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掌編まとめ

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短いもののまとめです。
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記事一覧

『森の奥に住まう』  肩慣らし掌編

 そいつの先祖は流刑囚だったという噂だ。流刑囚がなぜか子を残し、血を代々継いできて、やが…

『奥義としての無職』  肩慣らし掌編

 あの安居酒屋で、同席の者たちともども酔っ払いながら、俺は眠そうなお前に語った。  歴史…

『祈りにも似て非なる話題を持って』  肩慣らし掌編

 本屋へ出かけようと外へ出た。  駅前に向かう。  暑い、と思った。昼の日差しはすっかり夏…

『日々貧賤』

 ときどき思う。俺には別の生き方もあったのではないか。たとえば中学時代からの友人Mのよう…

『仙人老境』

 向島に知り合いの仙人がいる。といっても別に不老不死だとか仙丹を作ってるというわけではな…

『イカサマのルール』

 ただ生き延びるために嘘をつくのはいけないことでしょうか。私は生きたかっただけなのです。…

『人間ギリギリ』

 まったくこの町というのは嫌なものだ。およそ洗練というものがない。コンビニに行けば独り言を吐く客がひとりはいるし、駅前のほうへ進めば三人や四人にはそういうのに出くわす。一様にみすぼらしい姿をし、まとう雰囲気は浮浪者にも似ている。意欲のなさ。希望のなさ。こういうのを見せつけられると憂鬱になる。だからあまりコンビニにも行きたくないのだが、腹は減る。弁当を買いに行かざるをえない。レジ待ちのときなどで、耳元で独り言を言われたような場合、俺はそいつをしばらく睨む。様子を見る。体つきや姿

『不滅の友人』

 Jが死んだのはあいつが二十六歳だった夏の日で、そんな人生がどういう物差しで長い短いと決…

『陰宅の祖父』

 ジャケットを羽織り、ハットをかぶっていて、手にはステッキを持って歩く。その姿は忘れがた…

『ダーティー・ワーカー』

そのとき、友達はディズニーランドの裏方として札束をカゴにぶち込んでいく仕事をしていたが…

『シルク』

隣県に住んでいた折、同居人が猫を欲しがったので、ネットで引き取り手を探していた家に連絡…