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筋の良い仮説とは何かを解説したnote

今回のnoteでは『筋の良い仮説とは何なのか?』をテーマに、良い仮説の条件や良い仮説を立てるために注力することについて説明していきます。15分程度お付き合いください。

・良い仮説の条件
 1 / 目的を達成できる、効果的な解である
 2 / 実行後に検証出来る
 3 / 他の人が簡単に、すぐに、思いつかない

・良い仮説を立てるために注力する5つのこと
 1 / 問題意識を持って、大量のインプットに触れる
 2 / アナロジー思考をフル活用する
 3 / 視点・視野・視座を意識する
 4 / 定量化・チャート化してみる
    5 / 人に聞いてみる

◎ 普段の生活から「仮説」を持って行動している

こんにちは、独立して3年目の経営コンサルティング、顧問業をやっている松本です。経営や投資を通じての日々の学び、気付きや自分の頭で考えたことをnoteにまとめていきます。

皆さんは普段から「仮説」を持って生活していますか?あるいは自分は「仮説思考をしている」ということを意識しながら行動してますか?

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何の気なしに考えている事も、実は何らかの仮説を立てている場合が少なくありません。具体的には日々の生活の中で【事実】 → 【解釈】 → 【仮説】のステップを踏んで、合理的な意思決定しています。

空・雨・傘のフレームワークをご存知でしょうか?このフレームワークを用いて説明していきます。

空・雨・傘のフレームワーク

空:空を見ると、曇っている(事実)
         ↓
雨:今にも雨が降ってきそうだ(解釈1)
雨:この曇りだと昼ごろには雨が降るかもしれない(解釈2)
雨:時折、雨がパラパラと降るかもしれない(解釈3)
           ↓
傘:今にも雨が降りそうなので、傘を持っていこう(仮説1)
傘:後ほど雨が降るかもしれないので、折り畳み傘を持っていこう(仮説2)
傘:今日は外出する機会も少ないため、傘は持っていかない(仮説3)

事実(空)を正しく認識し、そこから得られる解釈(雨)から最も合理的と考えられる仮説(傘)を判断する上で、思考が整理されるフレームワークとして活用されます。

仮説の1〜3の行為は、事実を解釈したことで生まれた仮説であり、人は無意識、反射的にこのような思考プロセスに基づいて、行動変容しています。

◎ 仮説の定義と、立てることのメリット

仮説とは『事実から一定の合理性をもって導き出されるもの、及び事実から読み取れる個人の考察を含んだ仮の答え』と定義できます。

簡単に表現すると『最も確からしい仮の答え』といえます。

仮説を立てるには、1つの事実に対して、多面的な角度から解釈し、事前の知識と経験に基づく直感を活用していきます。

仮説を立てるのが難しい、なかなか思いつかないと考える人はこの事前の知識や経験値、つまり『インプットの質と量』が足りていない状態であり、必要最低限のインプットが必要になってきます。

インプットといっても特にビジネスの場面では、本や記事で読んだ情報を横流しで適用することで解決できることはそんなに多くありません。多様な知識(量)と経験(質)の組み合わせによって、仮説を立てる、思いつくことができます。

そして、仮説を立てることのメリットは『問題解決へのアプローチが早まること』です。全ての事実を闇雲に、当たりもなしに全て調査することは、非効率であり、時間は無限にはないため、問題解決にたどり着きません。

そのため、おそらくこれだと思う現時点における最も確からしい仮の答えを設定し、この仮説を証明するために必要な事実を集める一連のプロセスが仮説思考になります。

旅行に行くときにかかる時間・料金・経路などのおおよそのあたりをつけてプランを練る際も同様に当たり(仮説)をつけて、情報誌やWebから情報を集めてプランの精度を高めていると思います。そして、旅行の経験が増えるにつれて、初期の当たりの精度やプランを練る時間も短縮されていると思います。

それと同じように、事前の知識(質の高い情報)と経験に基づく洞察を持つことで筋の良い仮説を迅速に思いつくことができます。その結果として、課題解決に対して、どんな勝ち筋があるのかを的確に考えられ且つ実行に移すスピードも高められ、問題解決までの期間を縮めることができるのです。

◎ それってただの思いつき?それとも仮説?

現時点における仮の答えと言っても、”思いつき”なのか?それとも”仮説”なのか?その違いは何か?

