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昔取った杵柄で、和声分析をやっていこうかなと。 2021年1月クラシックギター開始

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昔取った杵柄で、和声分析をやっていこうかなと。 2021年1月クラシックギター開始

最近の記事

カルカッシ: 25の練習曲 Op. 60 第4番 和声分析

M. Carcassi: 25 Etudes Op. 60 No. 4 概要ニ長調。全音の楽譜ではA - B - Cの三部形式となっているが、A - B - A'と捉えることも出来るかもしれない。 内容としてはアルペジオと下降のリガード(スラー)の練習といったところか。 リガードの最初の音は非和声音となるので、そのへんも意識してみても良いかもしれない。 和声分析A ニ長調の属和音で終わると考えても良いかもしれないが、その場合6小節目2拍目がVIの第一展開形になってしまう

    • カルカッシ: 25の練習曲 Op. 60 第3番 和声分析

      M. Carcassi: 25 Etudes Op. 60 No. 3 概要三連符の分散和音(+高声の旋律?)の練習曲。 イ長調。A - B - A'の三部形式だがAの繰り返しの後にB&Cが繰り返される構成となっている。 和声分析A 途中、イ長調のままだとVIの転回形が出てきてしまうので途中からホ長調の記号で書いたが、全体としてはイ長調のドミナントに向かっていると捉えて良いだろう。 前半はトニックとドミナントだけだが、後半は機能的にはサブドミナントが続々と変化する形とな

      • カルカッシ: 25の練習曲 Op. 60 第2番 和声分析

        M. Carcassi: 25 Etudes Op. 60 No. 2 概要イ短調。A - B - A'の三部形式。 右手の運指は一箇所を除き終始 p i m a m a m a となる。同じ弦の上での中指と薬指の動きの練習。 音型はシンプルだが、和声は意外と凝ったものとなっている。 和声分析A 1~3小節はトニックとドミナントが交互に出てきているようではあるが、バスで主音がずっと鳴っているため主和音の中での変化とした。 5~6小節はバスの順次進行に合わせた和声進行で、

        • カルカッシ: 25の練習曲 Op. 60 第1番 和声分析

          M. Carcassi: 25 Etudes Op. 60 No. 1 概要ハ長調。全音楽譜出版社から出ているものの解説ではA(a, a', 経過句)、B、C、Codaの三部形式となっているのでそれに従うが、違う解釈をする余地もあると考える。 また基本2声の練習曲なので、特にA部分は和声は如何様にも考えられる部分があり、和声記号は参考程度のものとなる。 和声的に考えるよりも、各所に出てくる臨時記号により、今弾いているスケールがどの調なのかを意識した方が曲の把握に役立つだろう

        カルカッシ: 25の練習曲 Op. 60 第4番 和声分析

          「青本」収録曲和声分析完了と次の企画について

          思いつきで始めた「教室用 新ギター教本」収録曲の和声分析企画、やる意味が薄そうで飛ばした曲も多数あるが、47回で一応完結としておく。 当初全く読まれないのではないかなんて思っていたが、思ったよりもアクセスがあった(といっても微々たるものだが)。さらにその中で、どのくらいの人が中身をちゃんと見たかはわからないけれど、積み重ねていけばそのうち誰かの役に立つこともあるかもしれない。 せっかく始めたnoteをこれで終わらせるのも勿体無いので、今までよりはペースは落とすつもりだが、

          「青本」収録曲和声分析完了と次の企画について

          F. ソル「ギャロップ」〜 「青本」和声分析47(完)

          F. Sor: Galop 概要馬術の「ギャロップ」に由来する舞曲。 ト長調。複合三分形式。中間部では平行調(ホ短調)に転調。 また中間部を2つのパートに分けるか3つに分けるかという判断は分かれるところだと思うが、便宜上A1, A2, B1, B2と区切った。 和声分析A1 IとVのみという非常にシンプルな和声進行。 A2 ここも和声記号を振るならベースがずっとDとなっているのでVとなるが、その中ではVとIが交互に登場している。また12小節目のcisとaisの音はV

          F. ソル「ギャロップ」〜 「青本」和声分析47(完)

          F. ソル「アンダンティーノ」〜 「青本」和声分析46

          F. Sor: Andantino 概要ホ長調。転調なし。A - B - A'の三部形式。 Aで登場する主題はそれぞれの箇所で簡易的な変奏となっている。 和声分析A 主題とその簡単な変奏が繰り返される形で、和声進行も同じものとなっている。 7〜8小節目ではVからIに一旦解決しているという解釈もできるが、H音がずっと下で繰り返されているのでVが経過的に変化しているものと捉えてみた。 B ドミナント的要素が強いパートと感じる。 A音が頻出するためロ長調的には感じないが、

          F. ソル「アンダンティーノ」〜 「青本」和声分析46

          F. ソル「ワルツ」〜 「青本」和声分析45

          F. Sor: Vals 概要ホ長調。構成は全体をA - B - AとしてAが2つ、Bが3つの部分に分けることができるので複合三部形式で良いだろう。Bパートでは同主調(ホ短調)へ転調している。 和声分析A1 上段ではバスが2度上行し、Vの和音が転回してまたバスが2度上行するのに対し、下段の和音は基本形のみでバスの動きも大きく解決感も強くなっている。 また5小節目の1拍目から3拍目で一気に音域が広がり、さらにD音が出てきているのがこの部分の山場か。そしてのあとのIVにどう

