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小説

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こちら時空管理局。何らかの影響によりこのアカウント内に小説が発生してしまった。パルス誘導システムを使用して、マガジンに閉じ込めておいた。もし興味があったら見ておいてくれ。以上
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2022年7月の記事一覧

短編小説|「「母さん」」

短編小説|「「母さん」」

スマホが鳴った。

画面を見ると、母さん、という文字が浮かんでいる。まったく仕事中は電話をしてくるなといつも言っているのに。
おれは、やれやれといった表情を3割増しで表すと、もったいぶって電話に出た。

「もしもし?」
「ああ、わたしだよ。母さんだよ」
「知ってるよ。で、何?」
「それが大変なんだよ」

第一声から、明らかに慌てている様子が伝わってくる。しかし、今は仕事中だ。おれは声を強めてこう言

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短編小説|スマホが鳴った2

短編小説|スマホが鳴った2

スマホが鳴った。

まったく非常識極まりない。今なんの時間だと思ってるんじゃ。けしからん。こんなときでもスマホスマホか。まったく近頃の若者たちは、最低限の常識も持っとらん。こそこそと電源を切るくらいなら、持って来なければいいだけの話じゃ。

そもそも、そんな物を肌身離さず持っている神経も分からん。人間それなりの経験を積んでいれさえすれば、何も持たずとも立派に生きていられる。なんでもかんでも機械に頼

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短編小説|しっそうした女

短編小説|しっそうした女

探偵というなんでも屋の仕事をしている俺の元に依頼が入った。女を捕まえてくれ、というものだった。おかしな頼み方だなと思ったが、金になるなら俺はやる。詳しく事情を聞いてみることにした。

しかし、男は妙に落ち着かない様子で今にも事務所を飛び出しそうな勢いである。いったい何があったんですか、と聞いても
「早く彼女を捕まえてくれ。早くしないと行ってしまう」
というばかりである。

ははあ、なるほどな。どう

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短編小説|スマホが鳴った

短編小説|スマホが鳴った

スマホが鳴った。

「今何してる?」
俺は、またか、と独り言を言った。
「今からメシ」
と簡単に返信してスマホを置こうとした、その瞬間すぐに返信が来た。
「何食べるの?」
俺はふたたびスマホを持ち上げて
「おにぎり」
とだけ打ちこんで送った。

今度こそスマホを置き、おにぎりのパッケージを開封する。ガサガサという音だけがする。この場所は実に静かである。集中するにはもってこいの場所だ。

スマホが鳴

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