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ドラマ Twenty-Four (24)のシナリオの作り方を分析する【何が面白いのか?】

⚠注意!
本記事はアメリカのドラマ Twenty-Fourの内容のネタバレが含まれます。未視聴の方は記事の閲覧をお控えください。

私はアメリカの大ヒットドラマTwenty-Four(以下、24)の大ファンで、何度見返しただろうか。

数ある洋ドラの中からシナリオの素晴らしさ・面白さで考えると、私の中では

1位 24
2位 ゲーム・オブ・スローンズ(GOT)
3位 プリズン・ブレイク
・・・となる。

誰もが聴いたことがある、もしくは見たことがある『ありきたり』なタイトルになってしまったが、面白いものは面白いのだから仕方ない。

24とGOT、プリズン・ブレイクが面白いのは、『どんでん返し』『全く予期しない展開』が起こるからである。
とくに24はシーズン8+リブ・アナザー・デイまで全てのシーズンでそれを決められた話数・時間でやっているのだから、もはや芸術的としか言いようがない。


日本で見られている洋ドラでウォーキング・デッドがある。これは名作ではない。

最初こそテンポも良く予想外の展開もあり面白かったが、シーズン5、6くらいからダラダラと引き伸ばしをしていて物語のテンポもどんどん悪くなっていた。

また、無駄に登場人物が増え、そのどうでもいい登場人物のダラダラ会話シーンばかりになり、あげくのはてに途中で主人公が物語から退場してしまう。

我慢してフィナーレまで見たが、正直苦痛だった。まぁだからこそアメリカでも視聴率が下がっていたのだろうが。


さぁ、ここからが本題だ。
ドラマ24をシーンごとに分解し、どのような手法が使われているのかを分析していく。

私も一応Kindle作家で、漫画なども出している。自分の作品の今後のために、この分析を役立てていこうと思い、メモ代わりに記事を執筆することにした。


① 味方内の裏切り者(スパイ)について


シーズン1〜8,リブ・アナザー・デイ全てを通して必ず裏切り者要素がある。

どのシーズンも、CTU内部かホワイトハウスを中心に展開されていくので、そのどちらか、もしくは両方にスパイがいるのである。

やはりこういう要素は古典的で単純ながらめちゃくちゃ面白い。
視聴者は
「えー!こいつ裏切ってたのか!」
・・・とワクワクする。

うる覚えだが・・・
シーズン1 → ニーナ
シーズン3 → ガイル&ジャック&トニー(二重スパイ作戦)
シーズン4 → マリアン、カミングス
シーズン5 → カミングス、ローガン大統領、ヘンダーソン
シーズン6 → ジャックの父親
シーズン7 → トニー
シーズン8 → デイナ、ハッサン大統領の側近や弟、ロシア政権全体
リブ・アナザー・デイ → ナバロ

まぁ、もっといたとは思うが、主要人物はこれくらいだろう。

ただ、24は毎シーズン、1人〜2人のスパイがいるので、だんだん視聴者も、
「どうせ誰か裏切ってるんだろ!」と予想をしてくる。

しかしその予想を見越したうえで、その裏をかいてくるのが天才的なシナリオと思える要因なのである。

シーズン1でニーナ・マイヤーズがテロリストの仲間だと判明するのはシーズンの23話くらいだったと思う。もうそれまで、裏切り者は出尽くして、あとはジャックが最終的にテロリストを倒す展開だ・・・と視聴者が思い始めたころに裏切るのである。
「まさか・・・・・・・」
・・・と、これには度肝を抜かれた。

たとえばシーズン3は、最初、ガイル・オルテガをCTU内部にいる裏切り者であると視聴者に思わせていた。
ただ、そのガイルの裏切りが発覚し、彼が捉えられ拷問を受けたところで急に、トニーとジャックがガイルとともに3人で極秘潜入作戦をしていた事があきらかになる。ガイルは裏切っているようで、裏切っていなかったのである。

