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『文化庁メディア芸術祭 25周年企画展(~2023.2.14)』--------4半世紀の表現の歴史。

 知人に教えてもらって、この企画展を知った。

 25周年企画のはずなのに、それほど大々的に宣伝もされていないし、それだけの歴史を蓄積してきたのに、会期は10日間ほどしかなかった。

 ただ信頼する人に、面白いと紹介されていたので、天気予報を見ながら、行くことを決めた。

天王洲アイル

 りんかい線という、自分にとっては新しい路線だけど、すでに全線開通してからでも20年が経っている。でも、いつまで経っても、目新しい感じも続いているのは、運賃も高め、ということもあるかもしれない。

 妻と二人で出かける。

 大井町で降りて、長いエスカレーターで、地下深くに向かっていく。この長さに慣れないのだろう。そして、乗り換えて、天王洲アイルで降りる。この駅名も、たまプラーザ以来の違和感があった。

 しかも、「洲」と「アイル」の意味はかなり近いはずで、それも不思議な感触になっている。それでも、時間が経って、何度か乗り降りするようになると、少し慣れてくる。

 それに、この天王洲アイル一帯は、寺田倉庫がアートの街にするというビジョンを持っているらしく、ギャラリーや展覧会も増えてきて、そして、明らかに街のあちこちにアートの作品も見かけるようになってきた。

 駅から歩いて、知らないうちに、なんだかおしゃれな店も増えて、その間を縫うように歩いて、会場に着いた。

 運河沿いだから、開放感もあって、ちょっと違う場所に来た、という感覚がある会場だった。

文化庁メディア芸術祭25周年企画展

第1 回開催当時の1990 年代半ばは、コンピュータやインターネットが一般に認知され始めた時期 であり、文化庁メディア芸術祭は最先端のデジタル技術を用いた新しい表現を育む場として誕生 しました。それから25 年、日常生活で親しまれる作品から、のちに社会に実装される技術を使ったものまで、幅広い作品が受賞しています。

 この芸術祭の第1回の頃、メディア、という言葉自体が、まだ新しかったと思う。今になってみれば、「メディア」というのは、「マスメディア」のように、媒体全体を表すものとしての言葉になっているから、「メディア芸術」という言葉自体が、おそらくは意味が曖昧になっているはずだ。

 おそらく、この「芸術祭」の開催当時は、コンピュータやインターネットなど、デジタル技術を使った作品を、「ニューメディア」などと称されていて、それは、「新しさ」とともにある存在だった。

 それが25年が経つと、「メディア芸術」という言葉自体が、これだけ分かりにくい言葉になるとは、当初の関係者も思っていなかったはずだ。


 だけど、こうして、この25年の受賞作を、全部を丁寧に見たわけではないのだけど、それぞれの画面で見ていくしかないから、印象も少しバラバラになってしまうとはいえ、一気に見ると、その「表現の歴史」の厚みのようなものは感じた。

作品の印象

 会場には、いろいろと作品が並んでいて、25年という時間があるものの、正直言って、どれが新しくて、どれが昔のものかが、よく分からない。

 ただ、自分にとっては、知っているものを目にして、「なつかしい」といった反応をしてしまうが、それが「古い」ものとは感じなかった。

 例えば「aibo」。第3回(1999年)の受賞で、すでに製品は作られていないはずだけど、初めて触って、妻と共に、よくできていると思ったし、しばらく和んでしまった。

「攻殻機動隊」は、第6回(2002年)。だけど、短い映像だけど、かっこよく見えて、あの当時のことも少し思い出す。

「ほしのこえ」。第6回。新海誠監督が注目されるようになった、たった一人でつくったアニメ、と言われていたことを、すぐに思い浮かべる。

「この世界の片隅に」は、第21回(2018年)に受賞しているが、この作品は映画館に見に行った。

 他にも「バガボンド」(井上雄彦)は、第4回(2000年)に受賞しているが、それよりも、見ていないのだけど、最近、公開された「スラムダンク」の映画の方が、こうした賞に関係あるのでは、と思ったりもする。


 この展示作品でも、知らない作品の方が多かったが、中でも、新鮮だったのが第14回アート部門優秀賞を受賞した「10番目の感傷(点・線・面)」クワクボリョウタだった。

 薄暗い部屋の中で、おそらくNゲージの列車の前方に、広めに照らすライトがついていて、走るだけなのだけど、その線路の周囲に置いてあるさまざまな日常的な立体が、そのライトの角度や距離で、その部屋のあちこちに影が動いていく。
 その変化が想像以上に面白くて、そして、どの壁に影が映るかで、打ち合わせもしないのに、その部屋にいる鑑賞者達は、一斉に同じような方向に動いたりする。

 とてもシンプルな、あまり最新のテクノロジーとは関係なさそうだけど、新鮮だった。だけど、これは、2010年の受賞だから、もう10年以上前になる。


 この芸術祭の、おそらくは最初の目的であったであろう「新しさ」を感じることは、それほどなく、特に、ここ5年では、第22回(2019年)に「TikTok」が受賞しているのが目を引いたものの、個々の作品には、すごいものもありそうだけど、すでに「メディアとしての新しさ」が生まれにくいのではないか、といったことを思った。

マンガ

 紙の本で読むマンガが、今の時代に、「新しい」ものとはいえなくなっているのだろうけど、でも、受賞作品を集めたコーナーがあって、それは、まるでマンガ喫茶のセレクトショップみたいになっていて、時間が許せば、ずっといたい場所だった。

 それでも、一冊だけでも読んで帰ろうと思って、諸星大二郎の作品を読んだ。

(これ↑は電子書籍ですが、紙の本は、かなりの金額になっているので、会場で読んだ本自体も貴重になっているのかもしれません)。


 そうやって時間を過ごしてから、会場を出た。
 これで無料なので、それも含めてありがたかった。

 ただ、これから、この賞の受賞基準や、文化として、何を支援するのか、といったことは、難しくなりそうだと思った。


 帰りは、この地域のおしゃれな空間で、ラーメンを食べてから、帰った。



(他にも、いろいろなことを書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。





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