責任な企業を大量発生させていいのだろうか」と疑問を投げかける。

(「東京新聞」より)

 そして、医療関係者は、さらに、こうした懸念を示していた。

「5類になったことと、感染者数の増減は関係のない話。条件が整うと、感染者数は増える」と強調するのは、京都大の西浦博教授(感染症疫学)だ。「補助金でコロナ患者専用に確保していたベッドが、5類化で病院からなくなったり、減ったりしている。すでに沖縄ではコロナ対応でベッドが全て埋まり、通常医療の提供が困難な病院が増えてきた。感染拡大が続けば他の地域でも同じ問題が生じ得る」と懸念を示す。
 「医療逼迫を未然に防ぐ具体的な手だてが講じられていない。重症化しやすい人の早期診断・早期治療、予防接種の呼び掛け、感染対策はいずれも不十分だ。流行はレベルの差こそあれ継続する。被害をできるだけ限定するため、流行状況が悪ければ屋内でのマスク着用を推奨し、良ければ日常や余暇を楽しむといったメリハリのある暮らしが求められる」

(「東京新聞」より)

 この時から、1ヶ月ほど経ったが、「重症化しやすい人の早期診断・早期治療、予防接種の呼び掛け、感染対策はいずれも不十分」という状況は、変わっていないように思う。

第9波

 だから、その後も、感染拡大は続いていたとしても、その全体像が見えない状態も継続している。

 日本医師会の釜萢敏常任理事は5日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染が沖縄県など九州地方で拡大している状況に懸念を示し「現状は第9波になっていると判断することが妥当だ」と述べた。厚生労働省は夏に向けて一定の拡大の可能性があるとしている。

 新型コロナの法的位置付けが5月8日に「5類」に移行してから2.3倍となり、6週連続で増加している。

(「共同通信」より)

 つまり、間違いなく、感染は増大しているし、「第9波」は、もう来ていると思った方がいい。

 そして、感染者数は「定点把握」という一般にはわかりにくい方法を採用しているのだけど、感染死者数も、早くても2ヶ月後、というやり方になったのだけど、それが7月7日に発表された。

新型コロナの死者数の動向を迅速に把握するため、厚生労働省は新たな試算方法でおよそ2か月後に死者数をとりまとめ、今後、月に1度、結果を公表することになりました。

(「NHK」より)

 2ヶ月後、というタイムラグが、「迅速に把握」という表現にあたるかどうかは、報道に際しては、十分以上に検討してもおかしくないのだけれど、そういった点には全く触れることなく、淡々と、この発表に関しては伝えられている。

 新型コロナの死者数については感染症法上の分類が「5類」に移行するまでは、国が全国の死者数を集計して毎日公表してきましたが、ことし5月に5類に移行してからは、こうした調査は行われなくなりました。

 そこで、厚生労働省は、自治体に提出された死亡診断書などに記された「最も死亡に影響を与えた病気」や「死亡の原因となった病気の経過に影響を及ぼした病気」が「新型コロナ」だったケースを分析する新たな試算方法を導入しておよそ2か月後にとりまとめることになり、7日に初めてことし4月分の結果を公表しました。

 それによりますと、死亡診断書などで「最も死亡に影響を与えた病気」の欄に新型コロナの記載があった人は550人でした。

 さらにこの人数に「死亡の原因となった病気の経過に影響を及ぼした病気」として新型コロナが記載されていた人を加えると1406人でした。

(「NHK」より)

 最初に疑問なのが、「5類移行」前までは、死亡者数も毎日発表されていたので、いま伝えるべきは、5月8日に「5類移行」してからのことのはずなのに、それがわからないことだ。

「5類以降」から、2ヶ月が過ぎようとしている時に、わざわざ4月分を発表する意味もよく分からないのだけど、どちらにしても、「定点把握」のように、「5類移行前」とは違って、こうして、全体像がつかめないような数字の発表になりそうだし、何しろ、2ヶ月前の状況というデータは、適切な対策をとるには、遅すぎると思う。

報道機関

新型コロナウイルスの感染者が再び増加している。専門家は「第九波が始まった可能性がある」として、夏に向けて感染がさらに拡大する懸念を指摘した。日常を取り戻しつつある中でもウイルスが消滅したわけではない。警戒を緩めず、感染予防を心掛けたい。

(「東京新聞」より)

 2023年7月1日東京新聞の社説には、こうした注意が呼びかけられた。このことについては、異論はない。

 五類移行後、入退院の調整は自治体や保健所でなく医療機関に任されているが、医療を必要とする人が迅速に治療を受けられる態勢を維持することが不可欠だ。感染拡大の状況を注視しつつ必要なら保健所の支援も検討すべきだ。

 重要なことは感染状況をより正確に把握し、迅速に対応することだ。政府は専門家の協力も得て調査手法の改善に努めてほしい。

(「東京新聞」より)

「調査手法の改善に努めてほしい」は、本当にそうだと思えるが、この記事の表現だと、「5類移行前」は、「医療を必要とする人が迅速に治療を受けられる態勢」だったようにも思えてしまうが、入院が必要なのに、自宅療養中に亡くなった人が、700人を超えたのは、昨年の夏のことだった。

