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アダルト


20歳になった時、アダルト、と言う曲を書いた。

どんな曲か簡単に説明すると、仕事が忙しすぎて彼女を大切に出来なかった男が、彼女に振られても、仕事を第一に考え続けるって内容なんだけど。

それは、僕の思う、かっこいい大人の姿を描いた曲だった。学生時代の僕は友人と距離を置いて仕事に専念するのが、かっこいい大人の姿だと思っていた。

だから学生時代の僕は大学を卒業するのが死ぬほど嫌だった。たまに悪夢として卒業式の夢を見るくらいには卒業するのが嫌だった。それくらい僕は友人達が大好きだった。

大学の同期と卒業旅行に行った時なんて、みんなと毎日会えなくなるのが嫌過ぎてストレスで体調崩した、、、。今思うとなんてもったいないことをしたんだろうか、と思うし、あの時のメンバーはさぞかし面倒臭かったろうに、とも思う。

大学を卒業した僕はバイトをしながら演劇活動しながら、声楽とバレエと殺陣のレッスンを受けながら音楽活動をしてた。要領が悪い僕には友人と会う余裕なんて無かった。と言うか、友人に会う時間があるなら勉強したかった。

そんな中、大学を卒業してからずっと、月に一回飯に誘ってくる友人がいた、大学時代の演劇仲間の一人なんだけど、僕は毎月断っていた。理由なく友人に会う時間が無駄だと思っていたからだ。

そんなある日、彼から電話がしたいと言われて、電話で話すことになった。話の内容は、僕が毎月の誘いを断ることについてだった。彼は「仕事仕事って、俺達のことはどうでもいいのか?」と言った。学生みたいなこと言うなよ、と思ったし、実際口に出してしまったと思う。

その日以来彼から飯に誘われることはなくなった。かと言って彼とは仕事の現場では会っていたし、年末は飲みに行っていた。別に友達じゃなくなった訳ではなかった。

それから何年か経ったある日、その日も遅くまでバイトだった。クレーム出して社員さんに怒られてたと思う。仕事終わりに、ふとLINEを見ると、一件の動画が送られていた。そう言えば飯に誘われてたなー、なんて思いながら動画を再生した。そこには「ちゃんと生きてるかー」と冗談まじりで笑う友人達が写っていた。たったそれだけの短い動画だったけど、なんだか、愛しさと、ありがたみが湧き出てきて、ちょっぴり泣いてしまった。

友達と会うのに、理由なんていらないのかもなぁと思った。

そして今日、仕事が終わって休憩室でご飯を食べている時にバイトのメンバーの一人と話しが盛り上がった。その子は20歳の子なんだけどなんだか大人っぽく感じる。なんでこんなにも大人っぽく感じるのかと思いながら、彼の話しを聞いていると、彼はとても相手を慮っていることに気づいた。

そう、ここで二つ前の記事に話は戻る。


相手を慮る、と言うのは相手に愛を持って優しく接する、と言うことなんだと思った。愛が有るから相手の言葉の意図を考えるのだ。そして、優しいから自分の意見を押し通さずに、相手に寄り添えるのだ。

本当にかっこいい大人とは、相手を慮れる人のことなんじゃないかと、彼と話しをしていて思った。

「アダルト」と言う曲の歌詞に、大人になりたくなかった、と言うフレーズがある。大人になることの意味を考え直した今は、大人になるのも悪くないなぁと思う。

ってか、もうアラサーなので、そんなことを言ってる場合じゃない。

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