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鑑賞ログ「ケイコ、目を澄ませて」

230407
ビジュアルでちょっと気になってたのと、口コミで良さそうと聞いたので鑑賞決定。と思ってたら岸井ゆきのが日本アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞してた。

難聴で耳が不自由な女性プロボクサー・ケイコの日々を2020年から2021年の大きく変わった世界の中で描く。主人公のモデルはいるらしいけれど、そこから物語が紡ぎ出されていて、ちゃんと物語になっている(なんだか偉そうな物言いだな笑)。
下町のボクシングジムに通うケイコ。周りは男性ばかり。仕事はホテルの従業員。仕事場と自宅とボクシングジムの三角形の中で生活している。性格が合う人もいるし、そうでない人もいる。去る人もいるし、寄ってくる人もいる。

なんだろう、ずっと涙腺を刺激され続けるエモさ。心のヒダに何かが挟み込まれて、染み込んでいく感じ。あぁ、私今心揺さぶれてるわ〜と思いながら作品の世界を漂う感じ。きったない帽子を、主人公がクシュっとかぶるシーン、よかったなあ。

1か所だけ特別に映画的な演出がなされるシーンがあるんだけれど、そのシーンが意味するところはなんだったんだろう。
やりたくなる気持ちはわかるけれど、それまで作品の中で紡いできた耳の聞こえないケイコと、そうでない人とのシームレスな関係を分断してしまうような気がした。あ、やっぱり違う世界の人なんだ、というか。なんて言うんだろうな…あのシーンが意味するところは、結局分かり合えない部分がそこにはある、という意識のような気がしたんだよな。それが実際だとしても、それを描くことに意味があるのかがちょっと分からなかったな。
あと、なぜ東京生まれの主人公の母親が試合を見るために上京すると言うのかもちょっと謎だったけれど、子どもも自立してるし、きっと母親には母親の世界があって、それは東京にないと言うことなんだろうな。

岸井ゆきのはもちろんいい。ボクシング女優のイメージは安藤サクラでもなく、しずちゃんでもなく、しばらくは岸井ゆきのだな。ってか、俳優陣みんないいんだけどね。三浦友和がいて、三浦誠己がいたら、なんだか良さそうな映画じゃない?渡辺真紀子もいるんだよ?またさ、主人公の母親が中島ひろ子っていうのがいい。中島ひろ子ってしれっと母親役としての起用のラインナップに上がるようになってる気がするな。あとはお久しぶりの仙道敦子。なぜ急に彼女が登場するのか、不思議だったけれど、最後のモノローグに意味ががあったような気がする。声がいいんだな、仙道敦子。 あと、ケイコの弟を演じた佐藤緋美が自然な感じで良かったな…と思ったら、浅野忠信の息子だったわ。

そして最後。東京って都会な部分だけじゃなく、アジアっぽさに繋がる気がしたエンドロールだった。東京の片隅に、本当にこういう営みが行われている気がする。

ちなみに、ポスターとかのがどことなく「あゝ、荒野」に似ていると思うのは私だけ?いや、どこがと言われると困るけど。ボクシング繋がりでそう思っちゃうだけかな…?

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