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選択肢が多いと決断できない

選択肢が多いと決断することを延期してしまうという趣旨の論文があったのでメモ(1)。

これまでの研究を見てみると,選択肢の多さは一概に意思決定の質を上げるとは言えないことが分かっています。具体的な例を挙げると,以下のような研究があります。

・選択肢が多い項目を後回しにすると決断できなくなる(2
・選択肢が多いと意思決定の質が下がる(3
・情報はまとめて比較検討した方が正しい選択が出来る(4

このように選択肢が多いことは多くの情報を比較検討できる一方で,意思決定の延期などの負の側面も確認されています。

今回紹介する論文は選択肢の数が多いことによって意思決定を延期し,最終的には選択しない行動を取ってしまうことを教えてくれます。

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2000年にコロンビア大学ビジネス・スクールのシーナ・アイエンガーらがスーパーマーケットを実験の舞台に選択肢が多くあることのデメリットについて調べるために実験を行いました。 

実験の対象になったのは実験期間中にスーパーマーケットに訪れた顧客でした。

実験期間中にスーピーマーケットの一部の区画にジャム売り場を設け,2つのパターンでジャムを売りました。その2つのパターンには以下のような売り出す種類に違いがありました。

<パターン1>
24種類

<パターン2> 
6種類

この売り出されたジャムは試食することができました。このように24種類の場合と6種類の場合で顧客の訪れる数と購入率を調べ,比較しました。

実験の結果,ジャムの種類が24種類だった場合には入店者数(242人)の約60%(145人)が試食に立ち寄りました。一方でジャムの種類が6種類だった場合には入店者数(260人)の40%(104人)が試食に訪れました。

しかし購入に至った割合を見ると,その数は逆転し,ジャムの24種類だった場合の購入率は試食した人の3%(4人)だったのに対し,6種類の場合では試食した人の30%(31人)が購入に至りました。 

また試食した種類の平均数を見てみると,24種類の場合も6種類の場合も試食したジャムの種類は平均で2種類でした。

今回の実験から選択肢が多いことによって決定疲れが生じ,意思決定が先延ばしされることが分かります。

選択肢を多く提示するのは購買者に対し多くの選択肢を示す一方、決定疲れを引き起こし,意思決定を延期してしまう負の側面を持っていると言えるでしょう。

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(1)Iyengar, S. S., & Lepper, M. R. (2000). When choice is demotivating: Can one desire too much of a good thing?. Journal of personality and social psychology, 79(6), 995.

(2)Levav, J., Heitmann, M., Herrmann, A., & Iyengar, S.S. (2010). Order in Product Customization Decisions: Evidence from Field Experiments. Journal of Political Economy, 118, 274 - 299.

(3)Besedeš, T., Deck, C, A., Sarangi, S., & Shor, M. (2014). Reducing choice overload without reducing choices. Review of Economics and Statistics, 1-31.

(4)Basu, S., & Savani, K. (2017). Choosing one at a time? Presenting options simultaneously helps people make more optimal decisions than presenting options sequentially. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 139, 76-91.

■選択の科学/シーナ・アイエンガー  (著), 櫻井 祐子  (翻訳)

■新装版 なぜ選ぶたびに後悔するのか オプション過剰時代の賢い選択術/バリー シュワルツ (著), 瑞穂 のりこ (翻訳)

■成功が約束される選択の法則: 必ず結果が出る今を選ぶ5つの仕組み/ショーン・エイカー (著), 高橋 由紀子 (翻訳)

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