D.K

社会や周囲に不安や批判意識はあるが、批判だけに終わらず価値を生み出したい人々に向けて、…

D.K

社会や周囲に不安や批判意識はあるが、批判だけに終わらず価値を生み出したい人々に向けて、詩、小説、評論を執筆。〇属性は★30歳男性★東京在住 〇関心領域は★世界情勢(特に中南米)★ジェンダー★90年代邦ロックなど音楽全般

マガジン

  • 私をより広く深く知っていただくための自己紹介記事

    社会に違和感を持ちながらも自分の言葉で語りたい。あらゆる「好き」を語り、聞きたい。そんな「あなた」に届きますように。 執筆者が書く記事の方向性や、書くことへの思いを綴りました。

最近の記事

「幻想マーケティング」としてのL'Arc-en-Ciel~2024年4月7日さいたまスーパーアリーナLive~

激しくて静かで、ドロドロしてて透き通ってて、大胆で繊細で……いくつもの相反する要素を持つが故に「言葉では何とでも表現できるが、だからこそ、逆にどう表現しても捉えきれないバンド」L’Arc-en-Ciel。 2024年4月7日(日)のさいたまスーパーアリーナ公演(「ARENA TOUR UNDERGROUD」)は、複数回ラルクのライブを観ている私にとっても(今までのライブも素晴らしいのを大前提としても)最高クオリティでした。(以下演出や曲順等、一部「ネタバレ」あり) 晴れて

    • 【小説】「顔の無い身体と心無き触れ合い」2

      夜空が白ける。昼のようだ。目の前に、自分の背よりはるかに高いオレンジがそびえる。それはじわじわ広がり、私の肌から汗を拭き出させる。熱い。真っ黒な柱が炎に囲まれ次々に崩れ落ちる。そして足元の炎から真っ黒な腕が伸びて来て、私の足首を掴んだ。 焦りや恐怖じゃない。どこか白けた気持ちになる。炎の轟音も悲鳴も、消防車の音も、全て静かになる。私は腕を踏みつける。枯れた木のようにあっけなく、腕はボロボロ砕ける。私は火事の家から逃げた。 「もう追ってこないな」 はるか昔に見たのは一緒に

      • 【小説】「顔の無い身体と心無き触れ合い」

        夜の路地。車一台分くらいの道の両サイドには、アパートや古い木造建築が立ち並ぶ。忙し過ぎた仕事の日々が一段落し、背中に鉛のごとく張り付いていた疲れも取れて来た。電柱やアスファルトを照らす月が若干眩しく感じるのは、上を向いて歩くことが増えたからだろうか。 数か月の早朝から深夜に渡る繁忙期。家と会社(と時々コンビニ)を行き来するだけの日々。ほとんどの友人とは疎遠になり、そもそも恋人は作りづらい状況で、実家はもう昔に…… つまりは社会的孤立状態に、仕事があることを除けば近い訳だ。

        • 嫉妬より厄介な自己嫌悪という感情~能力主義から離れ自由に能力と向き合う~

          嫉妬より能力主義に縛られた自己嫌悪の方が厄介だと私は思います。 嫉妬も問題は多々あるでしょうが、まだ分かりやすい。「自分がしたかったがやらなかった/できなかったことを友人や家族がやっていて胸がざわつく」「自分が何も頑張らなかった/頑張れなかった時期に親友は何かを頑張って成し遂げ、凄い好きな関係のはずなのに恨めしくなってしまう時がある」等、何かしら、自分の中にある負の要素や関係性が大きくある時に嫉妬の感情は起きやすい気がします。 しかし、「自分は自分でそれなりの個性と達成の

        「幻想マーケティング」としてのL'Arc-en-Ciel~2024年4月7日さいたまスーパーアリーナLive~

        • 【小説】「顔の無い身体と心無き触れ合い」2

        • 【小説】「顔の無い身体と心無き触れ合い」

        • 嫉妬より厄介な自己嫌悪という感情~能力主義から離れ自由に能力と向き合う~

        マガジン

        • 私をより広く深く知っていただくための自己紹介記事
          2本

        記事

          映画『ほかげ』感想~貧しさの裏にある豊饒さと働くことの意味~

          「貧しさ」というキーワードで塚本晋也監督『ほかげ』は語れるんじゃないか。そう思いました。 敗戦直後の闇市を中心に繰り広げられる、行き場が無い(ように見える)人々が織りなす物語。 映画「ほかげ」公式サイト | 塚本晋也監督作品 趣里 森山未來 出演。 (hokage-movie.com) ここでは(映画サイト等導入で分かる事以外は)ネタバレを避けながら、冒頭に書いた「貧しさ」等複数の側面から、『ほかげ』の感想を書いていきます。(終盤章のみネタバレあり) (1)「貧しさ」