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簡単に言ってしまえば『その場で、たまたま思ったことなのか?それともちゃんと検討されたことなのか?』ということです。

しかし、その場合の「ちゃんと」とはどういう意味でしょうか。経験に基づいた知見や、主観を中心として物事を認識するだけでは「ちゃんと検討されたこと」とは呼べません。

大事なのは「何について」の仮説なのかを明確にしておくことです。何ついてとは簡単に言うと『答えるべき問い』です。この答えるべき問いとセットで仮説を検討しているか?ここがズレていては、一生問題を解決することが出来ません。この問いの設定は、物事を見るときの視点そのものです。ちゃんと検討された仮説とは「答えるべき問い」から「何が言えるのか?見えてくるのか?」との関連付けや整合が取れていることが条件として挙げられます。

「ちゃんと検討されていること」は確かな情報に基づいた明確な論点を持った状態で、セットで思案されているかどうかが大切だと言うことです。

一方で、仮説の精度を高めようとするあまりに、いつまでも情報取集したり、考え過ぎることで、着手までの時間が遅くなってはダメです。『当たりをつけなかった、見切りをつけた方に、何か解決の糸口があるかも、可能性があるかも』とモヤモヤと考えるのではなく、ある程度の段階でスパッと思い切ってこの仮説に絞るぞ!といった意思決定ができるようにならないと逆に問題解決までの期間や道筋が長くなります。

◎ 論点と仮説との関係性について

先ほど『答えるべき問い』と言いましたが、別の言葉で表現すると『論点』と呼ばれ、この論点に対しての仮の答えが仮説、という位置付けになります。

論点について詳しく知りたい方は、次の記事を読んでみてください。

先ほども説明しましたが、基本的には問いと答えが1対1対応となるように論点と仮説は常にセットで考える必要があります。

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例えば、自社プロダクトの販売戦略を考案する場面で考えてみましょう。

論点と仮説をセットで考える

論点:売上を継続的に伸ばしていくため、注力するターゲットを新規顧客に絞るべきか?既存顧客に絞るべきか?
                 ↓
仮説:新規顧客を攻めるべきである。なぜならば、市場での自社プロダクトの解約率や売上継続率を考えれば、新規顧客を獲得するマーケティングにリソース配分をすることが持続的な売上の成長に繋がるため

というように課題提起や論点の提示を行い、伴って事実に基づく根拠から仮説を立てていくことになります。

◎ 良い仮説の条件とは

仮説の中でも結果的に答えの精度が高いものと、そうではない精度が低いものがあります。前者を筋の良い仮説、後者を筋の悪い仮説と呼ばれます。

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世の中には、初期の仮説からいきなり、筋の良い仮説を見つけ出す人がいます。その人が筋の良い仮説をどのように立てるのか、という部分が気になりますよね。実際のところ、筋の良い仮説を立てるには、知識量と経験値に依存するところが大きいです。

しかし、圧倒的な場数や学習経験がものを言うとはいえ、効果的に筋の良い仮説を立てるために必要な要素を認識した上で、鍛錬していく必要があります。ただ、闇雲に仮説立てるだけでは、クリティカルな仮説を生み出すのにかなり時間がかかってしまいます。

箇条書きにはなってしまいますが、以下3つが良い仮説に含まれる重要な要素になります。

良い仮説の条件

1 / 目的を達成できる、効果的な解である(問いに対してズレがないか?)

2 / 実行後に検証出来る(実行可能で計測することができるか?)

3 / 他の人が簡単に、すぐに、思いつかない(真似されないか?)

例えば、以下のケースに当てはめて、仮説AとBの評価をしてみます。

論点:海外のハイエンド層向けのハンバーガーショップが日本国内に参入し、出店予定とのこと。この海外企業の出店展開を妨げるために、国内でTOPシェアを誇る高価格帯ハンバーガーチェーンはどう立ち向かうべきか?

仮説A:競合が出店した後に、隣接店舗に出店し、売上や収益性を下げて撤退に追い込む

仮説B:競合が出店する前に目星がつく立地を押さえて、出店させないようにする

1 / 目的達成度合い
論点に対して、仮説Aは出店後の撤退を追い込む打ち手で、仮説Bは海外競合の出店を妨げる打ち手と言えます。

目的は海外企業の日本国内出店の防止です。仮説Aは一度出店を受けれて、その後競争により撤退に追い込む打ち手のため、仮説Bのそもそも出店させない、場所を押さえるといった出店を受け入れない打ち手の方が、実現性は一旦おいて目的を達成する上でインパクトは大きいです。

2 / 実行可能且つ計測可能度合い
仮説Aは、近隣に出店した自社店舗売上や収益からその土地での競合売上、収益をおおよそ推測することはでき、収益次第ではありますが、今後の国内出店予定の増減に影響が出てくるため、その結果次第で仮説Aの効果検証が出来ます。

仮説Bは、事前に海外企業の出店計画を入手し、予定と実績との乖離や比較してみます。ただ、仮説Aと比較して仮説Bは検証が非常に難しいです。打ち手に対して、本当に競合が出店する前に目星がつく立地を抑えたから、競合の出店を妨げたのか?それとも別の要因なのか?実行後の測定が非常に難しいです。

3 / 簡単に真似できない、真似されない度合い
仮説Aは海外企業の出店を機に初期投資コストが発生します。仮説Bは海外企業がどこに出店する予定なのか?予測を立てて事前に出店する土地を抑えるため、初期の投資コストはもちろん不確実性が高い打ち手となります。

そのため、他ができない、やりきれない可能性も高く、当たれば大きなインパクトや効果を期待できる反面外れた場合のリスクも大きいです。この打ち手は予測精度と実施タイミングが問われるだけにハード且つ慎重な意思決定が求められます。

