会社員を卒業して起業する方に伝えておきたいこと|第三話 会社のお金の考え方
前回は経営者としての収入である”役員報酬”の話を書きました。
今回は会社のお金に対する考え方の話をしていきましょう。
はじめに
資本主義社会においては、労働やサービス・商品に対しての対価は一般的に貨幣として支払われることが大半だと思います。
仕入れが必要な事業であれば材料費がかかりますし、従業員を雇うのであれば給与を支払う必要がありますし、オフィスを借りるにもお金がかかります。
当たり前のことですが、会社の事業の全ての活動において「お金」は切っても切り離せない大切な存在ということになります。
特に継続的に売上げをあげて、キャッシュを回し続ける(=キャッシュフローを維持)ことがどれだけ大変なことかは、経営を始めてから実感することの方が多いのではないでしょうか。
起業するために貯め、資本金(資本準備金)として会社に入れたお金も、売上げが立たなければ、自身の役員報酬や経費などの毎月の支払いによってどんどん減っていきます。
キャッシュフローについては説明されているメディアが沢山あるので、そちらを参照してみてください。
ここでは世の中で言われている中小企業のお金の考え方を、僕なりにできるかぎりシンプルにお伝えしたいと思います。なお、これはあくまでも僕の考え方なのでご承知おきください。
会社の”お金”は会社の”健康”のバロメーター
皆さんの身体の健康状態は健康診断や人間ドックなどで”毎年”確認していると思いますが、どんな規模であれ、会社はこれを”毎月”見ていくべきです。
ワンパクは創業時からきちんと月次で決算をおこない、毎月、顧問の公認会計士の方と共にP/LとB/Sのレビュー、年間の売上げ、外注費、販管費などを計画に対するレビューを続けています。
P/Lでは
売上げはいくらなのか?
粗利はいくらなのか?(外部パートナーにいくら払ったのか?)
営業利益はいくらなのか?(役員報酬や給与や各種経費を含む販管費はいくらなのか?)
経常利益はいくらなのか
B/Sでは
現金や売り掛けはいくらあるのか?
買掛はいくらあるのか?
負債はいくらあるのか?
などをチェックします。
月次でこれをおこなうことで、年間で季節変動とその要因を把握することが可能になります。
当たり前ですがこのような数字は会社の健康状態を表すとても大切なバロメーターであり嘘をつきません。会社のお金の状態を常に把握していくことで、先を見据えた経営ができるようになります。
節税 < 内部留保 会社はキャッシュを貯めるべき
決算が近づき、会社に利益が出ることが分かると、税理士さんや会計士さんは利益を圧縮するように”節税”を進めてくることが多いと思います。YouTubeなどの税理士チャンネルでもこの手の話は多いと思います。
もちろんワンパクでも倒産防止共済や損金算入可能な保険など、ある程度の節税対策はしてきました。
しかしながら、"必要以上に経費を使い"、"不急な機材購入"、"社用車の購入"などで会社のお金を使ってしまい、毎年の利益を過度に圧縮することはおこなっていません。(経費を使うことが悪いという意味ではありませんので悪しからず)
この理由は明快です。会社のお金を使う=手元に残るキャッシュ(現金)を減らしてしまうからです。
「できる限り法人税を収めたくないから、できるだけ利益を圧縮する」という経営者もいらっしゃると思いますが、実はそれが落とし穴です。
当然のことですが税金を納めないかぎりは、会社に現金を残すことはできません。つまりは会社へ内部留保(キャッシュを貯める)ができていない状況が生まれていきます。
経営者になると、よく聞く話として会社を経営する上で、仕事が全く無かったとしても”最低3ヶ月間”、"できれば6ヶ月間”会社を続けられる内部留保を持ちなさいという話があります。
個人的には従業員が5名の会社で6ヶ月分相当のキャッシュを持っていたとしても、経営者として心理的な意味での不安は払拭できないと考えています。
ではどれくらいが目安なのか?
僕の場合は起業を相談された方には最低1年分の販管費の内部留保を目指してくださいと伝えています。そこからも引き続き貯めてくださいと。2年分が貯まれば新たな事業やスタートアップへの投資なども可能になりますよと。
これは相当ハードルが高いと思いますが、健全な経営をおこなう上ではとても大切なことだと考えています。
利益の還元を明確に
ワンパクでは利益が出た場合に、当然ながら会社に貯めるだけではなく、従業員への還元もおこなっています。
創業当時より、その割合も基本的には決めており、利益を下記の3つに1/3ずつ割り振っています。もちろん年によって若干の割合の変動はあります。
決算賞与 1/3:直接的な従業員への還元
設備投資 1/3:間接的な従業員への還元(作業環境・オフィス整備等)
内部留保 1/3:将来に向けて会社に貯める
ちなみに余談ですが、ワンパクは2024年で16期目ですが、創業時より15年間ずっと黒字経営で毎年決算賞与を支払っています。
まとめ
今回は第三話として僕なりの「会社のお金の考え方」を書いてみました。15年間会社を経営してきた中で、大切にしてきた一つのことは「お金に対して透明性を持ち綺麗であるべき」という信念です。
昨年も久々に税務調査が入りましたが、透明性を持って対応してきたおかげもあり、指摘を受けたのは、たまたま支払い期限が少しだけ過ぎていた税金支払いの追徴課税 数万円でした。
全てを完璧にスタートさせるのは難しいかもしれませんが、ここに書かれたことが少しでも皆さんのお役に立てたら幸いです。
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