見出し画像

「地域医療連携推進法人」が地域医療の不の解消に介入する

Written by 病院建築note(医療機器出身のゼネコン社員)

いまの日本の医療は満足の追求ではなく、負の解消がキーであると思うので、この題名にしました。

PFMだけではなく、地域医療の不を解消に介入する取り組みに地域医療連携推進法人があります。


■地域医療連携推進法人とは

地域において良質かつ適切な医療を効率的に提供するため、病院等に係る業務の連携を推進するための方針(医療連携推進方針)を定めました。

医療連携推進業務を行う一般社団法人を都道府県知事が認定(医療連携推進認定)する制度です。
「厚生労働省HPより引用」(平成29年4月2日施行)

簡単にいうと地域医療の病院やクリニック、訪問介護サービス、特別老後老人ホームなどが連携して一枚岩となり、地域が抱えている医療の問題を一緒に解決する制度です。

地域全体で医療課題を解決するために医療や介護など分野の異なる医療法人・学校・老人ホームがホールディングスのように一つになるのです。

2021年現在、全国で22の地域医療連携推進法人が設立されています。
https://friendly-field.jp/material/document/2021/202103_18%20renkeisuisin_houjin.pdf

それぞれの地域が抱えている医療問題は様々です。
たとえば過疎化・患者情報の一元化・医療従事者の研修体制と確保などその地域によって異なります。

そのため地域医療連携推進法人を設立する目的はそれぞれ違います。
公立・民間問わず構成されています。下記いくつか例を挙げます。

地域医療連携推進法人の例

【広島県 備北メディカルネットワーク】

対象機関:三次市立三次中央病院、一般社団法人三次地区医師会、庄原市立西成市民病院、庄原赤十字病院

目的:地域全体での効率的な医療サービスの提供の実現、地域の医師や医療スタッフ確保のため、共同研修など若手医師の育成を中心にした事業を推進することを目的とします。

具体的には、医療従事者を確保育成する仕組みづくり、地域包括ケアの推進、共同購買、共同研修などに取り組みます。

【大阪府 弘道会ヘルスネットワーク】

対象機関:社会医療法人弘道会、医療法人つむき内科クリニック、社会福祉法人弘道福祉会

北河内地域の住民が住み慣れた土地で末永く安心で安全な生活を送るために不可欠な医療機関、介護施設の資質と信頼の向上、相互の機能分化、業務連携を推進することを目的とします。

具体的には、脳神経外科領域における切れ目ない連携のため、医療・介護従事者の相互派遣・人事交流を行うほか
医療・介護従事者の育成、医薬品・医療機器の共同購入・共同利用の推進、患者・利用者情報の共有化、患者・利用者の紹介、逆紹介の推進などに取り組みます。

【愛知県 尾三会】

対象機関:学校法人藤田学園(藤田医科大学)、および愛知県内14市町(7医療圏)にまたがる32の医療機関

医療や介護など異なる分野の法人が1つになり、高齢化進展に対応した新たな地域医療の創造に取り組むことを目的とします。

具体的には、機能分化(相生山病院にて病棟転換・病床削減)、医療・介護従業者等の相互派遣、グループ内施設間での、患者情報の共有化
(藤田医科大学病院の電子カルテシステムを参加法人へ拡張検討)

医薬品の一括交渉、給食サービスの共同化検討などに取り組むなどがあります。

各法人の運営方針は地域の課題に合わせて様々

※尾三会には藤田医科大学も参画しています。そのため大学病院の電子カルテを活用した案になっています。

余談ですが、藤田医科大学の宇山一郎教授は医療機器メーカーでは知る人がいないほどの超有名人です。

経歴や愛用している医療機器は自社他社問わず暗記するレベルです。

2006年の王貞治監督の胃がん手術を執刀したことで有名です。藤田医科大学は医療業界でとても知名度が高いです。
https://www.m3.com/clinical/news/673480

■地域医療連絡推進法人のメリット

メリットは大きく2つあります。

①法人内で人材や医療機器などのリソースが共有できる。

医療施設間で相互に人材交流や派遣をすることで、人材を効率的に配置することができ、安定的な医療の提供に繋がります。

例えば、島根県の地域医療連携推進法人の江津メディカルネットワークでは「クロスアポイント制度」という人材交流システム構築に取り組んでいます。

イメージとしては1人の医師がAとB、2つの病院に在籍して診療を行います。法人が事務局として調整を行うことで、地域の深刻な医師不足を解消するための取り組みです。

「クロスアポイント制度」

また医師や看護師などの人材交流だけでなく、医療機器についても共同保有する法人もあるそうです。

稼働率が低い医療機器は、カーシェアのように共有した方が効率が良いでしょう。

①スケールメリットを活かして、価格交渉ができる。

小さな病院が集まって一つの法人になることによって、メーカーとの価格交渉が可能になります。まとめて買い物をすることによって交渉が易くなるのです。

一般的に医薬品や医療機器は購入額が多いほど、値引き率は高くなります。

最近ですと公立病院も収益の悪化から、コスト意識が高くなっているので値下げ交渉があります。

しかし小さな病院ですと、購入する薬品や医療機器の量が少ないので、使用量が多い病院に比べると納入価は高い傾向があります。

理由としては、消費量が多い病院の他社に自社製品を奪回されると一気に大きな売上ダウンするので、メーカーは競合価格を意識した金額を提示します。
(他社が自社のネガティブキャンペーンをしてくる場合もあるので、、)

また大きな病院に製品を導入できれば、口コミなど他の病院への波及効果が大きく売上以上のメリットがあります。

ところが小さな病院に対して、メーカーは価格を下げる理由がないので、中々コストを下げることができません。

小さな病院でも集まって一つの法人になることで、価格交渉はかなりし易くなるのです。

■まとめ

日本は病床数200床以下の中小病院が70%を占めています。また20~99床と100~199床はその半分の約35%ずつです。0~19床はクリニックと呼ばれます。 「2020年厚生労働省 医療医療施設調査」

このように中小病院が多く、高齢化が進む日本において地域医療連携推進法人はなくてはならない制度になると思います。

前回記事にしましたPFM と同じく

※PFMに関する記事 
https://note.com/365days_tensyoku/n/n0cf306d93b46

日本医療において重要な施策の一つだと思います。

最後までお読み頂きありがとうございました。

--------
hospital architecture note
mail:07jp1080@gmail.com
-------

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?