シーズン5にはいつもどおりスパイが出てくる。もう視聴者もいいかげん、スパイがいる事は予想しつくりしているが、終盤、まさか大統領本人が裏切っていたとは思わなかっただろう。

シーズン6では最初、ジャックの父であるフィリップ・バウアーが裏にいると思わせた。だが、一度はフィリップは敵ではなく、ジャックの弟グラハムが仕組んだことだと視聴者に思わせる。
しかしやっぱりフィリップが黒幕であり、一回ストーリーから退場した後10話くらい出てこなくなるが、最後の最後でやっぱり最終的な黒幕として登場してくる。

シーズン7は死んだはずのトニーが生きていてテロリストになっていたという事でまず最初に驚き、その後で実はそれは潜入任務だった。しかし終盤、それもまたトニーの最終的な目的の手の内にすぎなかった事が明らかになり・・・と、味方が敵になり、敵が味方に戻り、また敵になる・・・・と。ものすごい展開で飽きさせない。

シーズン8ではデイナは当初、テロと全く関係ない身内の揉め事に手を焼いている。彼女が過去に犯した犯罪にスポットが当てられ、元恋人(?)との関係性や犯罪を暴こうとする人物とのやり取りが何度も続いてく。視聴者は、このシーズンも裏切り者がいるのは間違いないと予想しているが、それがデイナではない・・・と思わせるが、実はデイナはメインの話であるテロリストの一味だった。

・・・と、
毎回スパイ要素を入れつつも、
「また同じか」
・・・と、視聴者を飽きさせないように、二転三転、展開を一捻りも二捻りもしてくる。
これは先にあげたGOTでもプリズン・ブレイクでもない。24のシナリオが超一流であり、24が日本でも知名度が高くなっている面白さの一番の要因になっていると私は思う。


② CTUロサンゼルス支部長や、CTU本部等から派遣されてくる人間が、絶対嫌味なやつ

24を語る上でかかせないのが、ジャックバウアーの裏でジャックのサポートをするCTUスタッフ達の活躍である。

CTUは架空の政府機関であり、実際には存在しない。その架空の機関のロス支部ばかりにスポットがあたってしまうというのも面白い。

主人公ジャック・バウアーが属するCTUロスの支部長は最初、イヤミで陰険なやつなのである。(笑)

CTUの支部長はジャックや味方と和解したと思いきや、毎回、シーズンの途中に何らかの理由で交代してしまい、新しく必ず本部から嫌味なやつが派遣されてくる。それも意図的にシナリオに取り入れているとかしか思えない。

CTUの本部自体はシーズンを通して一度たりとも出てこないのだが、CTUの本部からロス支部にはよく上級スタッフが派遣されてくる。その派遣されてくるスタッフも毎回、イヤミで陰険なことこの上でなことこの上ない(笑)。

ライアン・シャペル、エリン・ドリスコル、リン・マクギル、マイク・ドイル・・・等である。

もともとシーズン2〜3でロス支部のスタッフであったミシェル・デスラーも、シーズン4で本部から派遣されてきた時は一時的にその立ち位置になっていた。
また、一番長くロス支部長を勤めたビル・ブキャナンはファンから親しまれるキャストだが、最初はカリフォルニア支部から来たトニーの恋敵として少し嫌味な存在であった。

そして後にブキャナンの奥さんとなるカレン・ヘイズも、国土安全保障省から派遣されてきた時には超嫌味だった。

このように、CTUロス支部のメインスタッフ達にとっても、テロリストとは別に『敵』が作られ、個人個人が戦いを展開していくのが面白い。

CTU内部だけでなく、ホワイトハウス内にも大統領の足をひっぱる人物・・・とくに副大統領の存在がある。

ただ、24がすごいのは、この嫌味なやつらを、単純に人間のクズとして描かないことだ。

日本でも半沢直樹というドラマで、部下が嫌味な上層部にやり返しスカッとする展開が人々の共感をうち、大ヒットした。歴代視聴率も民放ドラマでは2位なのである。

しかし24は嫌味なやつらを最後まで嫌味なやつとして描かない。彼ら(彼女ら)にも彼らなりの信念があり、仕事の裏には家族もいて・・・という描写をストーリーに組み入れている。

