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神様の存在を意識すると利他的になる

神様の存在を認識すると他人に対して利他的な行動を取るようになるという趣旨の論文を見つけたのでメモ(1)。

これまでの研究を見てみると,誰かに見られている状況では社会的に望ましい行動を取る傾向が私たちにはあることが分かっています。具体的な例を挙げると以下のようなものがあります。

・宗教を信仰している人は他人に対して率先して援助行動を取る(2
・学校にお化けがいることを知るとカンニングが減る(3
・目線を感じると嘘をつく回数が減る(4

今回紹介する論文は神様の存在を意識することで他の人に対する利益のある行動を取りやすくなることを教えてくれます。

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2007年にブリティッシュ・コロンビア大学のアズム・シェリフらが神の存在を意識するような概念が人間の利他的な行動を促進するのかについて調べるために実験を行いました。

実験の対象となったのは大学生55名でした。

実験参加者はランダムに2つのグループに分けられ,複数の単語から成る文字列を並び替えて意味のある文章にする課題をこなしてもらいました。

その2つのグループには意味が通る文字列にした時にどのような意味の文章になるかで違いが以下のように設けられていました。

<グループ1>
神様に関連する文字(e.g. 神様,精神)を含む

<グループ2>
何もなし

そして,課題を遂行した後に他の実験参加者とお金の分配をする独裁者ゲームをしてもらい,どれくらいのお金を相手に渡すのかを比較しました。

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実験の結果,神様に関連のある文字を入れ替えることで文章を完成させた場合に神様に関連がなかった文章を完成させた場合と比較して独裁者ゲームで相手に分配するお金の数が多くなりました。

またそれと同時に神様に関連がなかった文章を完成させた場合に神様に関連のある文字を入れ替えることで文章を完成させた場合と比較して自分自身に分配するお金の量が多くなりました。

実験2では実験1と同様の手続きを行い,課題終了時に自分自身の感情についての質問紙に回答してもらっています。実験2の結果,実験1同様の効果が見られたものの,感情による変化はないことが確認されています。

他の研究を見てみても,このように言語的な概念が個人の行動を変化させることが分かっています。具体的な例を挙げると以下のようなものがあります。

・高齢者の概念を喚起させると,歩く速度が遅くなる(5
・ファストフードのロゴを見ると,文章を読むスピードが速くなる(6

この現象は神様という概念に触れることで社会の集団としての個人の利益を最大化することに意識が向き,他者への利他的行動がとる傾向が高まったのではないかと言えるでしょう。

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(1)Shariff, A. F., & Norenzayan, A. (2007). God is watching you: Priming God concepts increases prosocial behavior in an anonymous economic game. Psychological science, 18(9), 803-809.

(2)Bargh, J.A., Chen, M., & Burrows, L. (1996). Automaticity of social
behavior: Direct effects of trait construct and stereotype activation on action. Journal of Personality and Social Psychology, 71,230–244.

(3)Bering, J. M., McLeod, K., & Shackelford, T. K. (2005). Reasoning about dead agents reveals possible adaptive trends. Human nature (Hawthorne, N.Y.), 16(4), 360–381.

(4)Hietanen, J. O., Syrjämäki, A. H., Zilliacus, P. K., & Hietanen, J. K. (2018). Eye contact reduces lying. Consciousness and cognition, 66, 65–73. 

(5)Bargh, J.A., Chen, M., & Burrows, L. (1996). Automaticity of socialbehavior: Direct effects of trait construct and stereotype activation on action. Journal of Personality and Social Psychology, 71,230–244.

(6)Zhong, C. B., & DeVoe, S. E. (2010). You are how you eat: Fast food and impatience. Psychological Science, 21(5), 619-622.

■親切は脳に効く/デイビッド・ハミルトン (著), 堀内久美子 (翻訳)

■幸福優位7つの法則 仕事も人生も充実させるハーバード式最新成功理論/ショーン・エイカー  (著), 高橋由紀子 (翻訳)

■幸せがずっと続く12の行動習慣/ソニア・リュボミアスキー  (著), 渡辺誠 (監修), 金井真弓 (翻訳)

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