ながさかりえ

たんたん と。 私がそこに感じとったそのままを。 言葉にするにはあまりにも抽象的である…

ながさかりえ

たんたん と。 私がそこに感じとったそのままを。 言葉にするにはあまりにも抽象的であるが故に、あえて見過ごしていた感覚。 けれど伝えたかった本当の部分。

最近の記事

樹の音色の人

空気を震わす弦の音 幾重にも同心円を拡げながら じっくりと、じっくりと行き渡る 通奏低音を奏でる コントラバスの音色 深く温かい色 細心に弓を当て たっぷりと響かせる 聴衆は響きに身を任せ ひとときの夢を見る 薄暗い森の中に分け入ると 落ち葉の積もった湿った土の匂い 樹齢百年を超える木 見上げると濃く折り重なって茂る葉が 風に撫でられ 大きくうねりざわめく 時を閉じ込めた部屋 色褪せた写真 子どものおもちゃ 静寂の中 時計の針は 一定のリズムで時を刻む 変わ

    • 風と雷の人

      雷鳴が轟き 雷光が走る 鼓膜をつん裂き 天がひび割れる ピリピリと大気を震わせ 空を駆ける 全てを放出し やがて霧散する 中心から渦巻く風が 色とりどりの幻想を生み 野に放つ 花弁が舞うように 透き通った色に染めてゆく 綾錦に染められた流れが ゆっくりと模様を形作り 辺り一面は 桃源の世界を映しだす 無垢の力は 何物も染めること能わず 時に鋭く 時に丸く 自在に形を変え その姿を潜める そして共振し 目覚めさせる 破壊と創造とをもって

      • 光彩とバイブレーションの人

        窓から差し込む陽光を受け キラキラと光を弾く 繊細に枝が伸び きゃらきゃらと嬉しげに実の生る ガラス細工の木 実はチリチリと鳴り 光彩を振るわせる 根元にはくっきりと明るい影絵を映し出し 暖かな、しかしどこか哀しげな、 愛しさの物語を生む 月夜に浮かび上がる 怪しげな影は 淡く月光の蝶を纏い 憂いを湛えた瞳は 白く満ちた月を見上げて 時を夢想する 透明な夢は とろりと黒い闇の中に 融けて混じり合う 陰陽の微細な振動が 岩盤を粉々に打ち砕く 岩はやがて砂となり

        • *制作における思いと願い*

          生身の人間の印象は それぞれが例外無く 実に強烈で それでいて一言で言い表せないほどに 数多の色を持つ しかし今見えているのは その人の一部分かも知れない それでも出来うる限りの言葉をもって その人を写し撮っていきたい 記事制作時のあれやこれやを綴ったり綴らなかったりしています。

        樹の音色の人

          古き黄金の人

          切り立つ山 褐色の山肌 巨大な岩 石積みの神殿に昇る太陽 古代文明の黄金の仮面 時は清濁合わせ飲み 全てを艶やかな蜜に変える 天に祈る人々 天に捧げる音楽 多くの人々の営み 祈りの音楽は全身に轟き 論理、理屈、感情さえも霧散させる 原初の生命の圧倒的な力 何世代も使われ続けている 大理石の台の上で 何度も何度も練る 繊細に練られ滑らかになった チョコレート その艶 その香り その舌触り 濃く 深く 濃密な質量は時間をかけて 微細な振動は波紋を描き 墨を

          古き黄金の人

          銀の粒子の人

          見渡す限りの広い野原に咲く 一輪の白く可憐な花 背の高くなった葦を風が撫でてゆく 大きく波打ち一抹の寂寥感を漂わせる 旅人は大地を踏み締めて一人立つ オレンジ色の太陽が辺りを包む 淡く光る銀糸は 柔らかく螺旋を描いて広がり 漆黒の闇に棚引く 絹は密に織り込まれ 繊細で滑らかな光沢を 甘く湛えている 清涼な刃が白く輝き 鮮やかな赤の花弁を纏い その身を儚げに震わせる 銀の龍が白銀の粒を放ち 天を目掛け上昇する 混沌の闇を伴って

          銀の粒子の人

          青い氷の人

          大海に浮かぶ、巨大な青い氷 薄藍の玻璃は深淵を覗かせる 冴え冴えとした空の下 氷は眩く陽の光を弾く 冷たくそして温かい 塩辛くそれでいて甘い 数多をその身に押し留め それらは混在し、 其々が氷の壁によって交わることなく独立せしむる 氷の上にもまた 息遣いが数多く聞こえ 在る物を在るが儘に受け容れる その静かな胆力 大音響を轟かせ自らを破壊し またジワジワと形成する たとい流れに溶けて水に戻るも 形を変えてなお 冷たく温かい 風に乗って 涼やかな音色が届く

