鑑賞ログ「アナザーラウンド」

210919@グランドシネマサンシャイン池袋

北欧の至宝、マッツ・ミケルセン主演作は観るべし。

高校の歴史教師のマーティン(マッツ)の授業はつまらなくて、生徒からは不評で保護者からも槍玉に挙げられる始末。看護婦の妻は夜勤続きですれ違いばかりで2人の息子とも会話はほとんどない。そんな中、教師仲間の40歳のお祝いの食事の席で、人生をもっと気楽に生きるべしと仲間に励まされるマーティン。そして、血中アルコール度0.05%を保ち続けるとパフォーマンスが上がって人生がうまくいくというノルウェーで発表された論文を検証しようということになる。もちろんマーティンも酒瓶を仕事用のバッグに忍ばせ、学校のトイレでアルコールを摂取し、リラックスして授業に取り組む。言うまでもなくマーティンの授業は面白くなって、教師としての評判を上げていく。そして、すれ違っていた妻との関係の修復のために家族でキャンプ旅行に行ったりもする。果たして、その先に待ち受けるものは…という話。

まず、この軽いノリに真剣に取り組むおじさん4人がキュート。いや、論文は真面目に書かれたものなんだろうけど。4人がわちゃわちゃしている姿をみていると人の精神年齢は10代で止まるという論に納得してしまう。実は4人はそれぞれ事情を抱えている。それでも仲間の誕生日に食事をしたり、酔っ払ってクダを巻いたり、どこにでもいる仲良しのおじさん。おいおい、教師なのに大丈夫!?と母性をくすぐられてしま瞬間も。でも羨ましい気も少しだけ。50代になってもバカができるような大人になれるのって素敵だよな。

物語は、教え子たちが卒業の時期を迎えるとともに大団円に向かっていく。舞台はデンマークの小さな町で、描かれる物語は時間的には長くない。映像は静謐で、大きな事件が起こるわけではないし(小さな事件はポツポツ起こる)、ヒーローがいるわけでも悪役がいるわけでもない。世界の片隅の誰かの人生の一部を切り取ったある意味小さな作品だけれど、人生の苦みと甘みを混ぜた、美味しい料理を食べた後のような満足感のある作品だった。この満足感は何がもたらしてくれるんだろう。

繋がれる幼い手、未来への不安、仲間の幸せを純粋に願う友情、勇気を出しての告白…小さなところに豊かさを感じる。もしかしたら、常に若者を導き未来へのバトンを渡し続けるという教師が、物語の中心にいるという作品の大枠がそれを感じさせるのかもしれない。

北欧の至宝、マッツ・ミケルセンはやっぱりセクシーでキュート。ギザギザした歯並びも愛おしい。元ダンサーのマッツが披露するダンスも見どころ。スタイルがよいのだ。エンドロールにも<ダンサー:マッツ・ミケルセン>って出てたし。あと、劇中でスミノフがよく飲まれていた。

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