以上、立てた仮説A、Bに対して上記3つの条件に当てはめ評価や比較検討することで選定や熟成を繰り返し、良い仮説に仕上げていきます。

◎ 筋の良い仮説を思いつくには

仮説を持つことや思いつくこと自体は決して特殊能力ではないですが、より精度の高い、筋の良い仮説を思いつくには、日々の努力と鍛錬を積み重ねる必要があり、それ次第で誰にでも身に着けられる能力です。

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では、最後により筋の良い仮説を立てるためには、何に注力することが重要なのかこれから説明していきます。

1 / 問題意識を持って、大量のインプットに触れる
仮説を構築する上で切っても切れないほど大切なのがインプット量になります。これは普段から多くの情報に触れ続けて、仮説思考の基礎体力を付けるために欠かせません。

とはいえ、闇雲にWebや本を読み漁り、盲目的にインプットをし続けていても、効果的な能力向上は望めません。

あくまでも問題意識を持ちながら、色々な事象や情報に触れる必要があります。問題意識を持つことによって、トレンドや身近に起きた事象に対して「なぜそうなのか?」という視点をもち「これは一体どういうことなのか」「このケースではこういうことが起こる」といった常に一歩踏み込ん自ら問う癖と結論付ける癖をセットで捉えて、仮の答えを頭に蓄積していきます。

最初は知識も経験も少ないところから始めるため、しばらくは辛く、苦しい習慣になるかもしれませんが、日々の中で触れる些細な事象から問題意識を持ちながら整理する癖をつけていきましょう。

2 / アナロジー思考をフル活用する
アナロジー思考とは何かについて、過去のnoteで説明したため、この場では割愛しますが、アナロジー思考とは『過去の事象や異なる分野から導き出した法則性を、これから起きることや未経験の分野または自分野に応用する思考法』です。この思考法で蓄積されたパターン認識によって、筋の良い仮説を導き出すことができます。

詳しくは次の記事を読んでください。

3 / 視点・視野・視座を意識する
先ほど大量のインプットに触れると述べましたが、同じインプット(情報)に触れたからといっても誰もが同じアウトプット(仮説)になるとは限りません。インプットの受け取り方次第で自分はどのように認識しているのか変わってきます。その結果、解釈が全く異なり、その影響で仮説の内容も別物になります。

まずは、自分自身が「インプットや事象をどのように認識しているのか?」に立ち返る必要があります。また、この認識の違いは、視点の多さ、視野の広さ、視座の高さで変わってきます。

この視点・視野・視座については、アナロジー思考と同様に、過去のnoteにについて説明していますので、参考にしてください。

4 / 定量化・チャート化してみる
ただ、頭の中だけでぼんやりと考え込んで仮説を思いつくのではなく、事象を一度数字に落とし定量化してみたり、図に落とす作業、つまり構成要素と要素の関係性を可視化する過程で、今まで見落としていた視点や新しい発見が思いつくことがあります。

例えば、時間軸を長めにとって推移、周期から傾向や法則性を見つけ出したり、平均値から大きく外れる異常値を発見し、深堀して調査したりと斬新な仮説が思いつくきっかけになります。

この定量化・チャート化については、分析についてのnoteで解説していますので、参考にしてください。

5 / 人に聞いてみる
仮説は自分で思いつかないといけない、立てないといけないと思いがちですが、論点(答えるべき問い)が定ったら、自分よりその問いに詳しい人やその問いに対して、自分より長く、深く考えている人を選定して、率直に聞いて仮説をもらいます。

一人に限らず、相談できる人数や時間の許すかぎり、複数の仮説をもらうことをおすすめします。数ある仮説の中から一番論点に直結している仮説は何か?これは筋が良い!と思う仮説を選定します。

ビジネスは受験対策や大学試験ではないため、暗記する必要もなく、カンニングも卑怯な振る舞いではなく、問題解決に対する有力な手段、アプローチの1つです。たくさんの人の力や知見を借りて最適な仮説が出せることに意識を向けることが最も大切なことです。

◎ まとめ

今回の記事の内容を、箇条書きにしてまとめました。

・仮説とは、その場の思いつきではなく、事実や経験に基づいた『最も確からしい仮の答え』

・仮説とは、論点(答えるべき問い)に対する仮の答えであり、常にワンセットで考える

・良い仮説の条件
 1 / 目的を達成できる、効果的な解である(問いに対してズレがないか?)
 2 / 実行後に検証出来る(計測することができるか?)
 3 / 他の人が簡単に、すぐに、思いつかない( 簡単に真似できない、真似されない?)


・筋の良い仮説を立てるために注力する5つのこと
 1 / 大量のインプットに触れて、問題意識を持つ
 2 / アナロジー思考をフル活用する
 3 / 視点・視野・視座を意識する
 4 / 定量化・チャート化してみる
    5 / 人に聞いてみる

最後に、Twitterで毎日ベンチャー経営やエンジェル投資を通じての『学び』や『気付き』について投稿しています。

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