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左よりも右が魅力的に見える「右重要バイアス」

商品の置かれる位置によって評価が変わるという趣旨の論文を読んだのでメモ(1)。

私たちは大学に進学した理由や新しい家を購入した理由などを言語化するときに本当の原因とは違うものを理由として述べてしまうことがあります。

つまり,意思決定などの認知的過程は意識している部分だけでは構成されておらず,意識することが困難なバイアスやステレオタイプに左右されている可能性があるということです。

意識しないと避けれないバイアスには以下のようなものがあります。

・事前に提示された数の大きさによって次の数字の見積もりが左右される(アンカリング,2
・自分の所属するチームは相手チームよりも反則をしないと思い込む(確証バイアス,3
・自分の能力や社会的に望ましい性格は全体の平均以上だと思い込む(平均以上効果,4,5)

これらのバイアスは意識しないと防ぐことが難しいことが分かっており,その影響は自己認識や数字の見積もりなどの領域にとどまりません。では,購入場面における商品の位置は購入者の意思決定を変えたりするのでしょうか?

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1977年にミシガン大学の社会心理学者であるチャールズ・マスベットらが物の評価は置かれている順番に影響を受けるのかについて調べるために実験を行いました。 

対象となったのは通行人52名でした。

実験参加者は並べられた4つのナイロンのストッキングを見てもらい,その中からどのスットキングが一番品質がいいか選んでもらいました。 

そしてなぜそのストッキングを選んだのか理由を説明してもらいました。 しかし実は並べられた4つのストッキングはすべて同じで,違いはありません。 

全く同じものなのにかかわらず置かれている位置によって商品の評価は変わったりするのでしょうか?

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実験の結果,一番右のストッキングが一番左のスットキングに比べて約4倍も多くの人に品質が良いと評価された。

しかし,実験参加者になぜそのストッキングを選択したのかを尋ねたところ,対象の位置がスットキングの評価に影響を与えているとは答えなかった。

実験参加者に直接,「対象の位置がストッキングの評価に影響を与えたと思いますか?」と聞いたところ,すべての人がその可能性を否定しました。

これらの結果から,商品の選択をするうえでその順番で置かれているのかは購入者の意思決定に大きく関わっていることが分かります。

なぜ一番左の対象が一番右の対象よりも評価が高くなったのかに関しては,人間には文化によって異なりますが,左から右に文字を読む傾向があり(6),一番左の対象を最後に見ることで記憶に残りやすいからだと考えられています(新近効果,7)。

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(1)Nisbett, R. E., & Wilson, T. D. (1977). Telling more than we can know: Verbal reports on mental processes. Psychological Review, 84(3), 231–259.

(2)Tversky, A., & Kahneman, D. (1974). Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases. Science (New York, N.Y.), 185(4157), 1124–1131.

(3)Hastorf, A. H., & Cantril, H. (1954). They saw a game; a case study. The Journal of Abnormal and Social Psychology, 49(1), 129–134. 

(4)Cross, P. (1977). Not can but will college teachers be improved? New Directions for Higher Education, 17, 1–15.

(5)Dunning, D., et al. (1999) Unskilled and Unaware of It: How Difficulties in Recognizing One`s Own Incompetence Lead to Inflated Self-Assessments. Journal of Personality and Social Psychology, 6,1121-1134. 

(6)Morikawa, K., & McBeath, M. K. (1992). Lateral motion bias associated with reading direction. Vision Research, 32(6), 1137–1141. 

(7)Roediger, H. L., & Crowder, R. G. (1976). A serial position effect in the recall of United States presidents. Bulletin of thePsychonomic Society, 4, 275–278.

■ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?/ダニエル・カーネマン  (著), 友野典男(解説) (その他), 村井 章子 (翻訳)

■ファスト&スロー (下): あなたの意思はどのように決まるか?/ダニエル・カーネマン  (著), 友野典男(解説) (その他), 村井 章子 (翻訳)

■医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者 大竹 文雄  (著), 平井 啓 (著)

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