樹の音色の人
空気を震わす弦の音
幾重にも同心円を拡げながら
じっくりと、じっくりと行き渡る
通奏低音を奏でる
コントラバスの音色
深く温かい色
細心に弓を当て
たっぷりと響かせる
聴衆は響きに身を任せ
ひとときの夢を見る
薄暗い森の中に分け入ると
落ち葉の積もった湿った土の匂い
樹齢百年を超える木
見上げると濃く折り重なって茂る葉が
風に撫でられ
大きくうねりざわめく
時を閉じ込めた部屋
色褪せた写真
子どものおもちゃ
静寂の中
時計の針は
一定のリズムで時を刻む
変わらずに在り続ける
解き放たれる
その瞬間まで
サポートありがとうございます!! 綴れる幸せ。