          深く潜る人

          深く切り立った海溝の巨大な岩肌を見遣り 更に奥を目指し一直線に 一直線に ただ深く 深く潜る 光の届かない世界 音の無い世界 拠り所なくただ深く 柔らかな暗闇の中に沈んでゆく ざわめきは気泡となって 暗く青い水の中 白く眩い光を目指し 上へ上へと昇ってゆく 地上はどこか頼りなく見え 深く潜るほどに 朧げな表情は気色を変える やがて蓄えられたマグマは 一直線に天を貫く それは花火の様に儚く散り 辺りを青味がかったセピア色に染める 微かな光の奥に 様々な色に輝く 精

          夜空の星の人

          夜空を見上げると 冬の冴え冴えした空気に映える 真珠のような白く輝く星 吸い込まれそうな濃紺の闇に 散りばめられた星達の中で 一際光り輝いている 孤高の星 手を伸ばしても届くことの無いのに すぐ隣に寄り添っているかの様で 近くて遠い星 全ての物が 夜空の闇に溶けて消える 不可侵の領域 鍵のかかった鋼の小箱 消して破られることはない 堅牢なビスが 秘巻を警護する 万華鏡の鏡の間 定まらず定まれず 崩れては構築し 一刻も同じ所に留まらず 同じ形を見せない 異次元へ

          夜空の星の人

          澄んだ空気と渓流の人

          眩しい日差しを遮る木々に囲まれ 繁吹きを上げながら下る渓流の如く 岩の間を流れる澄んだ水 冷んやりとした清涼な空気の中に 鳥や獣の鳴く声が木霊する 折り重なった葉の隙間から溢れる光が 柔らかく辺りを映し出す 青く苔生した岩の佇まいは 悠久の時を物語る 岩は水を弾き 水は岩を穿つ 押し流されてゆく石は 磨かれ続け やがて艶やかな玉となる 地層の奥深くには 太古より果てしない時を経て固められた 混じり気の無いダイヤモンドが眠る 地表に顔を出すことなく 地中深くでその

          澄んだ空気と渓流の人

          笛の音の人

          どこかしら飄々と。 時折柔らかく、時折爽やかに。 遠くから風に乗って聞こえてくる澄んだ笛の音。 澱みを洗い流してゆく。 霞みがかった山の向こう。 奥深くに甘く乳白色したブラックオパールの光を見る。 その光は常に微笑みかけている。 爽やかな影を背負ったまま。 濃厚な蜂蜜がスプーンを伝ってゆったりと流れ落ちる。 なめらかで上質のシルクのようにふんわりと軽く、 清濁からめとってゆく。 規則的にしかし自由に模様を織りなす石畳。 時を経て、尖った角は丸く削られ、 鋭さを残しつつ

          紅水晶の光の王

          紅水晶を思わせる柔らかい光と 凛とした硬質感を持つその人は、 冬の晴れた日の朝、 夜の間に降り積もった雪が朝日を浴びてキラキラと輝くのに似ている。 時折風に巻き上げられて空気中に漂う氷の粒が 陽の光を浴びてキラキラ煌く。 パリパリと薄氷を踏んで歩く。 ただこの一瞬の為に。 色とりどりのビー玉があちらこちらにコロコロと転がっていて、 プリズムの光のように あたり一面を鮮やかに染める。 一方硬質な王はその人自身を玉座に据える。 石造りの重厚な城の荘厳な広間に静かに坐す。

          紅水晶の光の王

          森の奥で舞う人

          その人は 晴れた朝の深緑の葉の上に光る朝露のように 無邪気に踊る 濃い緑が繁る森の奥で ひっそり甘露な水を湛えた青く澄んだ湖 木々の映るその湖面を 波紋を残して舞うように あたり一面のひんやりした静寂さを支配している あたかも幻想的な風景に心は囚われる はらりと落ちた葉がしばらく湖面に浮かんでいたかと思うと スッと水底に消えてゆく 根底に流れるのは自然の理(ことわり) 爽やかに吹き抜ける風が 色とりどりに染められた天然の麻織物を ふんわりそしてシャリっと さながら羽

          森の奥で舞う人

          南の海の人

          青い海と白い砂浜が似合う人がいる。 そう伝えると、 海は自分を形成する一部だと言った。 その人は、南の太陽に似た輝きを放つ 地平線の向こうの朝日の黄味がかったオレンジ色。 星の出ない夜の闇に響く、浜に打ち寄せる波の様でもあり、 海岸の岩に打ち付ける波でもある。 そして時折、都会のコンクリートを叩くような金属音がする。 それが波の音と相まって、不思議な音楽を作り出している。 砂浜を踏みしめる音、打ち寄せる波の音、そこに異質な金属音。 それらが作り出すハーモニーには、未だ終わ