サトウエリコ

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『ざらざらをさわる』三好愛を読んで自分の呪いと再会した先に

 「カルメンは高い声が出ないからね」  カルメンというのは私の中学と高校時代のあだ名だ。私は合唱部だった。パートわけでは女声合唱ならメゾ、混声合唱ならアルト。つまり、女性の中音域から下を担当していた。冒頭の言葉は同じ中学から合唱部にいた子に高校二年生の時に言われた。  なぜこの言葉を思い出したのか。三好愛の『ざらざらをさわる』の『呪いの先に』というエッセイに登場する著者の友人が、私のこの友人にそっくりだったからである。見た目はそのエッセイだけではわからないけれど私は「同じ

    • 第5回 ひらく短歌会 開催レポート

      30日に国立市谷保駅前のひらくスペースで「第5回 ひらく短歌会」を開催しました! テーマの作品を二首詠んだ後にリレー形式で短歌を考えていく会です。 まず「新しい」「冬」二つのテーマを詠み、リレーでは魚やハンバーグなど食べ物を連想させる歌がたくさん出て、最後はサロマ湖の短歌に着地となりました。その時々によって抽象的だったり具体的な単語で連なったり、予想できない流れになるのが面白いです。 お菓子も楽しむ会で、今回はなんとレ・アントルメ国立のプリンをいただきました!やわらかく

      • あけましておめでとうございます〜野梅堂はじめました〜

         あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。  新年、お知らせがあります。  8年ほど使っていた「Tamarise」というサークル名(屋号)を「野梅堂」に変えることにしました。野梅堂の由来はもともと「野梅堂書店」という名前を使うつもりだったのですが、画数占いの関係で書店を抜いた経緯があります(「野梅堂書店」は「やばい…どうしよ、」の洒落でした。)。もともとの「Tamarise」という名前は「多摩から世界に日がのぼるように活動したい」という造語でした。

        • 『谷保ZiNE』-どうして国立・谷保に「いる」のかを考えるマガジン。- 【文学フリマ東京37】

           11月11日(土)に開催される「文学フリマ東京37」の【F-40/G-13】で共同制作の『谷保ZiNE』を発行します。 あなたはなぜ、いま、その街に「いる」のでしょうか  「いる」というのは、「住んでいる」「働いている」「遊んでいる」「立ち寄っている」「通っている」、いろいろな「いる」があります。その街に「いる」理由は沢山あります。  『谷保ZiNE』は「どうして国立・谷保に「いる」のかを考えるマガジン。」です。国立市は東京都の西部、多摩地域にあり、日本で4番目に小さ

        『ざらざらをさわる』三好愛を読んで自分の呪いと再会した先に

          2023年10月7日 眩暈がする黄色

          9時に起きる。母と二人でファミマにパンと牛乳を買いに行く。 夕方にガスの点検が来るらしいので、朝ごはん後は玄関とキッチンの片付けをした。午後、眠たくなってうたた寝をして、16時から国立ごはんで市民まつりの作業と打ち合わせがあることを思い出してあわてて起きる。シャワーを浴びて、支度をして、歩いて国立ごはんに向かう。途中でMID FLOWという前から気になっていたカフェのスパイスチャイをテイクアウトしてみる。ジンジャーが強かった。 国立ごはんには5人ほど集まった。ダンボールをカ

          2023年10月7日 眩暈がする黄色

          2023年9月30日 夜にあかりを灯す橙

           自分が日記を書くのに向いていないな、と思うのは「全部書きたい」と思ってしまうからだと思う。全部書きたい、は逆に言えば「何も書けない」ということなんだろうなと思う。スマホで撮る写真だと切り取りたい部分が明確になるけれど、日記となるとあれもこれもと浮かぶ。一つ一つのシーンとして浮かぶそれらを、まとめて日記にすることが苦手なのかもしれない。  でも、今日はじめてお会いしたSさんから日記の書き方、続け方を聞いて少しやる気が出てきた。書き始めるハードルをあげないこと。箇条書きでいい

          2023年9月30日 夜にあかりを灯す橙

          おためしでやってみた

           眠れないのでインスタグラムをぼんやりと眺めていたら、おすすめにPowerPointの小ネタ動画が流れることが増えた。動画を見ていると不思議なもので「自分でもできるんじゃないか?」という気持ちになる。というわけで、タイトルの画像をPowerPointで作ってみた。単純な図形の重なり抽出機能を使っただけだけれど、普段の一色の味気ないタイトルに比べたらなんとなくテンションが上がる気がする。  「おためしでやってみる」というのが重要な気がしている。興味がない本の1ページ目だけ読ん

          おためしでやってみた

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           流れるように文字を書きたいと思った。うんうん唸って捻り出すわたしではなく、素直に溢れる気持ちを書こうと。文体なんて気にせずに、いまここにあることを、ここで感じたことを書きたい。文字という媒体を通してしまうことによって、わたしはフィルターにかけられる。織り目が細かい布に通すと透明な水になれるかもしれないし、穴が開けば砂利や不純物が入り混じる。昨日、創作物を人に読んでもらって、文字を通すことで自分がいびつになる感覚を知った。そこに知らない「わたし」がじっとりと立っていた。暗い人

