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「飲食の可能性は店の外に広がっている」- 新拠点チームメンバーINTERVEW② 野村空人[後編]

301新拠点プロジェクトのチームメンバーと、301代表の大谷によるインタビューシリーズです。第二弾は、カクテルをはじめとするドリンクのメニュー開発を行う野村空人さんです。

バーでカクテルを飲むという文化そのものがまだ一般化していない日本に、独自の考え方でカクテルの魅力と可能性を発信していこうとする野村さんに、どのようなビジョンを持って現場とコンサルティングを行き来しているのかを聞きました。
前編はこちら。

ドリンクコンサルにおける「チーム」という可能性

大谷 コンサルティングやディレクションの仕事という視点では、日本はまだドリンクのクリエイションの可能性についての認知度が低いと思っていて、そんな中、ドリンクコンサルの仕事をやってきた手応えはどう感じてる?

野村 フリーになったのが2年前で、「ABV+」というブランドは去年から立ち上げたけど、そこまでまだちゃんとコンサルの実績はつくれてきていないと思っている。店のコンセプトレベルからしっかりと立ち上げに関わっていくというのは、今回の301新拠点プロジェクトがほぼ初めて。

あとは自分のイベントができたらいいなと思ってやってみたりしたけど、そうなると一人でやるのはつらいというのが分かった(笑)自分のブランド力をどこで出すのかっていうことも考えさせられたし、コンサルの仕事をどう伸ばしていくのかを悩んだこともあって、去年SGの現場にも入るようになった。一回現場に戻って、もう一回自分のスキルをブラッシュアップしようと思ったのと、1人ではなくチームでもやってみようと。

大谷 理想と現実のギャップを生んだのは、チームで動くっていう体制がポイントなんじゃないかと。

野村 そうだね。だから今は、俺と一緒に働きたい子たちに、イベントの時に入ってもらったりして、自分の哲学ややり方を間近で見てもらっている。それでイベント後に飲みながら、一緒にディスカッションしたり。そういう子が今2〜3人いて。みんな別々の道を辿っていたりするから、それがチームとして機能し始めたら面白いと思う。

来年にはそういうドリンクのディレクションをするチームをきちんと作りたいと思っていて。イベントのオーガナイズやデザインに関わることまでやっていきたい。チームを作ったら、もっと301とも関わっていけると思うし、自分がディレクションやイベントをやって、そこで学んだことを301の新拠点に持ち帰ってブラッシュアップしたい。

大谷 新拠点はそういう飲食の色々なものの受け皿やハブにできたらと思っているけど、その先に、純粋にめちゃくちゃカジュアルだけどレベルの高いカクテルをバンバン出せるバーもやってみたいな。

そこの現場に立つ人たちは、新拠点と同じようなコンセプトで、現場だけじゃなく個人としてコンサルの仕事もしていて、そこを行ったり来たりしながら、でもバーとしてちゃんとやりながら。それをきちんとメディア露出していって。そうすれば、バーとしての社会認知が高まるから、カクテルいいんじゃない?みたいな空気ができてきて。それで他の店立ち上げる時にカクテルメニュー入れたいんですけど、って話が来てコンサルとして入る。そういうサイクルが作れたらカクテルの社会認知も上げていけそうだよね。

クリエイティビティが働き方の可能性を拡張する

大谷 このプロジェクトを通して、自分の事業だけでは実現できない、チャレンジしたいポイントはある?

野村 今回やってみたいのは、フード部分を見ている後藤さん、コーヒーをやる小田くんとのコラボや、内装で言うとフグレンで一緒だった和貴子と、今までやってきたことをもう一回ブラッシュアップしたい。お互いのセンスを知ってるから、どこまですり合わせることができるかが楽しみ。新拠点ができたら、飲食チーム3人のコラボで作ったものとかを、いろんなところで出していきたい。そういう通常の飲食ではやらないようなコラボレーションとか、ここじゃなきゃできないようなことにチャレンジできたら、この場所の意味があると思う。

大谷 小田くんは、現場にもしっかり入ってくれる予定だよ。

野村 じゃあバーもやってもらおう(笑)

大谷 ここの面白さって、飲食チームでもディレクションとかコンサルティングができる人が成長できる場所にしようとしていること。一杯400円のコーヒーや一杯1000円のカクテルを提供しているすぐ隣で、自分たちのその仕事が数十万とか数百万とかのプロジェクトに変わっていく瞬間を一緒に経験してほしい。それってすごくエキサイティングなことだと思う。

野村 そう思う。ただ単に低賃金で働くんじゃなくて、自分のクリエイティブな可能性で大きなプロジェクトに変わるのはすごく魅力的だし、実際やってみて人が惹きつけられるような場所にしたい。バーテンダーって今少ないと思うし、もし自分のお店をオープンしたら、売り上げ=集客力だからすごく大変だと思う。それなら新拠点みたいな場所でクリエイションして、コネクション作って、いい人がいたら一緒にプロジェクトやって、っていう働き方はいいと思う。やっていくうちに、じゃあ独立してみたらどうですか?って声が掛かるとか、可能性はすごくたくさんある。

大谷 実際そういう働き方を求めてる人たちは、ある程度いると思う?

