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親には評判が良かった教師の「嫌な言葉」の記憶。

 生きていくと、基本的には学生時代のことは遠くなる。
 だけど、嫌なことは、その時の空気感と共に覚えている。

 ある教師の言葉は、今思い出しても、やっぱり嫌な印象のままだ。

教室

 中学2年生の時だったと思う。

 その日は、何かの都合で、いつもの担任の教師がいなくて、代わりに教室に来たのは、学年主任のベテランだった。

 PTAとも関わりが深く、母親によると、あの人はいい先生、ということで、親の間では評判がいいらしいことは知っていた。

 1日の終わりまで、それほど問題がないように、無難なように過ぎていったように生徒としては感じていた。

 ただ、そのベテランの教師の表情は、ずっと、やや険しく見えていた。

生活指導

 授業は、6時間目まで終了し、あとはホームルームを残すだけだった。

 なんだか不機嫌に見えていたベテランの教師は、いろいろな注意事項を並べていた。

 それは、教室をきれいにするとか、私語が多いとか、そんな細々とした、いわゆる生活指導に関することだった。

 私は、教室のほぼ一番後ろに座っていて、だけど、不良でもなく、平凡な真面目な生徒だった。普段は、特に反抗的でもなかったのだけど、いつもの担任なら言わないような、そんな一つ一つの言葉に、柄にもなく、少しイライラしていたのかもしれない。

 一通り、何かを言い終わって、その内容は、心に届いてこなくて、少し的外れのようにも思えていたが、最後の言葉だけは、その教師が少し大きい声で言ったせいもあって、なんだかイラッとした。

だから、このクラスは、成績も悪いんだ」。

 気がついたら、言葉が口をついていた。

それと、これとは関係ないじゃん」。

嫌な言葉

 そんなに叫んだつもりはなかったけれど、その教師の顔色は変わっていて、表情は明らかに険しくなって、こちらを真っ直ぐ見ていた。

 名前を呼ばれ、「こっちに来い」と言われた。

 そのころは、まだしつけと称して普通に体罰があるから、殴られると思って、教室の前に歩いていったら、その教師は、「座れ」と言った。

 クラスの他の人たちが見えるように、正面を向いて、その教師の後ろ側に正座をさせられた。

 その上で、また一言、言われた。

「なんのために、サッカーをやってるんだ」。

 嫌な言葉だった。

 それこそ、全く関係がなかった。

 また、関係ないとも言いたかったけれど、さらに何かをされそうだったし、ただ、黙っていた。その後、あやまることもなかった。

 当時は、確かにサッカー部にいたけれど、そして練習は毎日のようにやっていたけれど、あくまでもサッカーが上手くなるためで、普段の行動に関係があるとは思っていなかった。

 確かに、通っていた学校では、中学3年生の先輩も11月過ぎまで現役で、引退がないような例外的な活動をしていたのがサッカー部だった。その理由を、練習がなくなると、ろくなことをしないから、と顧問が言っていたけれど、そこには少し温かいものもあった。

 だけど、そのニュアンスとは違って、この日の、ベテラン教師の言葉は、冷たい感じがした。

 自分がクラスの人気者ではなく、隅っこにいるような人間だったから、みんなが味方をしてくれるわけではなかったけれど、それでも、その時の教室の空気感は、全員が、教師側についているわけではないようだったから、少し緊張感が増して、変な感じになっていたと思う。

教育

 もしかしたら、今でも高校野球に、そんな傾向はあるかもしれないけれど、スポーツは、特に学校の部活動は、精神修養とか、礼儀とかにも関係があるように見られているように思う。

 特に昭和の時代には、そんな風潮が強かったけれど、実際に運動部にいる学生にとっては、そんな意識はほぼなかっただろうし、本当に関係ないだろうし、そんな見られ方は、結果として成長することはあるとしても、スポーツを不自由なものにするはずだ。


 その後、そのベテランの教師は、順調に出世したようだったし、私は、バランスの良い優秀な学生になることもなく、卒業をし、均整の取れた大人にもなれなかった。


 それから、随分と年月が経つけれど、「ブラック校則」のことを知ると、学校という場所は、変わったようで変わっていないことを知らされる。
 それは、社会全体が、まだ変化していない、ということかもしれない。







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