          映画『ほかげ』感想~貧しさの裏にある豊饒さと働くことの意味~

          映画『バビ・ヤール』感想~いつまでも続く「顔」の迫力と権力の軽さ~

          セルゲイ・ロズニツァ監督のドキュメンタリー映画は「顔」をキーワードとして語られることが多いと思います。 二時間以上スターリンの葬式映像を編集し流した『国葬』でも、「偉大なる人物」の死に対し、悲しんだり様々な反応をする人民の顔がこれでもかと映し出されます。 今回紹介する戦争の記録映像を練り上げて制作された『バビ・ヤール』においても、「顔」は重要なキーワードとなります。 戦後約50年間にもわたり隠蔽されていた事件「バビヤール大虐殺」。2日間で3万人以上の被害者を出した悲劇を

          映画『バビ・ヤール』感想~いつまでも続く「顔」の迫力と権力の軽さ~

          「ゴジラー1.0」感想~今、あらゆる顔のゴジラと自由に戦い続けるために~

          「ゴジラはいつどのような形で現れてもおかしくない。だからこそ、日本(場合によっては世界)の人々は命を大切にして生きる練習をしておきましょう」 そんなメッセージを感じた映画でした。自然災害、戦争、未知のウイルス、不況etc……ゴジラを色々なことに当てはめてみることは可能で、戦争で散々傷を負った直後に、未知の怪獣に翻弄される人々の「底無し」状態に胸が苦しいほど共感することで、現在を生きる私達とも繋がりがある物語として観られるのではないでしょうか。 以下素晴らしかった点と課題に

          「ゴジラー1.0」感想~今、あらゆる顔のゴジラと自由に戦い続けるために~

          「模索の跡」は実らずとも無駄にはならない~苦しかった時期を振り返って~

          私は一度、それなりの真剣さで海外移住を検討したことがあります。 社会人三年目の時、歳は近いがかなり神経質で細かく、性格が合わない上司と組むことになってしまい、仕事もなかなか進まず残業も多くなり、気の進まない飲み会に当たる確率も高かったこともあり、ストレスがかなり溜まりました。 とにかくこの状況から抜け出したいと思い、カウンセリングやクリニックに通ったり、発達特性について調べたり、農作業体験に行ったり、就職前提でゲストハウスへ見学に行ったり……土日や休暇を中心に色々と模索し

          「模索の跡」は実らずとも無駄にはならない~苦しかった時期を振り返って~

          政治やデモへ、心に余裕があるから関わるのか、余裕がないから関わるのか

          「社会問題に関わるのも大事ですが、まずは自分自身を癒してからじゃないといけないですよね」 社会問題とセルフケアを同時に語る貴重なコミュニティに、時折身を置くことがありますが、上のような発言と出会うことは少なくありません。 決して上の発言は間違ってはいません。日常の問題で疲れていたら社会問題をニュースやSNSで追う余裕は減りますし、逆に悲惨な出来事の情報に触れたら、更に心が削れてしまうでしょう。 それでも、海外との比較で気になってしまうことはあります。 例えば欧米でも、

          政治やデモへ、心に余裕があるから関わるのか、余裕がないから関わるのか

          強さと弱さが混じり合えないまま自分の中で同居するとき

          人間として、そして動物として、なめらかに生きられたらいいのにな、と思う時があります。なめらかに、ということの説明が難しいので、なめらかでは無い自分を以下に書いてみたいです。 ①(例えば文章力や対話力、行動力等の)人にも誇れそうな能力が複数備わ   っている。 ②調子が良い時は大概のことをスムーズにこなすことができる。 ③しかし些細なこと、自分でもよく分からないきっかけで不安になったり、  調子が悪くなったりする。 ④そうなるとあらゆるパフォーマンスが2~3割減になる。 ⑤し

