『ようこそ、写真の聖地へ』 ~中編~
前回に引き続き、”写真弘社”の代表を努める柳澤さんを取材いたしました。
先代から会社を受け継がれたこと、今までに柳澤さんが歩まれた道を今回のインタビューでは伺うことができました。
”写真弘社” とは、柳澤家の歴史であると言っても過言ではない柳澤さんのこれまでの軌跡をご紹介いたします。
”写真弘社”から広がる写真の世界をぜひお楽しみください。
/ 柳澤さんの履歴書 /
ー今回は、柳澤さんのことについてお伺いいたします。 先代が創業した会社には、どのように入社されたのですか?ー
柳澤さん 「私は、”写真弘社”に入る前は、カメラマンをしていました。 写真学校を昭和39年に卒業しまして。 その年はオリンピックがあった年で、非常に好景気で就職も良かったので、在学中はあまり就職のことも考えず、沖縄に行って写真を撮ったりしていましたね。 当時は沖縄に行くのにビザのような入域許可書も必要な時代でした。」
ー高度経済成長期で、オリンピックですと、すごい好景気そうですね。ー
柳澤さん 「そういう時代であったので、就職のことは深刻には考えてはいなかったですよね。 そうしたら、学校の先生からは『どうせ、お前はお父さんのところに行くんだろ?』と言われましてね。 ただ、父と話している際に『お前はどこに行くつもりなんだ?』と聞かれて、慌てて就職を考えることになったんですよね。(笑)」
ーそれから、カメラマンの道に進まれることになるわけですね。ー
柳澤さん 「当時は、報道の仕事をしたかったですけど、なかなか見つからなくて。 それで、出版社に就職先を変えて、芸能系の出版社に入ることになりました。 配属は写真部で1年くらいやっていたのですが、当時の部長だった水野先生が独立することになりまして、一緒に付いていくような形で出版社を退職しましたね。」
ーなるほど。 出版社も面白そうですが、やりたいことがあったのですね。ー
柳澤さん「水野先生は、当時の注目されている雑誌の表紙などを手がけていた有名な方でした。 私は、ニュース、報道をやりたかったので、師事させていただいた水野先生からは、報道関係の仕事ができると伺ったのと、前職は芸能系の仕事が多かったんですよね。 実は、あまり芸能系が得意でないので興味が湧かなかったですよね。」
/ ニューヨークで巨匠 リチャード・アヴェドンと出会う /
ー水野さんの事務所に入られてからは、どのようにされていたのですか?ー
柳澤さん「だいたい3年くらいカメラマン助手として働いていました。 その後は、アメリカに行きました。 当時は、なかなかアメリカで働くことが難しい時代で。 アメリカの放送局のCBSがオリンピックの取材状況を記録するカメラマンを探していまして。 学校の先生の紹介だったんですが、それで一緒にその取材に同行しましてね。 それがきっかけで、ディレクターの方と仲良くなって、アメリカに滞在できるように協力してもらいました。 ハワイ、ロサンゼルス、ニューヨークとあわせて5年位いましたね。」
ーアメリカの生活は、すごい楽しそうですね!(笑)ー
柳澤さん「ニューヨークでの生活は非常に楽しかったですね。 学校に行きながら、Kodak社のラボ(現像所)でプロカメラマン専用のフィルム現像の集配をしていました。 当時は、ユージン スミス、コーネル キャパ 、リチャード アヴェドンなどの有名な写真家が集まってましてね。 仕事では、よくリチャード アヴェドンのスタジオに行くことが多くて、本人ともよくお話をしまして、本当に親切してくれましたね。」
ー正直、びっくりしました!! 巨匠リチャード アヴェドンにお会いしているのは、すごい体験ですね!ー
柳澤さん 「リチャード アヴェドンのスタジオには、当時の有名な写真家が多く出入りしてましたね。 本当に気さくで色々な方を紹介してくれましたね。 じつはアシスタントをしてた日本人の方がいましてね。 ”AERA” の表紙写真を撮り続けたことでも有名な坂田栄一郎さんでしたね。 日本でも非常に有名な写真家ですよね。」
ーええっ、それもすごいですね!! ー
柳澤さん 「本当に色々な方が出入りしていて、ファッション誌の ”ハーパス バザー” の写真を撮影していた 写真家 ヒロ ワカバヤシ もいたり、彼のアシスタントをしていた ケン オハラ とは、今でも仲良くしてますね。 素晴らしい写真家が集まってましたね。」
ーいや、、かなり驚きました。 世界的に有名な写真家との出会いや親交がある方、なかなかいらっしゃらないです。ー
柳澤さん 「写真の業界に長く携わっていると世界的な写真家集団マグナム・フォトの方々とも親交があったりしますが、それより私たちは縁の下の力持ちというか、写真家を支える存在でなければないと思っていますね。」
/ 柳澤さんが考える良いプリントとは? /
ー 柳澤さんは本当にプロフェッショナルだと思います。 素晴らしいです。 そこで、写真の話になりますが、柳澤さんが思う良いプリントとはどのようなものだと考えていらっしゃいますか? ー
柳澤さん 「写真展等で作品を見た時に写真の伸ばし(引き伸ばし)を感じさせないものが良いプリントだと思いますね。 そういうものだと、写真に写っているもの自体に集中してみることができますよね。 『この海は綺麗だな~』とか、率直に感じられますよね。 あと、カラー写真が多くなってからは、色については非常に考えますね。」
ーなるほど、すごい勉強になります!ー
柳澤さん 「作家の方の作品を手がけることが多いのですが、作品ができるまでには、作家とのやりとりというか、少しでも良いものにするためにお互いの意見をぶつけ合うようなやりとりがありまして。 私たちとしても、良い写真になるのにそのままにするわけにはいきませんので、良いものにするために諸々提案すると、ご本人が何を大事にしていて、何を追求していたのかを再認識することがありますよね。」
ープロ同士の協力によって、より良いものが生まれるわけですね。ー
柳澤さん 「作家の作品は作家だけで制作するのではなく、プリントも製作の一部、一緒に作ることで、よりもっと良いものができると思って、私たちは仕事に臨んでます。 良い作品は、人に訴えかけますし、安心して見れますよね。 それがプロラボの仕事かなと思いますね。 たまに、『これからプロラボはどうするのか?』と聞かれるのですが、その時は 『今やっていることをプロとして粛々とやっていくしかないです』といつも答えてますね。(笑)」
次回のインタビューに続く。(下記、後編です。)
https://note.com/24mtokyo/n/n2a9dd231ea55
文 : 荒岡 敬
写真 : 小林 浩平
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