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Film.001 『ANON』 眼球であらゆる情報を検知できる、なんでも見える世界に現れた見えない女性ー「私に秘密はない 見せたいものがないだけ」

 毎朝7:30に起きて必ずコーンフレークを食べる。コーヒーを飲んで仕事を始め、コーヒーを飲んで、仕事をする。夜、眠りにつくまでの数時間で映画を観る。たくさんの映画を観ていると、すごく良かったり、ひどく悪かったりする。すごく良かった映画に出会えたとき誰かに伝えたいなと思う。ひどく悪かった映画の中にも「主人公の部屋にあるデスク超かわいいんだけど」とか「最後に流れた音楽Shazamしよう」といった発見がある。
 映画評論家がいて紹介サイトがあり、動画サイトのレビュー星数である程度良し悪しがわかる。「死ぬまでに観たい映画100選  まとめ」と何度Google検索したことか。調べてはみるけれど「うーん、違うんだよな・・・」ということも多い。私の思う「こんな映画紹介記事があったらいいのに」の指す、こんなとは一体何なんだろう。説明できないから、取り敢えず書いてみる。これは違う、あれは違うと文句ばかり言っているうちに人生が終わってしまうと悲しいから。
それが、このnoteを始める理由。
私の書いた記事が誰かの検索にヒットして「あ、この人と趣味合う〜」「迷ってたけど観てみよう」など、そういう場所になるといいな。

 アンドリュー・ニコル監督作品『ANON』から、このnoteを始める。
ANON は 英単語 anonymousの略語。

anonymous

匿名の、作者不明の、読み人知らずの

眼球であらゆる情報を見知できる世界のお話。ドラゴンボールのスカウターが眼球にそのままセットされた感じ、と言って伝わるだろうか。

©2017 K5 FILM GMBH ALL RIGHTS RESERVED
CP1:一瞥するだけで全ての個人情報を得ることができる
©2017 K5 FILM GMBH ALL RIGHTS RESERVED
CP2:ショーウインドウで気になる時計に手をかざし拡張現実で時計を試着するシーン

 警官の主人公サルが街を歩いているとUNKNOWN(ERROR)と表示される匿名の女性が通りかかる。なんでも見える世界に現れた「見えない女性」がある連続殺人事件との関与を疑われることから物語が展開していく。

©2017 K5 FILM GMBH ALL RIGHTS RESERVED
CP3:UNKNOWN - ERROR と表示される女性 ANON

 眼球越しに無限の情報が表示される映像体験は、近未来的で美しい。白線とフォントが均衡を保ちながら浮かび上がっては消えてを繰り返す。

 匿名の女性が、誰からも見知されないよう過去の自分にまつわる全データを消し去った理由はクライマックスで明らかになる。映画冒頭に表示されるイギリスの詩人、ロバート・ブラウンニングの以下引用にも着目しその理由に辿りついてほしい。

"I give the fight up: let there be an end,
 A privacy, an obscure nook for me.
 I want to be forgotten even by God"
 「Robert Browning」Paracelasusu(1835)

"私は戦いをあきらめた、もう終わりにしよう。
プライバシーとは私にとって人眼につかない場所。
私は神にさえ忘れられたい"

 メガネ型のデバイスを使ったスカウターで視界に入る情報を一瞬で分析する技術が実用段階へ向け検証が重ねられている。メガネで可能となった技術がやがてコンタクトレンズへと落とし込まれ、『ANON』の世界が実現する日もそう遠くないかもしれない。

by 1day1cinema

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「ANON」を視聴する
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監督/脚本/制作:アンドリュー・ニコル
Filmography
ガタカ Gattaca (1997) 監督・脚本
トゥルーマン・ショー The Truman Show (1998) 脚本
シモーヌ S1m0ne (2002) 監督・脚本・製作
ターミナル The Terminal (2004) 原案・製作総指揮
ロード・オブ・ウォー Lord of War (2005) 監督・脚本・製作
TIME/タイム In Time (2011) 監督・脚本・製作
ザ・ホスト 美しき侵略者 The Host (2013) 監督・脚本
ドローン・オブ・ウォー Good Kill (2015) 監督・製作・脚本
ANON アノン Anon (2018) 監督・脚本・製作

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