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小説

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#短編小説

【短編小説】スティール。

【短編小説】スティール。

生まれた瞬間から名前が自動的に決まり、意味を表す世界。

スティールちゃんは、「ス」が頭、「テ」が上胴体、「ィ」が下胴体、「ー」が両腕、ル」が両足の女の子で、祖母の遺伝から、頬に「 ゛」が付いているのが特徴でした。

スティールとしてただ生まれたその子の意味は「盗む」です。
そのため、周囲からは忌み嫌われた女の子でした。

確かに、その文字の意味合いを強く能力として持ち、彼女はモノや人を盗むのが得

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【短編小説】寂しいブロッコリー。

【短編小説】寂しいブロッコリー。

私はブロッコリーとして生まれ、育てられました。

ですが、今日ほどその人生を後悔したことはありません。

私はてっきり、サラダとか洋風の料理として調理されると思っていたのですが、なんとカレーに入れられることになったからです。

カレーには、玉ねぎ・人参・じゃがいもが当たり前だと思われており、実際カレー煮込みの中には、仲良く3人組で並ぶ玉ねぎさんたちがいます。

適度な大きさに切られた私は、まな板の

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【超短編小説】消しゴムと鉛筆。

【超短編小説】消しゴムと鉛筆。

僕は鉛筆が羨ましい。

だって、君の身体が文字として残るじゃないか。 

例え、短くなって捨てられたとしても、君は世界に残り続けることができる。

でも僕は、鉛筆を消す役割で、消しカスとなった僕は捨てられる。

小さくなって、影も形もなくなって、世界からいなくなる。

それに、僕は最後まで使って貰えること自体少ない。

いつも、途中で買い替えられて、僕は机の隙間や床下に忘れ去られ、年末年始に見つけ

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【短編小説】私の私。

【短編小説】私の私。

私は普段、仕事から家までのルートしか歩かない。休みの日は、家で死ぬように寝た生活を送っていた。

それなのに、どうしてなのか、あとで振り返ってみてもよく分からない。私はふと、今日はいつもと違う道で帰ろうと思った。

最寄駅から家までの道を、ぐるっと大きく回るように私は歩き始めた。高級そうな一軒家、学生が住みそうな集合住宅、客が入っているのかどうか分からないスナック…周囲を見回しながら歩き、普段は気

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【短編小説】愛のクスリ。

【短編小説】愛のクスリ。

とある山奥に、ある少年がいました。

その少年には他に、3人の家族がいました。

しかしながら、青年が物心つく前に両親は病死し、物心ついた頃には、兄は病に伏せ、布団の上で残りの寿命を全うするしかない状態でした。 

更に兄は心も病に蝕まれ、誰かが少しでも兄に近づこうとすると、狂気めいたことを大声で口にし、門前払いする者と化しており、少年は、兄を見守ることしかできませんでした。 

その時の少年の心

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【短編小説】ロボット。

【短編小説】ロボット。

ロボットの僕は、燃料が切れると動けなくなる。 

他のロボットたちもそうだ。

働きすぎると、機器が熱を帯びて、パンクする。

状況によっては働きながら充電することだってあるけど、そうすると、そのロボットの寿命は短くなる。

部品を直しても、充電しても、動けなくなる。

ふふっ、まるで人間のようだろう?

眠眠打破を飲みながら、24時間365日働き続けることには限界がある。

つまり、何事にも、誰

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