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想像は記憶を増強する

記憶の仕方を変えることで記憶の定着率が変わるという趣旨の論文があったのでメモ(1)。

記憶の仕方について調べた研究を見てみると以下のようなちょっとした行動が記憶の定着に大きな違いをもたらすことが分かっています。

・手を握ることで記憶力が高まる(2
・睡眠不足になると記憶の定着率が低くなる(3
・絵を描くとよく覚えられる(4

このように記憶の定着率は睡眠や覚える際の動作によって変わります。

今回紹介する論文は英単語の訳を覚える場面のように2つの単語を合わせて覚える時にイメージを用いることでよく頭にも残ることを教えてくれます。

写真を飾っている様子

1972年にスタンフォード大学の心理学者であるゴードン・バウアーが記憶の仕方によって頭に定着する度合いが違うのかについて調べるために実験を行いました。

実験の対象となったのは大学生の男女でした。

実験参加者をランダムに2つのグループに分け,関係のない2つの英語の単語を20ペアずつを記憶してもらいました。2つのグループとは以下の通りです。

<グループ1>
2つの単語からイメージを作ってもらう

<グループ2>
何も指示を与えない

その後テストとして学習した片方の単語を表示しもう片方の単語を思いだしてもらい,グループ間の成績の違いを分析しました。

写真をベッドの上で並べている様子

実験の結果,提示された2つの単語からイメージを作ったグループ1はグループ2より多くの単語を思い出すことが出来た。また記憶テストの成績は単語の学習とテストの間隔が直後であっても時間を空けた場合も同じであった。

この実験では記憶するときにイメージを用いると覚えたときから思い出すまで感覚が空いても思い出すことが容易になることが示されました。

このようにイメージを使うことによって映像という詳細な情報も記憶に加わるので認知処理が深くなります(5)。

頭に良く定着する記憶方法の一つである,記憶するための場所として頭の中にいつも生活している情景を頭に作り,記憶するものをその場所に置いていくイメージを作ることで記憶する「場所法(記憶の宮殿」」もイメージを作ることで記憶の定着を高めていると言えます(6)。

写真が並んでいる様子

(1)Bower, G. (1972). Mental imaginary and associative learning. New York, John Wiley, 51-88.

(2)Propper, R. E., McGraw, S. E., Brunye, T. T., & Weiss, M. (2013). Getting a grip on memory: Unilateral hand clenching alters episodic recall. PloS one, 8(4), e62474.

(3)Stickgold, R., James, L., & Hobson, J. A. (2000). Visual discrimination learning requires sleep after training. Nature neuroscience, 3(12), 1237-1238.

(4)Wammes, J. D., Meade, M. E., & Fernandes, M. A. (2016). The drawing effect: Evidence for reliable and robust memory benefits in free recall. Quarterly journal of experimental psychology (2006), 69(9), 1752–1776.

(5)Craik, F. I., & Lockhart, R. S. (1972). Levels of processing: A framework for memory research. Journal of Verbal Learning & Verbal Behavior, 11(6), 671–684.

(6)Wagner, I. C., Konrad, B. N., Schuster, P., Weisig, S., Repantis, D., Ohla, K., ... & Dresler, M. (2021). Durable memories and efficient neural coding through mnemonic training using the method of loci. Science advances, 7(10), eabc7606.

■脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!/ベネディクト・キャリー  (著), 花塚 恵 (翻訳)

■脳はこうして学ぶ:学習の神経科学と教育の未来/スタニスラス・ドゥアンヌ (著), 松浦 俊輔 (翻訳)

■Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ/アーリック・ボーザー  (著), 月谷真紀 (翻訳)

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