作業時間の見積もりは甘くなる
■ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか/ピアーズ・スティール (著), 池村千秋 (翻訳)
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この記事を読むべき人は次のような方々です。
タスク管理に苦手意識がある方
プロジェクト管理に携わる方
先延ばしに関する研究に興味がある方
Question
Johnは,大学院生で,卒業論文の提出期限が迫っていました。彼は,自分が計画通りに進めば,後20日で論文は期限までに完成すると確信していました。
Q. Johnが実際に論文を完成させるのにかかる日程はどのようになる可能性が高いと予測できますか?
A)20日で終わる
B) 20日以内で終わる
C) 20日以上かかる
D) 終わらない
正解はC) 20日以上かかる,です。
Introduction
先延ばしは,私たちが目標を達成する上で大きな障害となることがあります。私たちは,重要なタスクを後回しにしてしまい,結果的に時間が足りなくなり,ストレスや不安を感じることがあります。このような状況を避けるためには,先延ばしのメカニズムを理解し,それを克服する方法を学ぶことが重要です。そのために,先延ばしに関する研究が行われており,その成果は私たちの日常生活に役立つ知見を提供しています。
作業時間の見積もりは甘くなる
1994年に「Journal of Personality and Social Psychology」に投稿された,Simon Fraser大学の研究によると,作業時間の見積もりは正確であるのかを検討しています。
調査の対象になったのは,学位論文の提出を控えた,大学生37名でした。調査対象者には電話で,以下のような学位論文の提出時期に関する2つの質問に回答してもらいました。
・もし論文の執筆が順調にいった場合,論文はいつ完成しますか
・もし論文の執筆がうまくいかなかった場合,論文はいつ完成しますか
そして実際に実験参加者が論文の執筆にかかった期間と比較し,論文執筆の完成の見積もりと実際のに数にどのくらいの差があるのかを分析しました。
調査の結果,論文の執筆にかかる時間を楽観的に見積もった場合には平均で約27.4日,悲観的に見積もった場合には平均で約48.6日になりました。しかし,実際に論文の執筆にかかった時間は平均で約55.5日でした。
後続の実験では,今までにこなした課題にかかった期間を参考に課題遂行にかかる時間を見積もった場合には今までの課題の遂行時間を参照しなかった場合よりも正確に時間の見積もりをすることが確認されています。
これらの結果は,人々がタスク完了時間を予測する際に楽観的であること,および関連する過去の経験が予測精度を向上させる可能性があることを示唆しています。
Conclusion
この研究によると,人々がタスク完了時間を予測する際に楽観的であることが示唆されています。このことを考慮すると,日常生活の中でタスクの完了時間を見積もる場合,過去の経験を参考にすることで,より正確な見積もりができるかもしれません。また,プロジェクト管理などの場面では,過去のプロジェクトの実績を参考にすることで,より正確なスケジュール管理ができるかもしれません。
Case Study
ある日,Saraは新しいプロジェクトのスケジュールを立てることになりました。彼女は,自分が計画通りに進めば,プロジェクトは期限までに完成すると確信していました。しかし,彼女はこの研究を思い出し,過去のプロジェクトの実績を参考にすることにしました。その結果,彼女はより正確なスケジュールを立てることができ,プロジェクトは期限までに無事に完成しました。
References
Buehler, R., et al. (1994). Exploring the “Planning Fallacy”: Why people underestimate their task completion times. Journal of Personality and Social Psychology, 67, 366-381.
Action Plans
タスクの完了時間を見積もる際には,過去の経験を参考にする
プロジェクト管理の際には,過去のプロジェクトの実績を参考にする
楽観的な見積もりを避け,現実的なスケジュールを立てる
Keywords
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Journal of MIND
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