そして、CTUロス支部のスタッフと作戦を通じて最終的に和解・・・そして絆を深め、お互いがお互いを認め合う展開に持っていく。

視聴者も最初は
「こいつ、嫌いだなぁ」
と思っていたのが、
「なんだ、良いやつじゃん」
・・・と思ってくるように脚本が作られている。

こういうものは先ほどの裏切り者の要素とは異なり、毎シーズン同じような展開が繰り返されても視聴者に感動を与える。



③ 主人公の絶対的な魅力と弱点


リブ・アナザー・デイを含め全シーズンの全話に登場している。24はジャック・バウアーの物語であり、その活躍が見どころの一つである。

ジャックの次の登場回数が多いのはクロエであり彼女も人気が高いが、やはりジャックがいるといないのでは段違いだ。ジャックが写っているシーンで退屈なシーンは何一つない。


ジャックが一番人気である理由は単純に主人公だということもあるが、ジャックにしかない絶対的な魅力と弱点があるからだと思っている。

魅力は私がいうまでもないが、並外れた身体能力、常に完璧な判断・・・現場捜査官として最強の存在であることである。

全シーズン、全話を通して、
「結果的にジャックの行動が間違っていた!」
・・・ということはシナリオ的に何一つない。だからこそ視聴者も、そんな主人公に絶対的な安心感を覚える。

追い詰めたテロリストに逃げられたり、あと一歩のところでテロが起こってしまったりということもあるが、それはジャック一人の責任ではない。逆にジャックがいなければ、もっと多くのテロが起きていたのである。


ただ、通常、物語を作る上で主人公に何一つ欠点がないことは弊害にもなりうる。

ドラゴンボールでいえば、悟空だって戦いで負けたりして、その後修行をして強くなり、負けた相手にリベンジするという展開が多い。
主人公が失敗し、それを乗り越え成長していく過程も、物語の魅力なのである。

だが、24のジャックは基本的にシーズン1から完璧で最強である。リブ・アナザー・デイまで15年以上年をとっているのに、肉体的にも精神的にも一向に衰えていく描写もない。

まぁ、そもそも24はドラゴンボールとかいわゆるジャンプアニメにある成長要素というものは期待されていないし、そのようにシナリオを作っていないというのは誰にでもわかる。

本記事で書いてきた別の要素が面白いのと、それらの要素がジャックの完璧なヒーロー像にマッチしているからである。


では、全シーズンを通して、ジャックの中身は何も変わっていないのか・・・?というと、決してそうではない。

テロリストとの戦いや判断については、ジャックは一貫して信念を貫き通しているが、家族や恋人、身内との関係性については常にジャック自身が常に試行錯誤している。

ジャックの愛した女性、妻のテリー、ルネ、オードリーは皆、最終的にテロリストに殺されてしまう。

ジャックはそのたび、
「自分が愛した女性はなぜ殺されるんだ;;」
・・・と決して言葉にまでしないが、表情でそれを物語っている。そして、視聴者もその気持ちに共感する。

実際、恋人じゃなくても、ジャックの身の回りは次々と命を落としていく。シーズン6では、ずっとCTUの仲間であり続けたカーティス・マニングをジャック自身が任務のためにやむなく射殺している。

カーティスは裏切ったわけでもなく、ただ彼の信念を貫こうと思っただけであるが、ジャックの作戦の弊害になってしまった。

テロの解決という視点でみると、常に完璧な判断で、24の物語的には結果的にジャックの判断は何一つ間違いではなかったと思う一方で、ジャック自身は「これで良かったのか」・・・と、苦しんでいたのである。