 あれから、医療体制が、大幅に改善されたということもほとんど聞いた記憶がないまま、「5類移行」になった。その後、重症化しやすい人間が、コロナ感染した場合に、本当に迅速に適切な治療を受けられるかどうかは、やはり、よく分からないままだ。

 報道機関としては、こうした社説での訴えを、もっと強く説得力を持たせるためには、例えば、現在、重症化しやすいリスクの高い高齢者施設が、どうなっているのか?本当に十分な感染予防対策が取られているのか?そうしたことを、きちんと取材し、報道してほしいのだけど、それは、すでに無理なお願いになってしまっているのだろうか。

 もし、そうならば、報道機関がどうあれ、何しろ自衛をしていくしかない夏になりそうだ。

「5類移行後」の、コロナに関する「常識」の再確認

 自分自身が体も強くなく、持病を持つ家族がいる、という個人的な都合もあり、コロナ感染に関しては、いまも人一倍、関心も恐れもある「一個人」として、今でもコロナ禍は終わっていない(「第9波」が予想される)前提で、確認したい「常識」がある。

 それも「デーモン閣下」にならって、コロナ禍をとにかく終わったものにしたいようにも感じる「政府や自治体の見解や世の中の流れがどうであれ」、これからも、感染拡大を防ぎ、結果として感染して死亡する人を少しでも減らすための「常識」を再確認したい。

 それは、誰でもない「一個人」のお願いでもあって、強制ができるわけでもない。

マスク着用が「減らなかった」と答えた人に、その理由を5択で尋ねました。「感染対策のため」50%▽

(「朝日新聞」より)

 それでも、「個人の判断」と言われながらも、なぜか「脱マスク」の微妙な同調圧力があった時でも、マスクを「感染予防」のために着用する、と答えた人が一定数以上いたから、そうした方々には届くはずだ、と思っている。

 その、「5類移行後」に再確認したい「常識」は主に4項目ある。

「5類移行」になっても、新型コロナウイルスはなくなったわけ
   でも、感染力などが弱くなったわけではない。

「5類移行」後も、できる限り、感染拡大させない努力を続け
   る。

 2に関しては、具体的には、必要に応じたマスク着用をすること。
 もちろん、これから暑くなるので、運動中や、不必要な場面ではマスクをする必要はない。アクリル板も、どれだけ効果があったのか、きちんと検討もしてほしいけれど、とりあえずは無くなっていくのも必然かもしれない。

 それでも、医療施設や、高齢者施設に行くときは、もちろん、満員電車など、人が「密」になる場所では、できる限り、マスク着用をする。(「デーモン閣下」が提示したように、ライブも、そういう場所だと思う)。

 それは、自分が感染するのを防ぐというよりは、自分が知らないうちに感染して(無症状でも感染の可能性がある)、他の人に感染を広げ、結果として、自分が知らないところにいるであろう、重症化しやすい人の命を奪う可能性を、わずかでも下げるためだ。

 持病を持つ人や、高齢者の方々など当事者の努力だけでは、感染拡大をさせないようにするには、限界がある。自分が重症化しない人に、どれだけ感染予防に協力してもらうかが大事なのは、「5類以降」後も、変わらないはずだ。

3、自分が感染しないようにする。

 これまでと同様に、手洗い、うがいを励行する。アルコール除菌をできる限り、する。自分を守る意味でも、感染して、それを広げない意味でも、今も重要だと思う。

4、感染した場合に、誰でもいつでも、素早く適切な診察と治療を受
  けられる「ウイズコロナ」社会を目指す。

 私もそうなのだけど、直接的に、そうした社会を作ることに関与はしにくい。ただ、そうした社会の方が、真っ当ではないか、と支持することはできる。

With コロナってね、「誰もが感染しても仕方ないよね」っていう意味じゃなくて 「感染した人がいつでもどこでも安心して医療を受けられる社会」って意味

誰もが感染するから仕方ないよね。って言えるのは医療現場が潤沢になったときです。病気の理解も 進んでいないし、受け入れ拒否や制限をしなければいけない時点で破綻してます。

インフルエンザのほうが患者数が多かったのに対応できたのは、どこにでも受け皿があったからです。 患者数増える覚悟があるなら、受け皿増やす覚悟もしましょうよ。そういう社会にしましょうよ。 頑張ってるクリニックや病院だけに押し付ける付け焼き刃もやめようよ。 マスク無しでどんちゃん騒ぎの普通の社会に戻したいんでしょ。 治療薬もあるんだから、逆に言えば1億人が感染しても、その受け皿があればウィズコロナですよ。

(「今週のコロナニュース」より)


 一個人として、こうした4つのことは、これからも続けるつもりですが、もしも、賛同してくれるのであれば、別に誰かに向けて主張しなくてもいいし、無理をしなくていいので、できる限り協力してもらえるとありがたい、と考えています。

 こうしたことは、私自身の家族も含んだ、重症化のリスクがある人にとっては、間違いなく、はっきりとは分からなくても、少しでも感染予防につながる行為だと思います。




(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。



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