          夢挫折体験エッセイ集『カタチにできない』文学フリマに出店します

          こんにちは!サトウエリコと申します。 5/21(日)文学フリマ東京36に『Tamarise』として出店します。 スペース番号は【V-27】です! 以下を発表予定です。  夢挫折体験エッセイ集『カタチにできない』  三枚で一組の歌『短歌の断片』  夏がやってくる『ポストカード』 夢挫折体験エッセイ集『カタチにできない』 A5/12P/300円 誰かに憧れて作品を作っては、自分に限界を感じ、作ることを止める。 そんな著者の「夢挫折体験」をエッセイとして集約した本を出し

          夢挫折体験エッセイ集『カタチにできない』文学フリマに出店します

          本で満たされる長い長い夜の怪物 

           国立駅から徒歩で国立本店へ。店番のMARIさんにあたたかいコーヒーを淹れて頂いて、不思議な絵本「の」(Junaida/福音館書店)をめくってみる。めくってもめくっても「の」で繋がっていく世界に驚きながら、繊細で可愛らしい絵にワクワクしてめくり、中盤は緻密さ繊細さに驚きながら、終盤は「どこか遠くへ来てしまったな」と旅先の不安みたいなものがある。最後まで読んで、ほっと一息つく。今度はふと目に入った「帽子作家 Tami's Spirit -こころが動きだすヒント-」(更谷 いづみ

          本で満たされる長い長い夜の怪物 

          文章での自己肯定と大谷翔平

           本を読んだりnoteを見た時に、自分のアウトプットの幼さに絶望する瞬間ってありませんか。私はあります。同じ文章という表現方法なのになんでこんなに違うんだろう……と凹みます。でもよく考えると、相手はプロなんですよね。野球で「大谷翔平と試合して勝てるか」って言われたら「勝てない」って即答できるんですけど、文章になると何故か「なんで同じように書けないんだろう……」と悩んでしまう。それって馬鹿らしいなと思います。  じゃあどうしたら自己表現できるようになるか、を考えた時に、テクニ

          文章での自己肯定と大谷翔平

          小鳥がとび歩く一年に

           一月一日午前一時の空は冷たく澄んでいる。谷保天満宮に参拝をした後に、なんだかんだ言いながらおみくじは引いてしまうもので、今年もそうだった。おみくじの筒をじゃかじゃかと振る。十九番と出る。百円を出して受付の巫女さんに「十九番」と伝えると、白い紙切れが渡される。何が当たったか見えないような渡し方にドキドキする。列から少し離れた屋台の明かりの側で、一緒に来ていた母と「せーの」で開いてみる。二人とも、末吉。  はなされしかごの小鳥のとりどりにたのしみおおき春ののべかな  「籠の

          小鳥がとび歩く一年に

          冬に至る

           冬至。一年のうち、太陽が最も南に寄り、北半球では昼が最も短い日だ。指先爪先が痛いほど冷たい。低気圧に押しつぶされそうになりながら、窓の外の雨音を聞く。冬に至ったのだ。

          散らかった文

           散文のことを意味のない散らかった文章だと思っていたのですが、そうではなくて韻文である俳句や短歌などと比較して表す韻律のない言葉のことを言うんですね。私は文章になりきれない文章を散文と表現していたので、散文に対して失礼なことをしてしまいました。  言葉は学問や研究の上では厳密に定義をしていますが、日常ですと全く異なる意味やニュアンスで使っていることがありますね。辞書で調べられる範囲であればまだいいのですが、出来立ての言葉は載っていません。そもそも流行り言葉やスラングは、意味を

          散らかった文

          散文

           つま先まで冷たくなる師走ですね。一昨日の夜中に来年の五月に東京で開催される文学フリマに申し込みをしました。夢挫折体験エッセイ集「カタチにできない」と短歌集「果ての駅には何もないのに」を発行できたらなと思っています。いわゆる二次創作の同人イベントへのサークル参加は5回ほどしたことがあり、おおよその流れとかは理解していると思いますが、文学フリマは初めてなので楽しみです。  今後のnoteの更新は、エッセイと短歌両方できたらなと思いますが、とりあえずは散文でもいいので日々の記録を

          文章をかく その3 触れて分解、時には壊す

           以前、記事を書く際はタイトルを先に決めていました。タイトルから考える、というのは小学校の作文でまず題名を考えて書き出した癖が残っていたのだと思います。このnoteを始めてからは、文章を先に書き、後でタイトルを決めるようにしています。その方が手がすらすら動くことに気がついたからです。  また、「である」ではなくて「です・ます」にするようにしました。寄り添うような話しているような気持ちになれます。まだ慣れていなくて、書き始めはつい「である」で進めてしまうのですが、途中で気がつい

          文章をかく その3 触れて分解、時には壊す