          F. ソル「ワルツ」〜 「青本」和声分析45

          F. タレガ「アデリータ」〜 「青本」和声分析44

          F. Tárrega: Adelita 概要こちらもLagrima同様クラシックギターを学ぶ人には言わずと知れた作品。 ホ短調、A - B - Aの三部形式。中間部ではホ長調に転調する。 和声分析1A & 2A A - B - Aの三部形式で冒頭と最後のA部分は同じなので最後の部分については省略。 最初の小節から非和声音が印象的。Eに解決されない Disがどこか異国情緒を感じさせるような? 3小節目3拍目は属七の和音にしたが、Gは非和声音。またDisからGへの上行の音

          F. タレガ「アデリータ」〜 「青本」和声分析44

          F. タレガ「ラグリマ(涙)」〜 「青本」和声分析43

          F. Tárrega: Lagrima 概要クラシックギターを学ぶ人には言わずと知れた作品。 ホ長調。A - B - Aの三部形式。中間部はホ短調(平行調)に転調する。 和声分析A 1, 3 & 4小節目の2拍目はVの和音としたいところだが、そうすると導音や第7音の動きが問題になるので、経過音と考えた。 6小節目2拍目もIやIIIの転回形とするとIIへの繋がりが問題となるので経過音として記号は振らないでおいた。 7小節目2拍目もIの第二転回形からドッペルドミナントに進む

          F. タレガ「ラグリマ(涙)」〜 「青本」和声分析43

          D. スカルラッティ(L. ブローウェル編曲)「ソナタ ト長調 L.387/K.14」覚え書き

          現在レッスンでやっているD. スカルラッティのソナタがなんとなく掴めてきた気がするので、原曲等聴いてみたら謎な部分が出てきたので控えておく。 さて、スカルラッティの意図に近いものはどれだろうか。 頻出する音型 ブローウェルのものはギター的にやりやすいものに変えたということだろうか。 鍵盤用の楽譜だと古いものは5連符、最近のものだと16分音符3つに36分音符2つという形になっているようだ。 また現代ギター社の楽譜だと、所々アーティキュレーションが違っているが、そこは統一した

          D. スカルラッティ(L. ブローウェル編曲)「ソナタ ト長調 L.387/K.14」覚え書き

          A. カーノ「ワルツ・アンダンティーノ」〜 「青本」和声分析42

          A. Cano: Vals Andantino 概要ニ長調。構成はA - B - A - C。Bパートのみニ短調に転調する。 和声進行は説明の必要がないくらいシンプルなものだが、Aパートはトニックで始まり、Bパートはドミナントから、Cパートはサブドミナントからという変化がついている。 和声分析A1&A2 Aは1回目も2回目も同じなので2回目の画像は省略。 和声進行はT - D - Tのみ。 B ニ短調に転調しているが、楽譜は臨時記号での対応となっている。 ここも基本

          A. カーノ「ワルツ・アンダンティーノ」〜 「青本」和声分析42

          N. コスト「練習曲」〜 「青本」和声分析41

          N. Coste: Etude 概要ニ短調。A - B - Aの三部形式。 中間部の比重が高めで、長いドミナント部分を持ったものとなっている。 また中間部は細かく転調しているようでもあるが、和声記号は極力複雑にならないものを選んで振ってみた。 和声分析A 機能で書けば、T - SD - T, T - SD - D - Tの繰り返しとなるが、3小節目の2拍目からの変化が印象的。 B-1 人によってどう記号を振るかというのが変わってくると思われる部分。転調だらけにすると

          N. コスト「練習曲」〜 「青本」和声分析41

          「ロマンス」〜 「青本」和声分析40

          Romanza 概要ホ短調。A - B - Aの三部形式。中間部はホ長調(平行調)に転調。 言わずと知れた映画「禁じられた遊び」で使われたナルシソ・イエペスの演奏で有名となった作品。スペイン民謡とされることが多く「青本」でもそういう記述になっているが、最近では19世紀に練習曲として作られたものと考えられているようだ(Wikipediaによる)。 和声分析A 説明の必要がないくらいシンプルな和声進行となっているが、一つの和音が長く伸ばされている分、そこに非和声音が入って

          「ロマンス」〜 「青本」和声分析40

          J. フェレール「タンゴ第3番」〜 「青本」和声分析39

          J. Ferrer: Tango No.3 概要イ短調。A - B - Aの三分形式。中間部ではイ長調(同主調)に転調。 それぞれのパートは前半・後半で違う要素のものとなっている。 リズムが私がタンゴと聞いてイメージするものと違ったので調べてみたが、おそらくハバネラから派生した「ミロンガ」に分類されるものと思われる。 和声分析A 10小節目でハ長調的な和声進行となるが、こことその前のVの繋がりでちょっと悩んだ。括弧書きのIはどういった音で補えるかというのを考えた結果のも

          J. フェレール「タンゴ第3番」〜 「青本」和声分析39

          N. コスト「舟唄」〜 「青本」和声分析38

          N. Coste: Barcarolle 概要イ長調。A - B - Aの三分形式。中間部でホ長調(属調)に転調。 Récréation du guitariste, Op.51に収録の小品。 「舟唄」というと個人的には6/8拍子のイメージが強いがこの作品は3/8となっている。 各パートは、ほぼ同じフレーズを末尾を少し変えて2回繰り返す形になっていており、和声も同様のものとなっている。 和声分析A 5小節目と13小節目の休符の違いがミソ。一見装飾音の違いだけのようだが、

          N. コスト「舟唄」〜 「青本」和声分析38