野村 いるでしょ。いると思うけど、やっぱりまだこれまでのバーテンダーの働き方のイメージが強いと思うんだよね。銀座のバーで何年働いて、独立して、雑居ビルの上の方の階にカウンターどーん、って置いて。最初はお客さんくるけど、何年後はどうなるんだろうっていうことと、ずっと向き合って。自分が実現したい独立はそうじゃない。

飲食の可能性は店の外に広がっている

大谷 実際どういう人だったら新拠点で活躍できると思う?

野村 ある程度基礎はあったほうがいいけど、お酒への興味が大事。むしろシェフとかにやってもらっても面白いかも。俺が考えてることに対して、自分だったらこうしたい、って言ってディスカッションできたほうが楽しいよね。2刀流3刀流あったほうが、そういう可能性が広がる。もしバーテンディングの経験がなければちゃんと教えるし。

ちゃんと目的があって、こういうことがやりたいっていうビジョンを持っていて、それを成し遂げるにはどうしたらいいかを考えられる人であれば、お互いに学び合えるものがあるし、新しいものをクリエイションしていける。1つのものを別の視点で共有して、どうすると面白くなるかをディスカッションする。そういうことができる環境はすごく刺激的だと思う。

大谷 実際に新拠点に飲食スタッフが入ってもらった先に、こんな面白いことも起きるんじゃないか、という妄想はある?

野村 そこをベースにして自由に動けるような働き方ができる仲間が増えれば、いろんな人が集まってきてハブみたいになるから、そのコミュニティを上手く使っていける。ゲストシェフ、ゲストバリスタ、みたいな形で外の人ともコラボしてコミュニティを広げていけたら面白いと思う。

大谷 そこで生まれたコミュニティで実際にお店つくっちゃうとかね!

野村 期間限定、3ヶ月だけとか。

大谷  TRENCHも前にパリでやってたよね。あとnomaが店閉めてた時期に、コペンハーゲンに残ったスタッフで「Under the Bridge」っていうPOPUPレストランをやっていたんだけど、本当に「橋の下」を会場にしているから、めちゃくちゃカジュアルなんだけど、ちゃんとコンセプトがあって作り込まれていてすごくかっこよかった。

野村 イベントとかフェスとかにレストランをドンッて置いちゃうとかね。

大谷 ちゃんとブランド発信して色んな人とつながれれば、できそう!

野村 その場やコンセプトに合わせてアレンジしながらも、きちんとブランドとして成立するようなものができたらいいよね。例えばフジロックだったらそのコンセプトに合わせてつくるとか。

大谷 あとは、発信側だけじゃなくて、受け取る側も食に対する見方のレベルが上がってくれば、もっと広がりがつくれるんじゃないかっていうこともよく思う。

野村 作り込んだものを、ファーマーズマーケットで売ることでプレゼンテーションするとかね。チームが店の外側に飛び出していく。その時に現場のチームもしっかり作っておけば、もし俺らがいなくてもしっかり回せるし。「TWILLO」(屋台式バー)の進化版とか。見た目おでん屋なのに入ったらちゃんとしたレストランじゃん!とかも面白そう(笑)

野村 空人 Soran Nomura
21歳で単身渡英、7年間ロンドンのバーでバーテンダーとしてのキャリアを積んだ後、帰国。「Fuglen Tokyo」にてバーマネージャーとして活躍しながら、数々の賞を受賞。バーテンダーとしての新しい働き方を示すべく独立し、ドリンクのコンサルティングを手掛ける「ABV+」を立ち上げる。現在は、Finlandの「Kyrö distillery company」のJapan ambassadorの活動と並行して、「The SG Club」にてフリーランスのバーテンダーとして店に立ちながらも、カクテルやドリンクを起点として様々なプロジェクトのコンサルティングやディレクションを手掛けている。
301は、新拠点立ち上げに向けて飲食チームとして参画してもらえる仲間を募集しています。インタビューを読んでこのプロジェクトに興味を持っていただけた方は、HPのフォームから応募いただくか、301メンバーや飲食チームメンバーへ直接ご連絡ください。

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