          強さと弱さが混じり合えないまま自分の中で同居するとき

          つらければつらいだけ能力を抱きしめるしかなかったあなたへ

          人の数だけ、悩み苦しみは尽きないものかもしれません。 人間関係、経済状況、あらゆる失われた物事、悲惨で悲しいニュース、蘇る過去のつらい出来事etc……誰かに話す余裕も持てずに、言葉は胸のドアを叩きながら崩れ、抑鬱感や不安が続く人も多いでしょう。 しかも忙しい人が多い社会で、胸に苦しみを秘めたまま、ありったけの能力を使い、笑顔で手足をひたすら動かし、仕事や日常の課題をクリアしていく人もいるでしょう。 人に頼れなければ、自分を削って、能力で生きるしかなかった。 胸の内にた

          つらければつらいだけ能力を抱きしめるしかなかったあなたへ

          櫻井敦司さんのこと

          そのことを知った時、しばらくは妙にふわふわしたような、不思議な気持ちでした。しかし徐々に胸の穴が広がるような気分になって「もう地上におられないんだな」と実感しました。いまだに完全には気持ちの整理ができていません。 (私を含め)日本だけでなく海外の少なくない人にとっても、彼は「繊細でありながら、強く生きていけることを教えてくれた先生にして同志」であり続け、そして月世界に旅立った今も、そうであり続けています。 (4) Getsusekai - YouTube 私自身の櫻井さ

          櫻井敦司さんのこと

          詩「夜の河川敷」

          雨上がり 車道に 白や赤やオレンジが反射 アーケードの中は途切れない声が充満 モニターには笑顔の男女が立つ 私はポケットに手を突っ込み 青信号を待つ もっとも賑やかで 限りなく寂しい街で 冷たい風だけ頼りに進む 入り組んでいく道 路地 木造の連なり そして 夜へ開かれる景色 雑木林は黒く 静かに流れる川も黒く 果てない端っこに張り付く 集合住宅の明かりと 向こう岸の工場の 煙突の赤い点滅と 青ざめた倉庫だけが 川を縁取っていく 工場から闇をまたがる送電線 鉄骨と赤い点

          詩「夜の河川敷」

          詩「キラキラ回線 真っ暗な川へ還る」

          暗く果て無き川 明かり灯らぬマンション 一室だけまばゆいテンション この星の知ってること全て集めて 超高速回線でキラキラを食べて(A) だけど足ることだけは知れず 窓から広がる闇に怯え 人を救い傷付けを続け(B) 声も出ぬ 底も見えぬ 暗い川よ 電灯をテラテラ 足ることは お前だけが知っていると 夜更けにケラケラ(サビ) 俺もお前も 人肉団子 丸め込まれすり潰され 海まで行こう

          詩「キラキラ回線 真っ暗な川へ還る」

          ライブ「BUCK-TICK TOUR 2023 異空 7/22 東京ガーデンシアター」感想

          ※一部、曲目や演出のネタバレがあります。 (1)ライブ前と後 ・(少し予想はしてましたが)客層の幅広さに驚きました。色々な服装や髪 型の人々がいて、若い人から一人で来たおばあちゃんまで、世代も様々で、海外からのファンも目立っていました。「BUCK-TICKのライブ空間は日本でも有数の多様性空間だ!」と思えることはファンとして嬉しく誇らしいことです。 ・ライブ内容自体が素晴らしかっただけに、運営側対応に残念な点がありました。 ①スマホチケットの写真登録の説明が分かりづらく

          ライブ「BUCK-TICK TOUR 2023 異空 7/22 東京ガーデンシアター」感想

          軽やかな夢が重たい現実を突き破る~BUCK-TICK『異空』感想~

          力が無いからアイディアや奇抜さに逃げるのではない。 有り余った力でアイディアを出し尽くし、限界突破している。 BUCK-TICKはそういうバンドだと、最新アルバム『異空』を聴いて実感した。 美しい浮遊感のあるインストがあり、逃げ場の無い歌詞とヘヴィ目のサウンドがある。 軽快さがある一方、勢いと攻めで押し切る、デジタル混じりのロックがあり、退廃のスローテンポ曲や、珠玉のバラードもある。 歌詞もサウンドと引き立て合い、切なさや悲しみ、現実の重たさや愚かさ、そして現実逃避に踊

          軽やかな夢が重たい現実を突き破る~BUCK-TICK『異空』感想~