実際、ジャックは作中で何度も味方のCTUや政府機関に拘束命令を出されてしまう。上の命令に背いたり、法律を犯しまくっているのは確かなのである。

主人公の肉体的・精神的な成長という要素を全部削ぎ落とすかわりに、
「自分の行動が結果的に誰かを傷つけてしまう」
「全員がジャックの味方にはなれない」
・・・というジャックを悩ませ続ける要素もきちんと取り入れている。


④ 物語が進行するテンポが最高に良い


24は24話あるが、1話ごとの最後に、次も見たくなる要素を必ずいれてくる。

夜24を観ていて、
「この話を観終わったら寝よう」
・・・と思っていたところが、その話の最後のシーンを見て次の話を見てしまう・・・・といった経験は皆していることだろう。

あざとい(笑

シーズン1〜8、リブ・アナザー・デイを通して、基本的にはそうなのだが、強いて言うなら、シーズン1の1話〜5話までは、あまりそのような要素はなく、ほとんど何も起きない。ジャックの娘キンバリー・バウアー(キム)が夜遊びに行く描写もある。だから退屈かもしれない。

だいたい、24を見始めた人は登場人物の相関関係なども把握できない状態なので、シーズン1の最初からジャックの家族ネタなんか見せられても何が面白いんだと思ってしまう事も否定できない。私が思う24唯一の欠点だ。

ただ、シーズン2からは1話からすでにテロリストが暗躍しジャックがそれに関わってくるから最初から面白い。以降、最終シーズンまでずっとそれが続く。シーズン3からはキムの不可解行動もない。


シーズン1〜2はキムが変な動きをしてうざい。テロリストとは全く関係ないところでジャックを心配させ足をひっぱってしまう。

だが、物語を通じて私が
「直接物語とは関係ない、ちょっと退屈な描写だな」
と感じたのはそこだけである。

パーマー大統領の内輪もめの話も出てくるが、副大統領との対立、次期大統領選挙や殺人とかもからんでくるし、面白い。そして大統領の権限はテロ本編と全く無関係ではないから、内輪もめとはいえ間接的には重要な要素ともいえる。


多くの場合は、一切無駄のないシーンが続いていき、物語はテンポ良く進んでいく。

当時アメリカで、一週間に一度TV放送されていたことを考えると、たった1話観るのをとばしてしまうと、話はどんどん先に進んでしまい、全くわからなくなることだろう。

だが、見ている方は気持ちが良い。記事の冒頭で触れたウォーキング・デッドはこれと真逆で、シーズンが進むにつれて非常に退屈でどうでもいい描写が延々と繰り返される。

24は1話がリアルタイムで1時間・・・・24時間ピッタリで物語が一段落するという構成上、逆に無駄な描写を入れなければ難しいとすら思うのだが、退屈なシーンなど一切なかった。

この点に関しては制作スタッフの皆さんに頭が上がらない。どうやったらこんな完璧な物語ができるのかと思うほどだ。


24のシナリオ構成はどんなものにでもお手本になりうる


24は私がいうまでもなく、日本でも多くのファンがいるが、ただ面白いと思って見ている人がほとんどだと思う。

本記事のようにシナリオを冷静に分析すると、意図的に決まった要素を入れ込んで作られていることがわかる。

最近のドラマではそうしたものがあまりない。去年見た日本のドラマ『VIVANT』(ヴィヴァン)はどんでん返しの連続で久々に面白かったが、日本でも24やヴィヴァンのようなシナリオは滅多に作れないだろう。


日本ではとくに、大ヒットしているアニメも、ストーリーがつまらないものが多い。24やGOT,プリズン・ブレイクなどを見ていると、最近の日本アニメのストーリーは捻りが全くない単純極まりないものばかりである。

今、人気の『葬送のフリーレン』も5話くらいまで見てみたが、一つとして面白いシーンがなく観るのを中断してしまった。

シナリオが面白い・・・は、人によって異なるが、私としては24のような要素を取り入れたドラマ・映画は出てこないのか・・・??
・・・と思う今日この頃である。


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