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THINK95 /ゲスト:丸若裕俊さん(株式会社丸若屋/EN TEA)

ーー定期購読マガジン THINK BOOK について
THINK BOOK は,読む "THINK" です.Suppose Design Office の谷尻誠が毎月魅力的なゲストを招き「"考える"を考える場所」として開催しているイベントTHINKを紹介するものとして,THINKに参加した人も参加できなかった人も,トークのエッセンスを追体験できるように読み物として再構成してまとめています.過去100回以上に及ぶ記録資料などの掘り起こしを含め,月に2回程度掲載していきます.
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今回は,第95回目のTHINKをアーカイブから起こしてダイジェストでお届けします.

THINK 95
Date: 2018/11/02
Time: 19:30-22:00
Place: Suppose Design Office Hiroshima 3F

当時のフライヤーより

茶器にお茶を注ぐと、そこに花が咲き、手に取ると花びらが散り広がる。お茶が入っている限り、新たな花が咲き続ける。そんなシーンを見たことがないでしょうか?
https://youtu.be/_wlvFnEnp0U

今、入場するのにも数時間待ちと話題を集めるチームラボさんの「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM EPSON teamLab Borderless」において、茶室スペースとしてコラボレーションされているのが、「EN TEA HOUSE ‒ 幻花亭」です。チームラボさんがつくるアート空間で作品の一部として、また飲んでも美味しい茶を提供されています。

第95回目のTHINKは、その茶ブランド「 En Tea / Gen Gen An 」を主宰する丸若裕俊さんをお招きします。

丸若さんは、茶ブランドを始める十数年前から株式会社丸若屋で、日本の職人の技を現代にアップデートする取り組みを国内外で行なっていました。元々はアパレルで勤務され、26歳のときに石川県で丸谷焼に出会ったことがきっかけで伝統工芸のプロデュースをスタートされました。プーマとコラボした曲げわっぱのお弁当箱や、印伝のiPhoneケースなどを手掛け、パリにもギャラリーを出店し、「日本文化の再生屋」と呼ばれてきました。そして現在、栽培から販売を自らで行うために、佐賀県嬉野に茶畑を構え、2017年に「EN TEA」という茶葉ブランドを立ち上げられました。今年春には、EN TEAの茶葉が楽しめるカフェスタイルの「GEN GEN AN by EN TEA(https://en-tea.com/pages/gengenan)」を渋谷にオープンし、”MUJI”、”とらや” などの大手ブランドとも協業されたり、新宿伊勢丹や阪急百貨店にてポップアップをされたりと、業界も注目する茶葉ブランドとなっています。

今や、茶は東洋のものだけでなく、世界中で受け入れられ各国や文化に溶け込んできているもの。その流れの中で、丸若さんは、世界中で茶をより身近に感じてほしいという想いから、入れて振るだけの水だし茶のティーパックに注力されたり、水だし茶用のお茶ボトルの販売などをされたりするなど、現代の生活にも馴染む商品や、気軽に参加できるワークショップなども積極的に行われています。伝統的な食文化、ましてや茶道という歴史ある作法をもつお茶というと、それらを忠実に継承するということにとらわれがちですが、現代にアップデートすることを大切にされ、後世の人々が受け継いで行くためのフォーマットを再編集されているようにも見えます。
ここ、広島にも沢山のすばらしい工芸品、名産品、そして文化があります。それらをどのように100年後、200年後の世代へとバトンタッチしていけるのか、丸若さんから大きなヒントをもらえそうです。沢山のご来場、お待ちしております。

THINK_95
日時:11月2日(金)
開場 19:00〜
開演 19:30〜21:30
会場:広島市中区舟入本町15-1
サポーズデザインオフィス3階
facebook http://www.facebook.com/SupposeDesignOffice

Guest 丸若 裕俊/ Hirotoshi Maruwaka
東京生まれ横浜育ち。多種多様な文化が交わる港町で幼少期を過ごし、日本の職人との衝撃的な出会いを機に「モノコトづくり屋」丸若屋を設立。日本文化との取り組みは、パリ、ミラノ、ロンドンなど数多くの評価を得る。自身の集大成と位置付ける「EATING GREEN TEA」を掲げた、畑から世界市場を生む茶葉ブランドEN TEAを2017年より始動。

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以下に,ビデオアーカイブから起こしたダイジェストをお届けします.
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「前にオファーしたけど無視したよね?笑」

オープニングに映像が流される.日本の地場産業や伝統工芸に焦点を当てることで、地域の価値を再発見する新しいものづくりプロジェクト”Designing Out”の第1弾のクリエイターとして丸若さんがプロデュースした器を紹介するものだ.

映像が終わると,ホスト役の谷尻さんが丸若さんを簡単に紹介する.

「もう10年くらいの仲になるんですけど,1回途中でこのTHINKに来てほしいってメールしたけど無視したよね?」と笑いながら問い詰める.

「いや,冗談かと思って.だってすごい人たちがゲストで来られてるのを知ってたので,からかわれていると思ったんですよね」とかわす.そんなフランクな感じで,第95回目のTHINKは幕を開けた.

日本にもカウンターカルチャーがあるじゃん

東京で生まれ,横浜で育ったという丸若さん.お父様がIBMのエンジニアだったという環境で,比較的,欧米文化が日常的な環境で育ったという.ただ,学生時代にAppleのMacを買ってひどく怒られたというエピソードも,そんな中,大学で経営を学んだ後,卒業してその欧米文化への憧れが高じて,最初はアパレルブランドのDIESELに入社.人生の前半はどっぷり欧米にかぶれていたという.ただ,ファッション業界での仕事に何か行き詰まりを感じ,いちど離れてみることにしたのだそう.自分の目で次に何をやるべきか考えようと旅に出たのは,経済的な理由もあって,欧米ではなくて日本の地方だった.そこで,人付き合いの中で何かに導かれながら,自分のやるべきことを考えていた時に,その日本の地方に息づく伝統産業や職人たちの仕事を見た時「日本にもカウンターカルチャーがあるじゃん」と閃いたのだという.それは,日本の文化が欧米化して行く変化の中で置き去りにされてきた者たちの姿だった.「まだまだ知られていないこんなにすごい技術や製品がある」そして,それらを再発見していくことを,自らの新しい活動として始めたのが25歳くらいのこと.

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谷尻さん「Design TIdeで,木製の iPhoneケースが目に止まって,それが悪若さんのプロデュースしたプロダクトだったんですよね.現代と工芸がすごく自然に結びついていて,印象に残っていたんです」

初めて Design Tide に出展して,そこで谷尻さんの目にも止まり,そうやって少しづつ知られるようになってきたのが2008年.当時はまだインスタグラムとかで宣伝するなんてまだほとんどない時代なので.雑誌やメディアに取り上げられたりしながら少しづつチャレンジしてきたとのこと.最初は職人さんたちも,これまで何度か似たようにプロデュースするっていう話に乗ったものの上手くいかず,関係を築くまで苦労も多かったという.

ハイメ・アジョンはどうやって口説いたのか

様々な伝統工芸を現代の文脈でプロデュースしていくときに「器」がひとつ大きな成功への足掛かりとなる.谷尻さんが,スライドに映し出されたハイメ・アジョンを見つけて尋ねた.「どうやってハイメを口説いたの?」

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2020年1月で109回を迎えたTHINK。 これまでのアーカイブを読むTHINKとして届けていきます。 活躍する方の思考の共通項と差異を客観的視点から考察します。

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