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ビジネス書評

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#書評

『いま、拠って立つべき“日本の精神” 武士道』 (新渡戸稲造, 岬龍一郎)

『いま、拠って立つべき“日本の精神” 武士道』
(新渡戸稲造, 岬龍一郎)

『武士道』は、日本の道徳を欧米人に説明するために、英語で書かれた本だったことを知りました。

新渡戸稲造さんは、キリスト教徒で、嫁さんがアメリカ人。それでいて、武士の心を良く分かり、欧米の文化をしっかり理解した上で、日本人の道徳をしっかりと説明している。日本人を正しく説明した国語力と英語力が素晴らしい。

武士道という明

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書評:『ザ・ラストマン』(川村隆)

日立製作所を危機から救った現みずほ銀行取締役である川村隆さんの本。きっちり固い人で、天才経営者じゃないので多くの人がまねをする対象にしてよい良い人だと思う。

書いてあることはとにかく、「当たり前のこと」ばかりで、「当たり前のことをきちんとやることが大事」と自覚して書かれている。かなりの読書の人らしく、バランスの取れた人格者で尊敬できる。

言っていることは、ポートフォリオ経営そのもの。「いらない

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書評:『物語論』(木村俊介)

木村氏の文章力はすごい。

何がすごいというと、インタビュー先によって、文章にむかつく人がいれば、共感を持てる人もいること。文章の人格が変わる。同じ人が書いているとは思えない。これほど、インタビュー先にあわせ、分かりやすい文章を書ける人は珍しい。しかも、同い年。書き手にこういう人がいることに関心した。

小説家や映画監督などなどの話を聞いて、その論を書いている本。文章がきれいなので、すらすら読める

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書評:『フランクリン自伝』(フランクリン)

この本を読むまで、恥ずかしながらベンジャミン・フランクリンは米国の大統領の一人だと思っていたのですが、実際は違います。様々な本の引用元になっているので、読んでみました。

有名どころだと、福沢諭吉先生こと、福沢諭吉の自伝『福翁自伝』が「この本の構成をパクっている」という話を、その本の解説に慶応義塾の教授が書いています(流石、評論)。本の内容が面白いんですね。

さて、フランクリンといえば、昔の印刷

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書評:『ビジョナリー・カンパニー―時代を超える生存の原則』(ジム・コリンズ)

1995年の本を2015年に読みました。20年も遅れてる・・・。

企業理念と一貫性が大事という話をしっかり書いているジム・コリンズに好感を持ちました。

「『ビジョナリーカンパニーは、方向性は様々だが、その企業の一貫性が必要』という主張は普遍的だ」と思うとともに、「人の人生も同じようなものかもな」と思いました。

ジム・コリンズの新しい本から読んでいるところもあるのですが、著書の前と後ろが矛盾せ

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書評:『ビジョナリー・カンパニー2 ― good to great』(ジム・コリンズ)

これで、『ビジョナリー・カンパニー』の1−4まで読んだので、現時点の全部を読んだと思いますが、その中で一番好きな本です。

私が好きなのは、「第5水準のリーダーシップ」です(過去、ハーバードビジネスレビューで過去読んでいたはずで、印象が残っているけど探せないでいる記事がありました。それは「良い会社を作る要因は属人的なものではない、CEOというスーパーマンの存在じゃないと思って調べていたら、大事なの

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書評:『孫子』(金谷 治 訳注)

私の中で戦略と言えば『孫子』なのですが、岩波文庫のこの『孫子』が一番好きです。著者は、孫武か孫臏か曹操なのか不明のようですが、この本が多くの版がある『孫子』をよく纏めている名著と思います。

冒頭の計編第一の最初「兵とは国の大事なり」から始まる一節が一番好きです。どういうことが書いてあるかというと、

「戦争とは国家の大事である。お金もかかるし、人民の負担も大きいし。だから、迂闊に始めず慎重にやろ

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書評:『日本人が知らない「アジア核戦争」の危機 中国、北朝鮮、ロシア、アメリカはこう動く』(日高 義樹)

前作『中国破れたり』で書いた通り、「通常戦力において、中国は米国に負けた」ので、「それを悟った中国は、核兵器を戦術的に使おうとしていて、危険。安倍政権の日米安保はそれに対応できていない」というのが要旨です。

米ソの時代は、戦略的核兵器、分かりやすく言うと、「核のボタンを押したら地球を破滅すると」いう前提が米ソともにあり、「核兵器は使えない」ものであった。だから、米ソに抑止力が効いていた。

しか

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